論文詳細
教育学部
#紀要論文
ブータンの民俗音楽覚書 : 王様の音楽家ツェッテン・ドルジ,ダガナ県の遊び歌ツァンモ,古い歌ダガ・ラ・ミ・ラジュとシャム・シャ・ドレィ
- AI解説:
- この研究は、筆者らが長年にわたり継続しているブータン民俗音楽の調査の一環として、2017年に行われた新たな調査結果とその考察をまとめたものである。ブータンの民俗音楽、特に子どもの遊び歌「ツァンモ(tsangmo)」に焦点を当て、その現状と伝承の動向について報告してきた。また、ツァンモに類似する東部の歌遊び「カプシュー(khapsho)」の発見も行い、これらの遊び歌が教育の普及とともに消えつつある一方で、学校行事やメディアを通じて新たな形で伝承されていることも明らかにしている。本研究の目的は、2017年の調査で得られた新たな事実を基に、ブータンの民俗音楽文化の現状とその伝承方法についてより深く理解することである。
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教育学部
#紀要論文
ブータンの民俗音楽覚書 : 王様の音楽家ツェッテン・ドルジ,ダガナ県の遊び歌ツァンモ,古い歌ダガ・ラ・ミ・ラジュとシャム・シャ・ドレィ
AI解説
- 背景と目的:
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この研究は、筆者らが長年にわたり継続しているブータン民俗音楽の調査の一環として、2017年に行われた新たな調査結果とその考察をまとめたものである。ブータンの民俗音楽、特に子どもの遊び歌「ツァンモ(tsangmo)」に焦点を当て、その現状と伝承の動向について報告してきた。また、ツァンモに類似する東部の歌遊び「カプシュー(khapsho)」の発見も行い、これらの遊び歌が教育の普及とともに消えつつある一方で、学校行事やメディアを通じて新たな形で伝承されていることも明らかにしている。本研究の目的は、2017年の調査で得られた新たな事実を基に、ブータンの民俗音楽文化の現状とその伝承方法についてより深く理解することである。
- 主要な発見:
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2017年の調査により、以下の三つの主要な発見が得られた。一つ目は、ブータンの「王様の音楽家」として知られるチベット出身の音楽家ツェッテン・ドルジの音楽歴についてのインタビューである。彼は1960年にブータンに渡り、伝統的なチベットの歌「ヴェードラ(boedra)」をブータンにもたらした。二つ目は、西南部ダガナ県におけるツァンモの多様な遊び方についての調査であり、特にツェザ村やガンカ村での実践例を報告している。三つ目は、ダガナに伝わる特有の歌「シャム・シャ・ドレィ」や「ダガ・ラ・ミ・ラジュ」の存在とその継承についての調査である。
- 方法論:
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調査は2017年9月21日から27日までの7日間にわたり行われた。調査者は伊野義博、黒田清子、ペマ・ウォンチュクの三人で、方法としては半構造化インタビューが用いられた。これにより、ブータンの音楽家や地元住民から詳細な情報を収集し、民俗音楽の現在の実践状況や伝承の状況についての深い洞察を得ることができた。特に、ツェッテン・ドルジへのインタビューでは、彼の音楽活動やチベットとブータンの音楽交流の歴史を詳細に聞き取った。
- 結論と意義:
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この研究は、ブータンの民俗音楽文化が教育の普及や現代化の影響を受けて急速に変化しつつある現状を明らかにした。特に、ツァンモやカプシューのような伝統的な遊び歌が消滅の危機に瀕している一方で、学校やメディアを通じて新たな形で伝承されていることが確認された。また、ツェッテン・ドルジの活動を通じて、ブータンにおける音楽文化の多様性とその歴史的背景に関する新たな知見を提供した。このような研究は、文化の保護と継承のための基礎資料となり、地域社会の文化的アイデンティティの理解と保存に寄与する。
- 今後の展望:
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今後の研究では、さらに詳細なフィールドワークを通じて、ブータンの他の地域における民俗音楽の現状とその伝承方法についても調査を進める予定である。また、ツァンモやカプシューだけでなく、他の民俗音楽ジャンルや踊りの研究も進め、ブータン全体の音楽文化の包括的な理解を目指す。さらに、得られた知見を基に、学校教育やコミュニティ活動を通じた文化保存のための具体的なアプローチを提案し、文化の継承を支援する取り組みを行っていく予定である。
- 背景と目的:
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この研究は、筆者たちが長年続けているブータン民俗音楽の調査の一環として、2017年に行った新たな調査結果とその考察をまとめたものです。ブータンの民俗音楽の中でも特に子どもの遊び歌「ツァンモ(tsangmo)」に注目し、その現状と伝承の動向について報告しています。また、東部の似た歌遊び「カプシュー(khapsho)」も調査し、これらの遊び歌が教育の普及とともに減少している一方で、学校行事やメディアを通じて新たな形で伝えられていることも明らかにしました。この研究の目的は、2017年の調査結果を基に、ブータンの民俗音楽文化の現状とその伝承方法をより深く理解することです。
- 主要な発見:
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2017年の調査によって、以下の三つの主要な発見が得られました。一つ目は、「王様の音楽家」として知られるチベット出身の音楽家ツェッテン・ドルジについてのインタビューです。彼は1960年にブータンに渡り、伝統的なチベットの歌「ヴェードラ(boedra)」をブータンにもたらしました。二つ目は、西南部ダガナ県でのツァンモの多様な遊び方についての調査で、特にツェザ村やガンカ村での実践例を報告しています。三つ目は、ダガナに伝わる特有の歌「シャム・シャ・ドレィ」や「ダガ・ラ・ミ・ラジュ」の存在とその伝承についての調査です。
- 方法論:
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調査は2017年9月21日から27日までの7日間にわたって行われました。調査チームは伊野義博、黒田清子、ペマ・ウォンチュクの三人で、半構造化インタビューという方法を用いました。これにより、ブータンの音楽家や地元住民から詳細な情報を収集し、民俗音楽の現在の実際の状況や伝承の状況について深く理解することができました。特に、ツェッテン・ドルジへのインタビューでは、彼の音楽活動やチベットとブータンの音楽交流の歴史について詳しく聞き取りました。
- 結論と意義:
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この研究は、ブータンの民俗音楽文化が教育の普及や現代化の影響を受けて急速に変化している現状を明らかにしました。特に、ツァンモやカプシューのような伝統的な遊び歌が消滅の危機にある一方で、学校やメディアを通じて新たな形で伝承されていることが確認されました。また、ツェッテン・ドルジの活動を通じて、ブータンにおける音楽文化の多様性とその歴史的背景について新たな知見を提供しました。このような研究は、文化の保護と継承のための基礎資料となり、地域社会の文化的アイデンティティの理解と保存に寄与します。
- 今後の展望:
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今後の研究では、さらに詳細なフィールドワークを通じて、ブータンの他の地域における民俗音楽の現状とその伝承方法についても調査を進める予定です。また、ツァンモやカプシューだけでなく、他の民俗音楽ジャンルや踊りの研究も進め、ブータン全体の音楽文化の包括的な理解を目指します。さらに、得られた知見を基に、学校教育やコミュニティ活動を通じた文化保存のための具体的なアプローチを提案し、文化の継承を支援する取り組みを行う予定です。
- 何のために?:
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この研究は、ブータンの
民俗 音楽を調べるために行いました。2017年に新しい調査 をしました。特 に子どもの遊び歌「 」に注目しました。東部のツァンモ ( ブータンの子どもが遊ぶときに歌う伝統的 な歌です。) 似 た歌「 」も調べました。これらの歌が学校やメディアを通じて新しい形でカプシュー ( ブータン東部で子どもたちが遊ぶときに歌う伝統的 な歌です。) 伝 えられていることがわかりました。この研究の目的 は、ブータンの民俗 音楽の現状 と伝 え方 を深く理解 することです。
- 何が分かったの?:
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2017年の
調査 で、三つの大事なことがわかりました。まず、チベット出身の音楽家ツェッテン・ドルジさんの話を聞きました。彼 は1960年にブータンに来て、チベットの歌「 」をヴェードラ ( チベットの伝統的 な歌で、ブータンに伝 わったものです。) 伝 えました。次に、西南部ダガナ県での の遊び方を調べました。ツァンモ ( ブータンの子どもが遊ぶときに歌う伝統的 な歌です。) 特 にツェザ村やガンカ村の例 を報告 しました。最後 に、ダガナに伝 わる特別 な歌「 」や「シャム・シャ・ドレィ ( ダガナ地方に伝 わる特別 な歌です。) 」のダガ・ラ・ミ・ラジュ ( ダガナ地方に伝 わる特別 な歌です。) 存在 と伝 え方 も調べました。
- どうやったの?:
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調査 は2017年9月21日から27日までの7日間行いました。調査 チームは三人で、 という半 構造化 インタビュー( 質問 の枠組 みはあるが、自由な回答ができるインタビュー方法 です。) 方法 を使いました。これにより、音楽家や地元の人から詳 しい話を聞きました。特 にツェッテン・ドルジさんの音楽活動や歴史 について詳 しく聞きました。
- 研究のまとめ:
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この研究は、ブータンの
民俗 音楽が学校や現代 の影響 で変 わっていることを明らかにしました。伝統的 な遊び歌が減 っている一方で、新しい形で伝 えられています。ツェッテン・ドルジさんの話を通じて、音楽文化の多様性 と歴史的 背景 についても新しい発見がありました。この研究は、文化の保護 と伝承 に役立ちます。
- これからどうする?:
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今後の研究では、ブータンの他の
地域 の民俗 音楽も調べます。 やツァンモ ( ブータンの子どもが遊ぶときに歌う伝統的 な歌です。) だけでなく、他の音楽やカプシュー ( ブータン東部で子どもたちが遊ぶときに歌う伝統的 な歌です。) 踊 りも研究します。さらに、学校教育やコミュニティ活動を通じて、文化を守るための方法 を提案 します。
- 著者名:
- 伊野 義博, 黒田 清子, ペマ ウォンチュク
- 掲載誌名:
- 新潟大学教育学部研究紀要 人文・社会科学編
- 巻:
- 11
- 号:
- 1
- ページ:
- 69 - 90
- 発行日:
- 2018-10
- 著者による要約:
- This paper is a report of field survey on Bhutanese folk music in 2017. We have reported the details of tsangmo, the playful singing dialogues from the research of Paro, Punakha, Trongsa (Ino 2012, Ino et al. 2014a, 2014b). In Melak village in Trashigang, we found and reported a khapsho similar to tsangmo (Ino et al. 2015a). From these surveys, tsangmo was originally playing when children grazed livestock, but turned out to have disappeared with the spread of school education. On the other hand, We also learned that tsangmo’s practice is being done in new forms such as school events and radio programs. So we reported about tsangmo’s practice at school and media. At the same time, we held an international symposium on the succession of folk music culture (Ino et al. 2016a, Ino et al. 2017). Based on these surveys, from September 21 to 27, 2017, we conducted field research in Thimphu and Dagana. The research method is an semi-structured interview. As a result, we were able to add some new facts. 1. We interviewed Tsheten Dorji, who was born in Tibet and became a king’s musician on his history of music activities. In the past trade was actively done between Tibet and Bhutan. It was an opportunity to know each other’s songs. Tibetan songs were brought to Bhutan, and now it became boedra, one of the genres of Bhutanese songs. boedra, which was brought to Bhutan by Tibetan traders and beggars, is said to have spread all over Bhutan in the Third King’s era. In addition, Tsheten Dorji thinks that the song he made since he came to Bhutan should be called drukdra instead of boedra. This problem is extremely important when considering Bhutanese music. From his story we learned Tibet had a song lugar similar to tsangmo. The similarity is that the lyrics are six syllable four-line poetry, melody, improvising to make lyrics, dialogue play. Also, we have learned that there is a song called Go Mo playing riddles. This song is a bet, winning or losing, the winner taking items. From this survey, we expanded the possibility of research on the relationship between play, divination, gaming and singing.
2. We interviewed about how to play tsangmo in the Tseza village in Dagana. At this time, the villagers sang tsangmo for the first time in 40 years. The villagers disputed long hours about how to play and interpret lyrics. We was able to grasp the situation where the tsangmo tradition is disappearing. As in other areas, it was divided into two groups, put items, singing while pointing to items with a cane, playing fortune telling about the item (owner) hit at the end of the song. In Tseza village, men and women who became 11 years old played in tsangmo and married when they were 14 and 15 years old. Because tsangmo is accurate fortune telling, the villagers are now married, there were families and children, they could not do the same as when they were children. We understood the strength of elements as tsangmo’s fortune telling. In Tseza village, we learned about daga ra mey lazhu as Dagana’s old song. This song is a sad song of a woman who was taken from the village of Dagana and left in the mountain. This song is currently in a situation where parts are only sung and not all are handed down. 3. We interviewed Sonam Choden who is only one singer of Dagana’s old song sham sha doley. This song sang the Zhabs Drung’s cane who came to Dagana. This song is singing the process until the cane grows into trees, which is a very long and difficult contents. Londa, an opportunity for sham sha doley to sing, is an archery tournament in the village, praying for village safety once a year. Sonam Choden also forgot about tsangmo until we interviewed. When she was a child tsangmo was a game where several people gambled items. However, she remembers that her grandparents and parents used fortune telling and competition in tsangmo. We grasp the situation that tsangmo disappeared through generations. In addition to boedra and tsangmo, old songs such as daga ra mey lazhu and sham sha doley, the treasure-like culture that has made the way of life and thinking of Bhutan people has disappeared.
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/50684
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