注意バイアス修正の手続きと臨床効果の展望

不安や抑うつを持つ人々は、情報を過度にネガティブに処理する認知の偏りを持つことが指摘されています。特に、不安を持つ人々の視空間的な注意バイアスに注目が集まり、脅威となる刺激に対して接近的な注意バイアスを示すことが頑強な現象として報告されています。注意バイアスの修正が不安症の治療法としての可能性が注目され、認知課題を通じて認知バイアスを修正することで高不安者の不安やストレスに対する脆弱性を低減させる試みが数多く行われてきました。本論文では、これまで行われた不安に関する注意バイアスの測定や修正に関する研究を概観し、その現状を整理するとともに、今後の研究における展望を述べることを目的としています。

高不安者の脅威刺激に対する注意バイアスの存在は、多くの研究において確認されてきました。特に、情動ストループ課題やドットプローブ課題を通じて注意バイアスが測定されることが多く、高不安者は脅威刺激に対して明確な注意バイアスを示すことが明らかになっています。しかし、注意バイアス修正訓練の効果に関しては一貫した結果が得られていないことが指摘されており、メタ分析でも効果の大小や異質性が報告されています。研究によっては注意バイアス修正が不安低減に効果的であるとする一方で、出版バイアスや異質性を考慮すると効果が小さいか認められないとするものもあり、全体として一貫した結論には至っていません。

注意バイアスの測定には、情動ストループ課題やドットプローブ課題が主に使用されます。情動ストループ課題では、ネガティブな意味を持つ画像や単語の色を答えさせることで反応時間を測定し、注意バイアスの存在を示します。一方、ドットプローブ課題は、脅威刺激と中性刺激を提示した後にターゲット刺激の反応時間を測定する手法で、脅威刺激に対する接近的または回避的な注意バイアスの方向を検証することが可能です。注意バイアス修正訓練では、ドットプローブ課題を用いて脅威刺激からの回避やポジティブ刺激への接近を訓練し、不安やストレスに対する脆弱性の低減を目指します。

注意バイアス修正の効果に関する研究は増えているものの、その効果は一貫しておらず、メタ分析でも結果の異質性が報告されています。注意バイアスの存在自体は多くの研究で確認されていますが、その修正が不安低減にどれほど寄与するかは明確ではありません。注意バイアスの修正が臨床的に有用であるかを判断するためには、プロセスとしての注意バイアスを正確に測定する手法の確立が求められます。現状では、注意バイアス修正訓練の手続きに改良の余地があり、その効果を正確に評価するための新たな指標の開発が必要です。

今後の研究では、注意バイアス修正の手続きや課題条件の改良が求められます。特に、ポジティブ刺激への接近を訓練する方法や視覚探索課題など、新たな手法の効果を検証することが重要です。また、注意バイアス修正が認知行動療法（CBT）と組み合わせられた場合の効果や、CBTとの比較についても注目されます。注意バイアス修正の効果を一貫したものとするためには、より多くの研究が行われ、その結果がメタ分析を通じて包括的に検証されることが必要です。さらに、プロセスとしての注意バイアスを正確に測定する新たな指標の開発も進められるべきであり、その成果が不安やストレスの治療にどのように応用されるかが今後の課題となります。

不安(ふあん)やうつのある人は、悪い情報(じょうほう)をとても気にします。特(とく)に不安(ふあん)が強い人は、危(あぶ)ないことに注意が向きやすいです。この注意の向き方を変(か)えると、不安(ふあん)が減(へ)るかもしれません。だから、たくさんの研究が行われました。この論文(ろんぶん)では、不安(ふあん)に関(かん)する注意の向き方の研究をまとめています。そして、これからの研究について考えます。

たくさんの研究で、不安(ふあん)が強い人は、こわいものに強い注意を向けることがわかりました。「情動(じょうどう)ストループ課題(かだい)」や「ドットプローブ課題(かだい)」で、この注意の向き方が測(はか)られます。でも、注意の向き方を変(か)える訓練(くんれん)の効果(こうか)は、研究ごとに違(ちが)います。だから、はっきりした結論(けつろん)は出ていません。

注意の向き方を測(はか)る方法(ほうほう)に「情動(じょうどう)ストループ課題(かだい)」と「ドットプローブ課題(かだい)」があります。
- 情動(じょうどう)ストループ課題(かだい)：悪い意味のある絵や言葉の色を答えさせて、その時間を測(はか)ります。
- ドットプローブ課題(かだい)：こわい絵と普通(ふつう)の絵を見せて、その後に出てくる点にどれくらいで反応(はんのう)するかを測(はか)ります。この方法(ほうほう)で、こわいものへの注意の向き方がわかります。

注意の向き方を変(か)える訓練(くんれん)では、ドットプローブ課題(かだい)を使います。こわいものから注意をそらして、いいものに注意を向けるように練習します。

注意の向き方を変(か)える訓練(くんれん)の研究は増(ふ)えています。でも、その効果(こうか)はまだはっきりしていません。注意の向き方自体はたくさんの研究で確認(かくにん)されています。でも、その変(か)えることが不安(ふあん)をどれくらい減(へ)らすかは、まだわかりません。これから、注意の向き方を正確(せいかく)に測(はか)り、その変(か)える方法(ほうほう)を良(よ)くすることが必要(ひつよう)です。

これからの研究では、注意の向き方を変(か)える方法(ほうほう)や条件(じょうけん)を良(よ)くすることが大事です。特(とく)に、いいものへの注意を向ける練習など、新しい方法(ほうほう)の効果(こうか)を調べることが大切です。また、認知(にんち)行動療法(りょうほう)（CBT）と組み合わせた効果(こうか)や、その比較(ひかく)も注目されます。注意の向き方を変(か)える効果(こうか)を一貫(いっかん)したものにするために、もっと研究が必要(ひつよう)です。