論文詳細
自然科学系
農学部
#紀要論文
クリエイティブ・クラスにおける文化的多様性とジェンダー格差 : 日本の主要都市を対象とした分析
- AI解説:
- 本論文は、創造性と多様性が相まってイノベーションを支え、ひいては地域経済の発展を下支えする仕組みを扱う。Richard Floridaの「creative class(CC)」概念を踏まえつつ、実証研究の多くが北米と欧州に集中しており、アジア文脈での証拠は相対的に限られている点を指摘する。著者らは、国際比較に基づき、日本がcreative indexで総合24位(MPI, 2015)である一方、Technologyは2位と強いが、Talentは58位、Toleranceは39位と相対的に低いことを研究動機として示す。さらに、文化的多様性から得られる革新的な利得は条件付きであり、異文化間のコミュニケーション・コストが管理可能で、異質な価値観が共存できる(すなわちtoleranceが高い)地域でこそ実現しやすいと論じる。並行して、著者らは日本におけるgender inequalityを多様性に関わる主要課題として位置づけ、ジェンダーや移民の格差を軽視した場合、creative-city戦略が社会的不公正を悪化させうることへの懸念を提起する。以上を背景に、本研究は、日本の主要都市におけるCC集積の決定要因を特定し、さらにSEM(structural equation modeling)を用いて、CCおよびCC内のgender gapが持続可能な地域発展の指標とどのように関連するかを推定することを目的とする。
AI解説を見る
自然科学系
農学部
#紀要論文
クリエイティブ・クラスにおける文化的多様性とジェンダー格差 : 日本の主要都市を対象とした分析
AI解説
- 背景と目的:
-
本論文は、創造性と多様性が相まってイノベーションを支え、ひいては地域経済の発展を下支えする仕組みを扱う。Richard Floridaの「creative class(CC)」概念を踏まえつつ、実証研究の多くが北米と欧州に集中しており、アジア文脈での証拠は相対的に限られている点を指摘する。著者らは、国際比較に基づき、日本がcreative indexで総合24位(MPI, 2015)である一方、Technologyは2位と強いが、Talentは58位、Toleranceは39位と相対的に低いことを研究動機として示す。さらに、文化的多様性から得られる革新的な利得は条件付きであり、異文化間のコミュニケーション・コストが管理可能で、異質な価値観が共存できる(すなわちtoleranceが高い)地域でこそ実現しやすいと論じる。並行して、著者らは日本におけるgender inequalityを多様性に関わる主要課題として位置づけ、ジェンダーや移民の格差を軽視した場合、creative-city戦略が社会的不公正を悪化させうることへの懸念を提起する。以上を背景に、本研究は、日本の主要都市におけるCC集積の決定要因を特定し、さらにSEM(structural equation modeling)を用いて、CCおよびCC内のgender gapが持続可能な地域発展の指標とどのように関連するかを推定することを目的とする。
- 主要な発見:
-
SEMの結果から、雇用に関連する条件と(特定の操作化による)toleranceが、日本の主要109都市におけるcreative classの空間分布と関連していることが示された。具体的には、unemployment、suicide(Tolerance (3)として使用)、urbanization(urbanizationの統制として人口密度)がCC比率に影響を示した一方で、主観的tolerance(Tolerance (1))、foreigner ratio(Tolerance (2))、amenity(都市公園数)は、報告されたモデルでは効果を示さなかった。著者らは、unemploymentとurbanizationの正の相関、toleranceとunemploymentの正の相関、toleranceとurbanizationの正の相関という相関パターンを、日本ではamenity供給が比較的弱いことと並行して、「雇用主導(employment-driven)」型のurbanizationが進んでいる状況と整合的だと解釈する。アウトカムに関しては、CC比率が高いほど、人口増加率、一人当たり所得の成長率、特許の成長率が高く、CC集積が経済パフォーマンス、人口増加、イノベーションの代理指標に寄与するという主張を支持した。CC内のgender inequality(男性—女性比で測定)については、unemploymentとsuicideが負の影響、urbanizationが正の影響を示し、amenityは影響を示さなかった。最後に、CCにおけるgender gapは発展指標によって異なる関係を示し、一人当たり所得の成長と特許成長とは負に関連する一方、人口増加とは正に関連した。したがって、アウトカム間で方向が混在していたことから、日本におけるgender gap効果に関する仮説は「限定的(limitedly)」にしか支持されなかった。
- 方法論:
-
著者らは、都市の特性からCC集積とgender gapへ、さらに地域発展のアウトカムへとつなぐ三層の概念枠組みを検証するため、SEMによる共分散構造分析を実施する。分析単位は日本の主要109都市(中核市、当時の特例市、県庁所在地、および東京都特別区)である。第2層の主要な内生変数は、(i) creative class share(専門職・技術職・芸術職の就業者が総就業者に占める比率)と、(ii) creative classのgender gap(CC内の男性—女性比として操作化)である。第1層の予測変数はamenity、employment、toleranceを表し、amenityは都市公園数、employment条件は失業率(unemployment rate)、toleranceは3指標—(1) 主観的tolerance指数(付録に記述された調査項目から構成)、(2) foreigner ratio、(3) suicide ratio(自殺が少ないほどtoleranceが高いと解釈)—で表現される。人口密度はurbanizationの統制変数として含められる。時間順序は、第1層変数に2000年、第2層変数に2005年、アウトカムの成長率に主として2005–2010年(ただし特許成長は2014–2016年)を用いることで付与される。第3層のアウトカムには、持続可能性、経済パフォーマンス、イノベーションの代理指標として、それぞれ人口増加率、一人当たり所得の成長率、特許の成長率が含まれる。
- 結論と意義:
-
本論文は、日本の都市発展パターンは、主として雇用主導のurbanizationから、より強いamenity供給に支えられた持続可能な軌道へと転換すべきだと結論づける。モデルでは、amenity(公園で測定)はCC集積を説明しなかった一方で、employmentおよびtolerance関連要因は説明したため、著者らは、creative workerにとっての都市の魅力形成において、amenity供給が相対的に弱かったと推論する。例示として、都市農業(urban agriculture)の多機能性を通じてamenity供給を強化できる可能性を挙げ、これが住民の効用を高め、都市の持続可能性を高めうると述べる。第二の中心的結論は、creative class内のgender inequalityが、日本の持続可能な発展に対する障害となっているという点である。gender gapが一人当たり所得の成長と特許成長の双方に負に関連していたことは、gender gapが人口増加と正の関係を示したにもかかわらず、長期的で包摂的な地域発展にとってとりわけ問題だと解釈される。これらを踏まえ、著者らは、文化的多様性の受容を含むtoleranceを高めることを目指した「social innovation」の必要性を強調し、それがより持続可能で包摂的な地域の軌道につながる経路になりうるとする。さらに、そのようなsocial innovationは、日本の自殺問題への対応にも寄与しうるとして、実証モデルでsuicide ratioをtolerance関連指標の一つとして用いた枠組みを、より広い社会的ウェルビーイングの懸念と整合させている。
- 今後の展望:
-
本論文が示す将来志向の含意は、詳細な研究計画の提示というより、政策方向に重点がある。著者らは、雇用の集積に主として依存するアプローチを越えて、amenity向上を持続可能性の目標とより明確に統合する都市政策を求める。amenity戦略の具体例として、都市農業(urban agriculture)の多機能的役割を拡大し、amenity供給を増やして持続可能な都市発展を支えることを挙げる。また、toleranceと文化的多様性の受容を強化するsocial innovationの推進が、長期的で持続可能かつ包摂的な地域発展に必要だと強調する。この見方では、creative class内のgender gapの縮小は衡平性の目標にとどまらず、分析で観察された経済・イノベーションのアウトカム(所得と特許)にも関連する。さらに著者らは、toleranceの改善が、日本における自殺関連の問題の緩和に寄与する可能性を含む、より広い社会的便益をもたらしうると述べており、実証モデルでsuicide ratioをtolerance関連指標として用いたこととも整合的である。
- 背景と目的:
-
この論文は、創造性の高い人たちと、いろいろな背景をもつ人たちが一緒にいることが、イノベーションを生み、地域の経済発展につながる仕組みを調べた研究です。
これまでの研究は北米やヨーロッパが中心で、アジア、とくに日本の都市についての証拠が少ないことが問題意識としてあります。
日本は国際比較では、技術の分野は強い一方で、人材や多様性を受け入れる度合いが相対的に低いとされています。著者らは、多様性がイノベーションにつながるためには、異なる文化どうしのやりとりの負担が大きすぎないことや、違う価値観が共存できる社会であることが大切だと述べます。
また日本では、男女の格差が多様性に関わる大きな課題で、見落とすと都市政策が不公平を悪化させる恐れがあるとも指摘します。
そこで本研究は、日本の主要都市でクリエイティブクラスが集まりやすい条件を明らかにし、さらにクリエイティブクラスの男女差が、持続可能な地域の発展とどう関係するかを分析することを目的とします。
- 主要な発見:
-
分析の結果、クリエイティブクラスが都市に多いかどうかは、主に雇用に関する条件や、研究で設定した寛容さに関わる指標と関係していました。具体的には、失業率、自殺(寛容さの指標として扱う)、都市化の程度(人口密度)がクリエイティブクラスの割合と関係していました。
一方で、アンケートによる主観的な寛容さ、外国人の割合、公園の数は、このモデルでははっきりした効果が見られませんでした。
また、クリエイティブクラスの割合が高い都市ほど、人口増加、一人当たり所得の成長、特許の成長が大きい傾向があり、クリエイティブクラスの集まりが経済やイノベーションに関係することが支持されました。
クリエイティブクラス内の男女差については、失業率と自殺が男女差を小さくする方向、都市化が男女差を大きくする方向に関係していました。さらに、男女差は指標によって関係が異なり、一人当たり所得の成長と特許の成長とはマイナスの関係、人口増加とはプラスの関係でした。つまり、仮説どおりとは言い切れず、部分的にしか当てはまらない結果でした。
- 方法論:
-
日本の主要109都市を対象に、都市の特徴がクリエイティブクラスの集まりや男女差に影響し、それが地域の発展の結果につながる、という3段階の関係をまとめて検証しました。
クリエイティブクラスは、専門職・技術職・芸術職の働く人が、全就業者の中でどれくらいの割合かで表しました。男女差は、クリエイティブクラス内の男性と女性の比で表しました。
都市の特徴としては、公園の数をアメニティ、失業率を雇用条件、寛容さは3つの指標(主観的指標、外国人割合、自殺の割合)で表し、都市化の程度として人口密度も入れました。時期は、都市の特徴が2000年、クリエイティブクラス関連が2005年、成果は主に2005〜2010年(特許のみ2014〜2016年)の伸びを使いました。
- 結論と意義:
-
この研究は、日本の都市は「仕事があるから人が集まる」形の都市化が中心になっており、公園などのアメニティが都市の魅力として十分に機能していない可能性があると結論づけます。今後は、雇用だけに頼るのではなく、アメニティを充実させて、より持続可能な都市の発展へ移る必要があると述べます。例として、都市農業を活用して、生活の快適さや環境の良さを高められる可能性を挙げています。
もう一つの重要な点は、クリエイティブクラスの男女格差が、長期的で公平な地域発展の妨げになりうるということです。男女差が所得や特許の成長とマイナスの関係だったことは、人口増加とはプラスでも、経済やイノベーション面では問題になりやすいと解釈されます。
そのため、多様性を受け入れやすい社会をつくる取り組みが必要で、それは自殺の問題の改善にもつながる可能性があると述べています。
- 今後の展望:
-
著者らは、都市政策として、雇用の集まりだけに依存する方向から、アメニティ向上をはっきりと組み込んだ持続可能な政策へ進むべきだと主張します。具体例として、都市農業の役割を広げてアメニティを増やすことを挙げます。
また、多様性の受け入れを進める取り組みを通じて寛容さを高め、長期的に持続可能で、誰も取り残されにくい地域発展を目指すべきだと述べます。その中で、クリエイティブクラスの男女差を小さくすることは、公平のためだけでなく、所得や特許といった成果にも関係しうる点が重要だとしています。
- 何のために?:
-
この研究は、人が集まる町を調べました。
とくに、考えるのが得意 な人たちです。
ちがう国や考えの人がいることも見ます。
それが、新しいアイデアにつながるか調べます。
今までの研究は、外国の町が多いです。
日本の町の は、まだ少ないです。データ ( 調べて集めた数字や記録 のことです。町どうしを比 べたり、関係 があるか確 かめたりするために必要 です)
日本は、技術 は強いと言われます。
でも、いろいろな人を受け入れる力は弱めです。
ちがう文化の人と話すのは、大変 なこともあります。
だから、いっしょにくらめる工夫 が大事です。
日本では、男の人と女の人の差 も問題です。
それを見ないと、不公平 がふえる心配があります。
そこで、日本の大きな町を調べました。
考えるのが得意 な人が集まる条件 を見ます。
男の人と女の人のちがいも調べます。
それが町の成長 と関係 するか知りたいです。
- 何が分かったの?:
-
仕事の
状況 が、関係 していました。
たとえば、しごとがない人の多さです。
町の人の多さも、関係 していました。
人がぎゅうぎゅうな町ほど、関係 がありました。
自殺 が多いかどうかも、関係 がありました。
研究では、それを町のやさしさの目安にしました。
の「やさしさ」は、はっきりしません。アンケート ( たくさんの人に同じ質問 をして、考えや感じ方を集める調べ方です。町のやさしさなど目に見えないことを数にして比 べるときに使います)
外国の人の多さも、はっきりしません。
公園の数も、この調べ方では分かりません。
考えるのが得意 な人が多い町は、元気でした。
人がふえることが多い町でした。
一人あたりのお金がふえる町でした。
という、新しい発明もふえました。特許 ( 新しい発明やアイデアを国に登録 して、その人や会社だけが一定の期間つくったり売ったりできるようにするしくみです。研究では町で新しい発明がどれくらい生まれているかを見る目安として大事です)
だから、町の元気さと関係 がありそうです。
男の人と女の人の差 も、調べました。
しごとがない人が多い町は、差 が小さめでした。
自殺 が多い町も、差 が小さめでした。
でも、人がぎゅうぎゅうな町は、差 が大きめです。
差 と町の成長 の関係 は、むずかしい結果 でした。
お金や特許 とは、悪い関係 がありました。
でも、人口がふえることとは良 い関係 でした。
つまり、いつも同じとは言えませんでした。
- どうやったの?:
-
日本の109の大きな町を調べました。
まず、町の特徴 を集めました。
次に、考えるのが得意 な人の多さを見ました。
そして、町の成長 の結果 と比 べました。
考えるのが得意 な人とは、仕事の種類 で決めます。
専門 の仕事、技術 の仕事、芸術 の仕事です。
その人たちが、働 く人の中で何%かを見ます。
男の人と女の人の も、出しました。比 ( 2つの数をくらべて、どちらがどれくらい多いか少ないかを見る表し方です。男の人と女の人のちがいを数で表すために使います)
町の特徴 には、公園の数も入れました。
これは、くらしやすさの目安です。
しごとがない人の も入れました。割合 ( 全体のうち、どれくらいの部分をしめるかを表す考え方です。しごとがない人や外国の人がどれくらいいるかを公平に比 べるために使います)
町のやさしさは、3つで見ました。
の気持ち、外国の人のアンケート ( たくさんの人に同じ質問 をして、考えや感じ方を集める調べ方です。町のやさしさなど目に見えないことを数にして比 べるときに使います) 割合 です。
それと、自殺 の割合 も入れました。
人口の密度 も、町の大きさの目安にしました。
の年も、少しずらして使いました。データ ( 調べて集めた数字や記録 のことです。町どうしを比 べたり、関係 があるか確 かめたりするために必要 です)
町の特徴 は2000年を使いました。
人の集まりは2005年を使いました。
町の伸 びは2005〜2010年を使いました。
だけは、2014〜2016年を使いました。特許 ( 新しい発明やアイデアを国に登録 して、その人や会社だけが一定の期間つくったり売ったりできるようにするしくみです。研究では町で新しい発明がどれくらい生まれているかを見る目安として大事です)
- 研究のまとめ:
-
日本の町は、仕事があると人が集まりやすいです。
公園などの良 さは、十分でないかもしれません。
だから、仕事だけに頼 らない工夫 が必要 です。
くらしやすさを、もっと上げることが大事です。
そうすれば、長く元気な町になりやすいです。
例 として、町の中で野さいを育てる案 があります。
それで、気もちよさや環境 が良 くなるかもしれません。
もう一つ大事なのは、男と女の差 の問題です。
その差 は、町の公平さをこわすかもしれません。
お金や発明がのびにくくなる心配もあります。
だから、いろいろな人が安心できる社会が大切です。
それは、自殺 をへらす助けになるかもしれません。
- これからどうする?:
-
町の計画は、仕事だけに
頼 らない方がよいです。
くらしやすさを上げる計画を入れるべきです。
たとえば、町の中の農業を広げる案 です。
それで、楽しさや安心がふえるかもしれません。
また、ちがいを大事にする取り組みも必要 です。
町のやさしさを高めることにつながります。
だれも取りのこさない町を目指します。
そのために、男と女の差 を小さくすることも大事です。
公平のためだけでなく、町の元気さにも関係 します。
- 著者名:
- Furuzawa Shinichi, Kiminami Lily, Kiminami Akira
- 掲載誌名:
- 新潟大学農学部研究報告
- 巻:
- 71
- ページ:
- 17 - 28
- 発行日:
- 2019-02
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/50912
