論文詳細
自然科学系
農学部
#紀要論文
起業家精神と起業環境が開業率に与える影響:都道府県データによる分析
- AI解説:
- 日本の新規開業率は4~5%で停滞しており、他の先進国と比較して低い水準にある。本研究の目的は、経済的要因、ソーシャルキャピタル、および起業家精神の相互関係を分析し、日本における新規開業のメカニズムを明らかにすることにより政策的含意を導出することにある。特に、起業家精神が新規開業に至るまでの過程と地域の様々な要因の影響に焦点を当てている。
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自然科学系
農学部
#紀要論文
起業家精神と起業環境が開業率に与える影響:都道府県データによる分析
AI解説
- 背景と目的:
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日本の新規開業率は4~5%で停滞しており、他の先進国と比較して低い水準にある。本研究の目的は、経済的要因、ソーシャルキャピタル、および起業家精神の相互関係を分析し、日本における新規開業のメカニズムを明らかにすることにより政策的含意を導出することにある。特に、起業家精神が新規開業に至るまでの過程と地域の様々な要因の影響に焦点を当てている。
- 主要な発見:
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分析の結果、人口密度は新規開業率に対して最も大きな正の影響を与えていることが示された。また、ブリッジング・ソーシャルキャピタルは新規開業に正の効果を有する一方で、ボンディング・ソーシャルキャピタルは負の効果を有することがわかった。さらに、失業率は新規開業率に対して直接的には正の影響を与えるが、間接的には起業家精神の低下を通じて負の影響を与える。所得は高い地域で新規開業の必要性が低いため、負の影響を及ぼしている。
- 方法論:
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本研究では、都道府県レベルでのデータを用いて、構造方程式モデリング(SEM)を用いた計測が行われた。起業環境、ソーシャルキャピタル、個人属性が新規開業にどのように影響を与えるかを分析した。具体的には、新規開業率、人口密度、失業率、起業希望者率、起業準備者率といった変数に注目し、それらの相関関係を調査した。
- 結論と意義:
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本研究の結果、起業家精神は人口密度とブリッジング・ソーシャルキャピタルによって促進され、所得、失業率、ボンディング・ソーシャルキャピタルによって抑制されることが示された。新規開業率には地域格差が存在し、地域の持続可能性と関連していることが確認された。これにより、地域ごとの特性に応じた政策が必要であることが示唆された。例えば、就業者には副業の規制緩和、非就業者には起業家精神の養成、高齢者や女性にはビジネス参加を促進する施策が求められる。
- 今後の展望:
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本研究では、経済的および社会的要因の範囲の拡大、時系列分析、産業別分析、国際比較などの改善点が示されており、これらは今後の課題として取り組むべきである。また、地域の持続可能性の観点からの研究も必要であり、特に地域格差の是正と地域活性化に向けた具体的な政策提言が求められる。さらに、起業家精神を刺激し強化するための新たなアプローチの模索も重要である。
- 背景と目的:
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日本では新しく会社を始める人が少なく、その割合が4~5%と他の先進国と比べて低いです。この研究の目的は、経済的要因、
(社会でのつながりや信頼)、そしてソーシャルキャピタル ( 社会での信頼やつながりのこと。人々が協力しやすくなるための要素を指します。例えば、友人や知人とのネットワークもソーシャルキャピタルの一部です。) (新しいことに挑戦する気持ち)の関係を分析し、日本での新しい会社の始まり方を明らかにすることです。特に、起業家精神が新しい会社を始める過程や地域ごとの影響に注目しています。起業家精神 ( 新しいことに挑戦する意欲や能力のこと。新しいアイデアを実行に移し、会社を設立する際に必要な態度やスキルを指します。)
- 主要な発見:
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調査の結果、人口密度が高い地域では新しい会社が多く生まれることがわかりました。また、
(異なるグループ間のつながり)は新しい会社の設立に良い影響を与えますが、ブリッジング・ソーシャルキャピタル ( 異なるグループやコミュニティの間のつながりのこと。多様な情報やリソースの共有ができるため、新しい会社を始める際に有利になります。) (同じグループ内の強いつながり)は逆に悪い影響を与えます。失業率が高いと新しい会社が増えますが、その一方で、ボンディング・ソーシャルキャピタル ( 同じグループ内での強いつながりのこと。グループ内での信頼や協力を促進しますが、外部からの新しい情報やリソースが入りにくくなることもあります。) が低下してしまうことがわかりました。所得の高い地域では新しい会社を始める必要性が低く、その結果、新規開業率が下がります。起業家精神 ( 新しいことに挑戦する意欲や能力のこと。新しいアイデアを実行に移し、会社を設立する際に必要な態度やスキルを指します。)
- 方法論:
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この研究では、日本の都道府県ごとのデータを使い、
という方法で分析しました。特に、新規開業率、人口密度、失業率、起業希望者率、起業準備者率などのデータを使い、それらの関係を調べました。構造方程式モデリング(SEM) ( 複数の変数間の関係を統計的に分析する方法。因果関係を明らかにするために使われます。)
- 結論と意義:
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研究の結果、人口密度と
がブリッジング・ソーシャルキャピタル ( 異なるグループやコミュニティの間のつながりのこと。多様な情報やリソースの共有ができるため、新しい会社を始める際に有利になります。) を高めることがわかりました。しかし、所得や失業率、起業家精神 ( 新しいことに挑戦する意欲や能力のこと。新しいアイデアを実行に移し、会社を設立する際に必要な態度やスキルを指します。) は逆に起業家精神を抑制します。地域ごとの特性に応じた政策が必要であり、例えば、働いている人には副業の規制を緩和し、仕事を持たない人には起業家精神を育てる支援が求められます。高齢者や女性に対しては、ビジネスに参加しやすい環境を整えることが重要です。ボンディング・ソーシャルキャピタル ( 同じグループ内での強いつながりのこと。グループ内での信頼や協力を促進しますが、外部からの新しい情報やリソースが入りにくくなることもあります。)
- 今後の展望:
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この研究では、経済的および社会的要因の範囲を広げたり、時系列分析や産業別分析、国際比較などを行うことで、より深い理解が得られると考えています。また、地域の持続可能性を考慮した研究も必要です。特に、地域格差を是正し地域を活性化するための具体的な政策提言が求められます。さらに、
を刺激し強化する新しいアプローチを模索することも重要です。起業家精神 ( 新しいことに挑戦する意欲や能力のこと。新しいアイデアを実行に移し、会社を設立する際に必要な態度やスキルを指します。)
- 何のために?:
-
日本では、新しく会社を始める人が少ないです。外国の国と
比 べても低 いです。この研究は、どうしてこんなことが起きるのかを調べました。お金の問題や人とのつながり、新しいことに挑戦 する気持ちの関係 を分析 しました。特 に新しいことに挑戦 する気持ちが会社を作るときにどう影響 するかを調べました。
- 何が分かったの?:
-
たくさんの人が住んでいる場所では、新しい会社がたくさんできます。
違 うグループの人同士 がつながると、新しい会社ができやすいです。でも、同じグループの人同士 が強くつながると、かえって新しい会社ができにくくなります。仕事がない人が多いと新しい会社が増 えますが、挑戦 する気持ちは下がります。お金持ちの地域 では新しい会社を作る必要 が少ないので、会社があまり増 えません。
- どうやったの?:
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この研究では、日本の
都道府県 ごとのデータを使いました。 という構造 方程 式モデリング(SEM)( 複数 のデータの関係 を調べる方法 。どの要因 がどのように影響 し合うかを分析 するツール。) 方法 で分析 しました。新しい会社の数や人口密度 、失業率 などのデータを使って、これらの関係 を調べました。
- 研究のまとめ:
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この研究でわかったことは、人が多い
地域 や違 うグループの人同士 がつながることで、新しいことに挑戦 する気持ちが高まることです。でも、お金や仕事のない人が多いと挑戦 する気持ちが下がります。地域 ごとに合った政策 が必要 です。例 えば、働 いている人には副業 をしやすくしたり、仕事がない人には応援 をしたりすることが必要 です。高齢者 や女性 がビジネスをしやすくすることも大切です。
- これからどうする?:
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この研究では、もっと広い
範囲 や長い時間のデータを使って調べることが必要 です。また、産業 別 や国と比 べることで、さらに深く理解 できると思います。地域 の差 をなくして、地域 を元気にするための政策 が求 められます。新しいことに挑戦 する気持ちを強くする方法 を見つけることも大切です。
- 著者名:
- 木南 章, 木南 莉莉, 古澤 慎一
- 掲載誌名:
- 新潟大学農学部研究報告
- 巻:
- 71
- ページ:
- 9 - 16
- 発行日:
- 2019-02
- 著者による要約:
- 本研究は、日本の47都道府県のデータを用いた構造方程式モデリングにより、起業家精神と起業環境が新たな新規開業に与える影響を分析した。分析結果から以下の点が明らかになった。起業家精神は人口密度とブリッジング・ソーシャルキャピタルによって促進されるが、所得、失業率、およびボンディング・ソーシャルキャピタルによって抑制される。新規開業の促進に関しては、人口密度が大きなプラスの効果を持つが、失業率は地域的要因と個人的要因の相互作用によって複雑な影響を与える。ブリッジング・ソーシャルキャピタルはプラスの効果を持つが、ボンディング・ソーシャルキャピタルはマイナスの効果を持つ。さらに、性別や年齢は経済的および社会的要因として起業家精神に影響を与えるが、新規開業に対する間接効果は限られている。起業家精神は就業状態と関係しているため、新規開業の促進策は、就業状態の種類に応じて設計されるべきである。そして、女性や高齢者が事業活動に参加するための社会的条件を整備することが求められる。
This study clarified the effects of entrepreneurship and entrepreneurial environment on the new firm formation rate by structural equation modeling using the data of 47 prefectures in Japan. The results of analysis suggest following findings. Entrepreneurship is activated by population density and bridging social capital but deactivated by income, unemployment rate, and bonding social capital. As for promoting new firm formation, population density has a large influence on new firm formation, but unemployment rate does not simply affect new firm formation due to the cross-interaction among regional and individual factors. Bonding social capital has negative effects on new firm formation, although bridging social capital has positive effects. Furthermore, gender and age affect entrepreneurship as economic and social factors but their indirect effects on new firm formation are limited. Measures promoting new firm formation should be designed according to the types of working status, because entrepreneurship is related with working status. Finally, it is requested to facilitate the social condition for encouraging the female and aged people to participate in business activities.
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/50911
