論文詳細
大学院現代社会文化研究科
#紀要論文
A Note on Quantifier Scope in Japanese Passive Sentences
- AI解説:
- 本稿(短報)は、日本語の直接受動文に関するよく知られた提案、具体的には NP-ni で標示される行為者句と NP-ni yotte で標示される行為者句の対比に対して想定されうる課題を扱う。Kuroda (1979) および Hoshi (1991, 1999) に基づき、本稿は、これら2種類の受動において表層主語が導かれる仕方に二分法があると仮定する。その見方では、ni 受動では主語は表層主語位置に基底生成され、theta 役割 Affectee を受けるのに対し、ni yotte 受動では主語は動詞の内部項として出発し、主語位置へ移動する。本稿の直接の動機は、量化子スコープに関する事実が、一見すると ni yotte 受動に対するこの移動に基づく分析を損なうように見える点にある。すなわち、ある種の文では、移動分析が逆スコープの可能性を予測する箇所でも、表層主語が広いスコープを取らざるをえないように見える。本稿の目的は、この反証らしきものが誤って診断されていることを示すことである。ni yotte 句の内部構造を真剣に考慮すれば、同じスコープ事実は、もとの二分法を支持するものとして再解釈できる。本稿はさらに、この診断を所有者受動(possessor passives)にも拡張し、同様の派生上の非対称性がそこでも見られるかを問う。
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大学院現代社会文化研究科
#紀要論文
A Note on Quantifier Scope in Japanese Passive Sentences
AI解説
- 背景と目的:
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本稿(短報)は、日本語の直接受動文に関するよく知られた提案、具体的には NP-ni で標示される行為者句と NP-ni yotte で標示される行為者句の対比に対して想定されうる課題を扱う。Kuroda (1979) および Hoshi (1991, 1999) に基づき、本稿は、これら2種類の受動において表層主語が導かれる仕方に二分法があると仮定する。その見方では、ni 受動では主語は表層主語位置に基底生成され、theta 役割 Affectee を受けるのに対し、ni yotte 受動では主語は動詞の内部項として出発し、主語位置へ移動する。本稿の直接の動機は、量化子スコープに関する事実が、一見すると ni yotte 受動に対するこの移動に基づく分析を損なうように見える点にある。すなわち、ある種の文では、移動分析が逆スコープの可能性を予測する箇所でも、表層主語が広いスコープを取らざるをえないように見える。本稿の目的は、この反証らしきものが誤って診断されていることを示すことである。ni yotte 句の内部構造を真剣に考慮すれば、同じスコープ事実は、もとの二分法を支持するものとして再解釈できる。本稿はさらに、この診断を所有者受動(possessor passives)にも拡張し、同様の派生上の非対称性がそこでも見られるかを問う。
- 主要な発見:
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中心的な発見は、ni yotte 受動における量化子スコープからの当初の「反例」は、実際には Kuroda と Hoshi の移動分析に反するものではない、という点である。dareka-ga daremo-ni yotte home-rare-ta のような文は、表層主語の QP が広いスコープを取る解釈のみが強く好まれると報告されているが、本稿は、この一義性は主語移動の欠如ではなく、ni yotte 句の統語的な不透明性によって生じると論じる。著者は、NP-ni yotte は単純な後置詞句ではなく、動詞 yoru「owe」と -te から作られる従属(分詞)節であり、大まかには「NP によって(=NP に負って)」に相当すると提案する。この見方では、ni yotte に先行する NP は埋め込まれており、外部の要素を c-command できない。そのため、通常は VP 内部の QP に対して広いスコープを取れず、また目的語位置の代名詞を束縛できないことが説明される。これを支持する診断は2つある。(i) スコープ:QP-ni yotte は内部目的語 QP に対する広いスコープに抵抗し、QP-ni とは異なる。(ii) 束縛:QP-ni は目的語内の代名詞に対して bound-variable 解釈を許すのに対し、QP-ni yotte はそれを阻む。重要なのは、mo が付く場合(例:dono-N-ni yotte-mo)には関連する QP のふるまいが変化し、その結果、ni yotte 受動で逆スコープが可能になると本稿が論じる点である。これは、主語移動と整合的なスコープ再構成(scope reconstruction)効果を示す。一方、同程度に対応する ni 受動では再構成への抵抗が続き、主語が基底生成されるという見方と一致する。追加の証拠として、二重目的語をとる受動(ditransitive passives)では、ni yotte 型においてのみ、主語 QP が目標(goal)の QP(daremo-ni)の下で狭いスコープを比較的容易に取れることが挙げられ、これも ni yotte 受動では移動があるが ni 受動ではそうでない、という見立てと整合する。最後に、本稿は同じパターンが所有者受動にも拡張されると論じる。すなわち、ni yotte(および mo)では主語がスコープのためによりもっともらしく再構成できる一方、ni ではできない。ただし著者は、判断はあまり鋭くないとも述べている。
- 方法論:
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本稿は、母語話者の容認性と解釈判断に基づく理論的な統語論/意味論の論証を用い、階層構造と移動の診断として量化子スコープと代名詞束縛に焦点を当てる。方法は比較的であり、著者は ni と ni yotte の行為者標示を対比させ、他の語彙的素材は一定に保った最小対(paired minimal examples)を構成したうえで、どのスコープ解釈が可能か(例:主語が広スコープか行為者が広スコープか、あるいは VP 内部の2つの量化子の相互作用)を評価する。分析は、日本語のスコープ制約に関する標準的仮定に依拠する。すなわち、典型的な表層語順はスコープを固定しがちである一方、A′ 的な並べ替え(あるいは移動配置)では曖昧性が許されうる、という一般化を基盤として、受動の派生に関する予測を立てる。ni yotte について著者は明示的な構造仮説を導入する。すなわち、その句は yotte(yoru + -te)が統率する埋め込み節を含み、NP-ni をその目的語として持つため、埋め込み NP が主要節(matrix)の VP を c-command しない配置になる、というものである。この構造主張は、2種類の経験的プローブにより間接的に検証される。第一に、スコープ検査によって、ni yotte 句内部の QP が内部目的語 QP に対して広いスコープを取れるかを調べる。第二に、束縛検査によって、その QP が目的語位置の代名詞を束縛できるかを調べる。著者は次に、決定的な操作として、不定語の dono-N を用いて ni/ni yotte 句に mo を付加することを導入し、この環境では再構成効果が検出可能になり、受動タイプ間の派生的差異が表面化すると論じる。同じ一連のスコープ診断は、その後、所有者受動にも適用され、主語が移動した内部項のようにふるまうかが検討される。
- 結論と意義:
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本稿は、Kuroda (1979) と Hoshi (1991, 1999) が提案した二分法は維持できると結論づける。すなわち、ni 受動と ni yotte 受動は表層主語の派生が異なり、前者は基底生成された主語(Affectee)を含み、後者は VP 内部位置からの移動を含む。見かけ上の量化子スコープ反例は、(i) 受動主語が移動したかどうか、(ii) 行為者の QP が ni yotte 句の外へスコープを取り出せるかどうか、という2つの問題を混同しているために生じる錯覚だと論じられる。ni yotte を従属節として分析すれば、埋め込み NP が広いスコープを取れず、外向きに束縛できないことは一貫して予測され、そこから主語移動の不在は導かれない。むしろ決定的な証拠は、再構成が検出できる文脈(とりわけ dono-N … mo)から得られる。この文脈では ni yotte 受動は再構成と整合的な曖昧性を示すが、ni 受動は示さない。本稿はまた、所有者受動の統語に関してより広い意義があるとも主張する。同じ診断を適用すると、少なくとも ni yotte で標示される変種では、所有者受動の主語が持ち上げられた VP 内部項のようにふるまうことが示唆され、所有者受動の主語が VP 内部に起源をもつとする分析(Terada 1990; Kubo 1992; Homma 1995; Hoshi 1999; Ishida 2015; Kaga 2016)を支持する。総じて本稿の貢献は、新しい受動理論を提示することではなく、ni yotte の内部構造が適切に表現されたときに、スコープ事実をどのように解釈すべきかを明確化する点にある。
- 今後の展望:
-
本稿は詳細な研究計画を提示してはいないが、議論の中にいくつか明確な経験的・分析的フォローアップが含意として示されている。第一に、著者は一部の判断、特に ni yotte と mo を伴う所有者受動について「not very sharp」であると述べており、スコープ解釈の体系的な検証と、それが話者や文脈をまたいでどれほど頑健かの確認が必要であることを示している。第二に、ni yotte が yoru「owe」と -te から作られる従属節を形成するという提案は、行為者の ni yotte 句の統語的・意味的な合成(composition)について、さらに研究を促す。とりわけ、mo がどのように(そしてなぜ)スコープと束縛のふるまいを変化させ、量化演算子のような性質をより強く示すようになるのかが課題となる。第三に、議論の多くが c-command に基づく診断(スコープと bound-variable anaphora)に依存しているため、主張される埋め込み構造を三角測量し、行為者句の性質と受動主語の派生の性質とを切り分けるために、追加の診断を検討できる。最後に、所有者受動への拡張は、受動タイプ(direct vs possessor)と行為者標示(ni vs ni yotte)の相互作用が、移動に基づく説明を精緻化するための生産的な検証領域であることを示唆しているが、そのためには解釈上の対比がより明確なデータで確認される必要がある。
- 背景と目的:
-
この短い論文は、日本語の「
(〜に/〜によって で行為者を表す受動)」について、よく知られた考え方に出てきそうな問題を検討します。直接受動文 ( 受動文のうち、主語が能動文の目的語に対応するタイプです。例として「太郎が先生にほめられた」のように、ほめる対象(目的語)が主語になります。受動の基本的な仕組みを調べるときに重要です。)
これまでの研究(Kuroda、Hoshi)では、次のように2種類の受動は主語のでき方が違うと考えられてきました。
- (NP-ni):主語は最初から主語の位置にあり、「影響を受けた人(ni受動 ( 行為者を「NP-ni」で表す直接受動です。この論文では、主語が最初から主語位置にあり、移動しないタイプだと考えます。ni yotte受動との違いを見分ける中心点になります。) )」という役割を持つAffectee ( theta役割の一種で、「出来事の影響を受ける人・もの」という役割です。ni受動の主語はこの役割を持つため、抽象名詞が主語になりにくいなどの性質が説明されます。)
- (NP-ni yotte):主語はもともと動詞の目的語側にいて、あとから主語の位置へni yotte受動 ( 行為者を「NP-ni yotte」で表す直接受動です。この論文では、主語がVP内部から主語位置へ移動するタイプだと考えます。スコープや束縛の違いから、その移動の有無を検討します。) する移動 ( 文の構造を作る過程で、ある要素が別の位置へ動くと考えることです。ni yotte受動では主語が目的語側から主語位置へ移動するとされ、スコープ再構成の有無がその手がかりになります。)
ところが「 (だれか、だれも、すべての〜など)」の意味のかかり方(量化子 ( だれか、だれも、すべての、二人の、〜か〜など、人数や範囲を決める表現です。複数あると「どちらが先に意味を支配するか(スコープ)」の問題が出ます。) )を見てみると、ni yotte受動で「主語が移動しているなら、別の解釈もできるはずなのに、できないように見える」例があると言われます。スコープ ( 量化子の意味がどこまで及ぶか、どちらが優先されるかという関係です。「だれかがみんなをほめた」と「みんなについて誰かがほめた」などの解釈差を説明します。)
本稿の目的は、その“反例っぽいもの”は見方が誤っていて、ni yotte句の中身の構造をきちんと考えると、むしろ元の2分法(niとni yotteの違い)を支持できると示すことです。さらに、この考え方を「 」にも広げて同じような違いが出るかも調べます。所有者受動 ( 主語が「所有者(持ち主)」のように解釈される受動で、「太郎が成績をしかられた」のように、主語が直接しかられた物そのものではなく、その持ち主として関わります。主語がVP内部から上がるかどうかが大きな論点です。)
- 主要な発見:
-
中心となる発見は、
で報告されてきた「ni yotte受動 ( 行為者を「NP-ni yotte」で表す直接受動です。この論文では、主語がVP内部から主語位置へ移動するタイプだと考えます。スコープや束縛の違いから、その移動の有無を検討します。) の反例」は、実は主語スコープ ( 量化子の意味がどこまで及ぶか、どちらが優先されるかという関係です。「だれかがみんなをほめた」と「みんなについて誰かがほめた」などの解釈差を説明します。) の分析を否定しない、という点です。移動 ( 文の構造を作る過程で、ある要素が別の位置へ動くと考えることです。ni yotte受動では主語が目的語側から主語位置へ移動するとされ、スコープ再構成の有無がその手がかりになります。)
一見すると「主語の が必ず広いスコープになってしまう」ように見える文がありますが、著者はその原因を「主語が移動していないから」ではなく、「ni yotte句が外側に影響を及ぼしにくい構造(不透明)」だからだと説明します。量化子 ( だれか、だれも、すべての、二人の、〜か〜など、人数や範囲を決める表現です。複数あると「どちらが先に意味を支配するか(スコープ)」の問題が出ます。)
そのために著者は、NP-ni yotte は単なる ではなく、動詞 yoru「負う(〜のせいでそうなる、〜による)」と -te からできた後置詞句 ( 名詞の後ろに付く助詞や後置詞でできる句(例:〜から、〜で)です。後置詞句の中の名詞は外側に影響を及ぼせる場合があり、ni yotte が単なる後置詞句ではない根拠になります。) のようなものだと提案します。すると、ni yotte の前のNPはその従属節の中に入り込んでいるので、文の外側に対して強く働けません。これにより、次のことが説明できます。従属節 ( 主節にぶら下がる小さな文のまとまりです。本稿では ni yotte が「NPに負って」のような従属節を作り、その中にNPが埋め込まれると考えます。)
- ni yotte句の中の量化子は、文の別の量化子に対して広いスコープを取りにくい
- ni yotte句の中の量化子は、目的語の中の代名詞を「束縛」しにくい
一方で、ni yotte に が付く形(例:mo ( 助詞の一つで、「〜も」の形で使われます。本稿では、dono-N と結びつくことで量化子として強く働き、ni yotte句でもスコープや束縛の性質が変わる点が重要です。) -ni yotte-mo)では、量化子としてのふるまいが変わり、ni yotte受動で「dono-N ( どの先生、どの審査員のような不定語(疑問語に近い形)です。mo と組み合わさると「すべての〜」のように量化子として働き、再構成を検出する材料になります。) 」が可能になることがある、と論じます。これは「主語が移動していて、意味の解釈では元の位置に戻ったように読める(逆スコープ ( 普通の語順から予想されるスコープ関係が逆になる解釈のことです。主語移動があるなら逆スコープが可能になるはずだ、という予測の検証に使われます。) )」という考え方と合います。再構成 ( 移動した要素が、意味の解釈では移動前の位置にいるように扱われる現象です。ni yotte受動で主語移動があることを、スコープの曖昧性から確かめるために重要です。)
それに対して では、そのような再構成が起きにくく、「主語は最初から主語位置にある」という見方と一致します。ni受動 ( 行為者を「NP-ni」で表す直接受動です。この論文では、主語が最初から主語位置にあり、移動しないタイプだと考えます。ni yotte受動との違いを見分ける中心点になります。)
また、 の受動でも、ni yotte型のほうが主語が別の量化子の下で狭いスコープを取りやすい傾向があり、これも「ni yotteは移動あり、niは移動なし」という結論と整合的です。二重目的語 ( 目的語が2つある動詞(例:紹介する で「誰に」「何を」)に関する構造です。VP内部の量化子どうしのスコープ関係から、主語がどこから来たかを推測できます。)
最後に、 でも同様の違いが見られる可能性があると述べます(ただし判断ははっきりしない部分もあるとしています)。所有者受動 ( 主語が「所有者(持ち主)」のように解釈される受動で、「太郎が成績をしかられた」のように、主語が直接しかられた物そのものではなく、その持ち主として関わります。主語がVP内部から上がるかどうかが大きな論点です。)
- 方法論:
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母語話者の「その文が自然かどうか」「どんな意味に解釈できるか」という判断を使い、統語構造の違いを推論しています。特に次の2点を診断として使います。
-量化子 ( だれか、だれも、すべての、二人の、〜か〜など、人数や範囲を決める表現です。複数あると「どちらが先に意味を支配するか(スコープ)」の問題が出ます。) :どの量化子が「より広く」意味を支配できるかスコープ ( 量化子の意味がどこまで及ぶか、どちらが優先されるかという関係です。「だれかがみんなをほめた」と「みんなについて誰かがほめた」などの解釈差を説明します。)
- :量化子が代名詞を「変数のように」解釈させられるか代名詞束縛 ( 量化子が代名詞を「それぞれの人に対応して変わるもの」として読ませることです。束縛できるかどうかは、c-command関係や構造の透明性を調べる重要なテストになります。)
ni と ni yotte を入れ替えた最小限の例文を作って比べ、解釈の違いが出るかを確認します。さらに、 を付けた環境(とくにmo ( 助詞の一つで、「〜も」の形で使われます。本稿では、dono-N と結びつくことで量化子として強く働き、ni yotte句でもスコープや束縛の性質が変わる点が重要です。) … mo)を使うとdono-N ( どの先生、どの審査員のような不定語(疑問語に近い形)です。mo と組み合わさると「すべての〜」のように量化子として働き、再構成を検出する材料になります。) 効果が見えやすくなり、受動のタイプ差がはっきり出ると主張します。再構成 ( 移動した要素が、意味の解釈では移動前の位置にいるように扱われる現象です。ni yotte受動で主語移動があることを、スコープの曖昧性から確かめるために重要です。)
同じ検査を にも適用し、主語が「内部から持ち上がった主語」らしくふるまうかを調べます。所有者受動 ( 主語が「所有者(持ち主)」のように解釈される受動で、「太郎が成績をしかられた」のように、主語が直接しかられた物そのものではなく、その持ち主として関わります。主語がVP内部から上がるかどうかが大きな論点です。)
- 結論と意義:
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本稿は、
とni受動 ( 行為者を「NP-ni」で表す直接受動です。この論文では、主語が最初から主語位置にあり、移動しないタイプだと考えます。ni yotte受動との違いを見分ける中心点になります。) の2分法は保てると結論づけます。つまり、ni yotte受動 ( 行為者を「NP-ni yotte」で表す直接受動です。この論文では、主語がVP内部から主語位置へ移動するタイプだと考えます。スコープや束縛の違いから、その移動の有無を検討します。)
- ni受動:主語は最初から主語位置で、 の役割を持つAffectee ( theta役割の一種で、「出来事の影響を受ける人・もの」という役割です。ni受動の主語はこの役割を持つため、抽象名詞が主語になりにくいなどの性質が説明されます。)
- ni yotte受動:主語はVP内部から主語位置へ する移動 ( 文の構造を作る過程で、ある要素が別の位置へ動くと考えることです。ni yotte受動では主語が目的語側から主語位置へ移動するとされ、スコープ再構成の有無がその手がかりになります。)
「ni yotte受動で主語が必ず広い になる」という見かけは、主語移動の有無の問題と、ni yotte句の中のスコープ ( 量化子の意味がどこまで及ぶか、どちらが優先されるかという関係です。「だれかがみんなをほめた」と「みんなについて誰かがほめた」などの解釈差を説明します。) が外にスコープを出せるかという問題を混同したために起きる、と整理します。量化子 ( だれか、だれも、すべての、二人の、〜か〜など、人数や範囲を決める表現です。複数あると「どちらが先に意味を支配するか(スコープ)」の問題が出ます。)
ni yotte を としてとらえると、そこに埋め込まれたNPが外側に強く働けないことが自然に説明でき、主語移動を否定する理由にはなりません。決定的な証拠は、従属節 ( 主節にぶら下がる小さな文のまとまりです。本稿では ni yotte が「NPに負って」のような従属節を作り、その中にNPが埋め込まれると考えます。) が見える環境(特に再構成 ( 移動した要素が、意味の解釈では移動前の位置にいるように扱われる現象です。ni yotte受動で主語移動があることを、スコープの曖昧性から確かめるために重要です。) …dono-N ( どの先生、どの審査員のような不定語(疑問語に近い形)です。mo と組み合わさると「すべての〜」のように量化子として働き、再構成を検出する材料になります。) )で、ni yotte受動では曖昧性が出るが、ni受動では出にくい点だとします。mo ( 助詞の一つで、「〜も」の形で使われます。本稿では、dono-N と結びつくことで量化子として強く働き、ni yotte句でもスコープや束縛の性質が変わる点が重要です。)
さらに、 についても、少なくとも ni yotte を使うタイプでは主語がVP内部起源のようにふるまう可能性が示され、先行研究の分析を後押しすると述べます。所有者受動 ( 主語が「所有者(持ち主)」のように解釈される受動で、「太郎が成績をしかられた」のように、主語が直接しかられた物そのものではなく、その持ち主として関わります。主語がVP内部から上がるかどうかが大きな論点です。)
全体としての貢献は、新理論を作るというより、「ni yotte の内部構造を正しく仮定するとスコープの事実をどう読むべきか」をはっきりさせた点にあります。
- 今後の展望:
-
今後の課題として、次の点が示唆されます。
- 特に の ni yotte+所有者受動 ( 主語が「所有者(持ち主)」のように解釈される受動で、「太郎が成績をしかられた」のように、主語が直接しかられた物そのものではなく、その持ち主として関わります。主語がVP内部から上がるかどうかが大きな論点です。) を含む例では判断がはっきりしないため、より多くの話者・文脈で体系的に確認する必要があるmo ( 助詞の一つで、「〜も」の形で使われます。本稿では、dono-N と結びつくことで量化子として強く働き、ni yotte句でもスコープや束縛の性質が変わる点が重要です。)
- ni yotte を「yoru+-te の 」とみなす提案について、意味の作られ方(合成)をさらに詳しく調べる必要がある従属節 ( 主節にぶら下がる小さな文のまとまりです。本稿では ni yotte が「NPに負って」のような従属節を作り、その中にNPが埋め込まれると考えます。)
- に頼った診断が中心なので、別の診断も使って「c-command ( 文の木構造で「ある要素が別の要素を上から支配する」関係です。スコープを取れるか、代名詞を束縛できるかを判断する基本的な道具として使われます。) の性質」と「主語の派生」をより確実に切り分ける必要がある行為者句 ( 動作を行う人や原因を表す部分で、受動文では「〜に」「〜によって」などで示されます。行為者句が文のどこにあり、どんな構造かが、意味解釈(スコープなど)に影響します。)
- 直接受動/所有者受動と、ni/ni yotte の組み合わせが、 を使う説明をさらに確かめる有望な領域なので、もっと明確なデータで検証する必要がある移動 ( 文の構造を作る過程で、ある要素が別の位置へ動くと考えることです。ni yotte受動では主語が目的語側から主語位置へ移動するとされ、スコープ再構成の有無がその手がかりになります。)
- 何のために?:
-
この文は、日本語の
を考えます。受け身 ( 文の形の一つで「だれかが何かをする」ではなく「だれかが何かをされる」を表します。だれが被害 を受けたり影響 を受けたりしたかを伝 えやすいので大事です。)
受け身は、「〜に」と「〜によって」があります。
前の研究では、2つは違 うと言います。
「〜に」の受け身は、 が主語 ( 文の中心になる言葉で「だれが」「何が」を表します。受け身では主語が「される側 」になることが多く、文の意味を決めるのに重要 です。) 最初 から主語です。
主語は、こまった人の役になります。
「〜によって」の受け身は、主語が動くと言います。
もともと別 の場所にいて、主語へ来ます。
でも、言葉の で、意味の広がり方 ( 同じ文でも、どこまで別 の意味として読めるかという考え方です。読みが複数 できる理由や、できない理由を説明 するのに重要 です。) 変 な例 があります。
この文は、その例 を見直します。
見直すと、前の考えが合うと示 します。
「 」でも、同じか調べます。持ち主の受け身 ( 持ち主が関係 する受け身の形で、たとえば「私 は弟に本を読まれた」のように、持ち主側 が影響 を受けた感じを表します。受け身の種類 の違 いを調べるために重要 です。)
- 何が分かったの?:
-
大事な発見は、
変 な例 は反対にならない点です。
一見、 の意味が強すぎる文があります。主語 ( 文の中心になる言葉で「だれが」「何が」を表します。受け身では主語が「される側 」になることが多く、文の意味を決めるのに重要 です。)
でも理由は、主語が動かないからではないです。
「〜によって」の部分が、外に出にくいからです。
筆者は、「〜によって」は特別 な形と言います。
「〜によって」は、小さな文のかたまりです。
だから中の は、外に強く出られません。名詞 ( 人や物やことの名前を表す言葉です。文の中で主語や目的語 になり、どの言葉が外に出られるかなどの説明 で重要 になります。)
そのため、 に意味の広がり方 ( 同じ文でも、どこまで別 の意味として読めるかという考え方です。読みが複数 できる理由や、できない理由を説明 するのに重要 です。) が出ます。制限 ( ある読み方や使い方が「できない」「しにくい」と決まってしまうことです。なぜ特定 の読みが出ないのかを説明 するのに重要 です。)
また、 をうまくつなぎにくいです。代名詞 ( 人や物の名前の代わりに使う言葉で「それ」「彼 」などです。文の中で「だれを指すか」が分かりにくくなることがあり、読みの違 いを調べるのに重要 です。)
でも「〜によっても」だと、ふるまいが変 わります。
そのときは、意味が逆 になる読みもできます。
これは、主語が動いたと考えると合います。
一方「〜に」の は、受け身 ( 文の形の一つで「だれかが何かをする」ではなく「だれかが何かをされる」を表します。だれが被害 を受けたり影響 を受けたりしたかを伝 えやすいので大事です。) 逆 の読みが出にくいです。
だから主語は、最初 から主語だと考えます。
二つの がある文でも、目的語 ( 「何を」「だれを」のように、動作の対象 を表す言葉です。目的語 がいくつあるかで文の形や意味の読み方が変 わるので大事です。) 違 いが出ます。
「〜によって」のほうが、弱い読みになりやすいです。
でも、同じかもしれません。持ち主の受け身 ( 持ち主が関係 する受け身の形で、たとえば「私 は弟に本を読まれた」のように、持ち主側 が影響 を受けた感じを表します。受け身の種類 の違 いを調べるために重要 です。)
ただし、まだはっきりしない所もあります。
- どうやったの?:
-
日本語を話す人の感じ方を使います。
その文が自然 かどうかを聞きます。
どんな意味に読めるかも確 かめます。
見たい点は、2つあります。
1つ目は、意味がどこまで広がるかです。
2つ目は、 がだれを指すかです。代名詞 ( 人や物の名前の代わりに使う言葉で「それ」「彼 」などです。文の中で「だれを指すか」が分かりにくくなることがあり、読みの違 いを調べるのに重要 です。)
「〜に」と「〜によって」を入れかえて比 べます。
ちがう読みが出るかを見ます。
とくに「〜によっても」を使うと分かりやすいです。
にも、同じ調べ方をします。持ち主の受け身 ( 持ち主が関係 する受け身の形で、たとえば「私 は弟に本を読まれた」のように、持ち主側 が影響 を受けた感じを表します。受け身の種類 の違 いを調べるために重要 です。)
- 研究のまとめ:
-
結論 は、2つの は分けて考えられることです。受け身 ( 文の形の一つで「だれかが何かをする」ではなく「だれかが何かをされる」を表します。だれが被害 を受けたり影響 を受けたりしたかを伝 えやすいので大事です。)
「〜に」の受け身は、 が主語 ( 文の中心になる言葉で「だれが」「何が」を表します。受け身では主語が「される側 」になることが多く、文の意味を決めるのに重要 です。) 最初 から主語です。
主語は、こまった人の役を持ちます。
「〜によって」の受け身は、主語が中から動きます。
「主語が強く見える」理由は、別 にあります。
「〜によって」の中の言葉が、外に出にくいのです。
だから、 を主語 移動 ( 文の中で、主語がもともといた場所から別 の位置 に出てくると考える見方です。「〜によって」の受け身の説明 で、意味の違 いを考えるために重要 です。) 否定 できません。
とくに「〜によっても」では、2つの読みが出ます。
でも「〜に」では、出にくいです。
これが大事な だと言います。証拠 ( ある考えが正しいと示 すための根拠 です。どの点が「理由になるのか」をはっきりさせるために重要 です。)
でも、同じ形がありそうです。持ち主の受け身 ( 持ち主が関係 する受け身の形で、たとえば「私 は弟に本を読まれた」のように、持ち主側 が影響 を受けた感じを表します。受け身の種類 の違 いを調べるために重要 です。)
この文の良 さは、見方をはっきりさせた点です。
- これからどうする?:
-
これから、もっとくわしく調べる
必要 があります。
の「〜によっても」は、むずかしいです。持ち主の受け身 ( 持ち主が関係 する受け身の形で、たとえば「私 は弟に本を読まれた」のように、持ち主側 が影響 を受けた感じを表します。受け身の種類 の違 いを調べるために重要 です。)
いろいろな人に聞いて、たしかめます。
「〜によって」の中の意味の作り方も調べます。
今は、1つの調べ方によりすぎています。
ほかの調べ方も使い、ちがいをはっきりさせます。
もっとはっきりした例 で、確 かめていきます。
- 著者名:
- Homma Shinsuke
- 掲載誌名:
- 言語の普遍性と個別性
- 巻:
- 10
- ページ:
- 101 - 113
- 発行日:
- 2019-03
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/51035
