平仮名書字学習における教科書体 : 国定第四期，第五期国語教科書を中心に

本論文では、昭和初期に使用された国定第四期国語読本の平仮名教科書体について、その成立の経緯と書字学習における使用方法を検討することを目的としています。小学校で使用される平仮名の教科書体は、現在の手書き文字の学びに大きな影響を与えていることから、この教科書体の成り立ちや変遷を理解することは重要です。著者は以前にも教科書体と書字学習の関係について考察したが、特に平仮名教科書体の字形一覧や字形分析を行っていなかったため、特に国定第四期、第五期の国語教科書における新たな平仮名教科書体の導入とその影響に焦点を当てています。

本論文の主要な発見は、昭和初期に導入された新しい平仮名教科書体が、平安期の文字を基本にし、それを現代の小学生に適した形に工夫して作成されていたことです。特に、各務虎雄や高塚竹堂などが新教科書体の作成に深く関わり、古筆研究の成果や書道振興がそのデザインに反映されていることが明らかになりました。また、新教科書体が作成される過程で特定の文字の形状が大きく変更され、その後の戦後の教科書体にも影響を与えたことが示されています。

本論文では、国定第四期国語読本の平仮名教科書体の作成過程を詳細に検討するため、各務虎雄の解説や高塚竹堂の資料を参考にしています。また、巻末の字形一覧や表を用いて、三期から五期までの教科書体の変遷を比較・分析しています。さらに、新教科書体の設計や導入に関わった人物の背景やその意図についても考察し、当時の出版・印刷技術の向上がどのように影響を与えたかも検討しています。

本論文の結論として、新教科書体の導入が平仮名の書字学習に大きな影響を与えたことが明らかになりました。新教科書体のデザインには古筆研究や書道振興が影響しており、平仮名の書字規範として教科書体が重要な役割を果たしていたことが示されました。この研究は、現在の教育現場においても教科書体の重要性を再認識させ、手書き文字の学びにおける基準を考える上で非常に有益です。さらに、教科書体の作成過程やその背景についての理解は、今後の教育課程や教材開発にとっても有用な情報を提供します。

今後の研究課題としては、平安期の仮名文字字形が教科書体に取り入れられたことについての評価を、書字学習以外の枠組からも検討することが挙げられます。また、現在の教育現場における平仮名教科書体の使用状況やその効果についてもさらなる研究が必要です。横書きへの対応やデジタル教材の導入など、現代の教育環境に合わせた教科書体の開発とその影響についても検討することが求められます。今後の研究を通じて、より効果的な書字教育方法が確立されることを期待しています。