論文詳細

人文社会科学系 教育学部 #紀要論文

月の観測における簡易高度測定器「ツクヨミ」の提案

AI解説:
本研究の背景として、小中学校の理科教育において「月の満ち欠け」や「月と太陽と地球の位置関係」といった天体観測の項目は、教育者が自信を持って教えにくい分野であるという問題がある。また、大学生や現職教員の理解度も不十分であることが指摘されている。本研究では、教育学部理科教育専修の2年次学生を対象に、手作りの月の高度簡易測定器「ツクヨミ」と方位磁石を用いて1ヶ月間の月の観測を行わせ、学生の理解度を高めることを目的としている。
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著者名:
藤林 紀枝, 山上 遥那, 高橋 洋子, 髙清水 康博, 齋藤 暁史
掲載誌名:
新潟大学教育学部研究紀要 自然科学編
巻:
11
号:
2
ページ:
113 - 123
発行日:
2019-03
著者による要約:
月の高度簡易測定器「ツクヨミ」を作成し,方位磁石とともに用いて月の形と移動経路を測定する実習を実施した.小・中学校の学習内容である「月の満ち欠け」,「地球から見た月の動き」,「月と太陽と地球の位置関係」,および「月の運動(公転)と見え方」は,小学校理科の学習項目の中で「教える自信」のない項目の1つである.本研究では,教育学部理科教育専修の2年次学生の授業で,月の高度簡易測定器「ツクヨミ」を新たに作成し,それを用いて1ヶ月間のうち6日の月の観測をさせた.そのデータを基に,月と太陽と地球の位置関係と月の運動(公転)について図示させたところ,系統的に高めの数値を記録した者が数名あったが,測定者ごとの月の移動経路はほぼ弧を描き,有益な結果を得ることができた.授業では他に,ボールとライトを用いた月の満ち欠け実験と,月齢カレンダーを用いた月の形と月の出・入時刻の規則性の調べ等を行った.その結果,授業前は位置関係と地球から見た月の形と出入り時刻の相関性が分かっていた学生が18.2%だったのに対し,授業後は理解度が大きく上昇し81.8%となった.記述からは,月と太陽と地球の位置関係の理解において,視点の転換だけでなく,地球の自転による時刻の変化と,北から俯瞰した時の(観察者にとっての)方角の概念が欠けやすいことが明らかになった.そして,特に中学生以降の観察や観測の機会の少なさが,理解度を減少させる原因の1つとなっている可能性が指摘される.「ツクヨミ」のような簡易測定器を用いて月の位置を数値化し,科学的思考に発展させることが今後重要となるであろう.
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