情報通信サービスにおけるユーザ体感品質の分析に関する研究

情報通信サービスの多様化に伴い、ユーザは様々な状況下で通信サービスを利用することが可能になった。しかし、従来の通信サービス品質の評価指標であるQoS（Quality of Service）では、ネットワーク性能に焦点が当てられることが多く、実際にユーザが体感する品質を十分に反映しきれていないという課題がある。そこで、本研究ではITU-Tが定義したQoE（Quality of Experience）に注目し、QoEに基づくユーザの多様な評価要因とその影響を明らかにすることを目的とした。具体的には、心理的要因と環境的要因がQoEにどのように影響を与えるかを検証し、ユーザの多様性とQoE評価の状況依存性をモデル化することで、情報通信事業者がユーザの状況に応じた適切な品質を提供するための知見を蓄積することを目指した。

本研究では、QoEに影響を与える要因として心理的要因（関与、選好）と環境的要因（タイムプレッシャ、ながら行動）に注目し、それぞれの要因がQoEに与える影響を実証的に検証した。その結果、ユーザはこれらの要因によってセグメントに分かれ、各セグメントごとに異なるQoE評価を示すことが明らかになった。例えば、インターネットに対する関与の高低がISPの選択行動に影響を与えることや、コンテンツに対する選好がQoE評価に有意に影響を与えることが示された。また、QoE評価の状況依存性を初めてモデル化し、同じQoSレベルでもユーザの置かれた状況によってQoE評価が大きく異なることを検証した。

本研究では、消費者行動論、マーケティング・サイエンス、行動経済学の学際的アプローチを採用し、主にアンケート調査や主観評価実験を通じてデータを収集した。QoE評価のモデル化には共分散構造分析（パス解析）や潜在曲線モデルを使用し、得られたデータをもとにユーザの心理的要因や環境的要因がQoEに与える影響を定量的に分析した。また、具体的な評価実験として、YouTubeを用いた動画視聴実験や、スマートフォンを利用した歩きスマホ防止アプリケーションの評価実験を行い、各種セグメントごとに異なるQoEモデルを構築した。

本研究により、ユーザのQoE評価には心理的要因や環境的要因が大きく影響を与えることが明らかになった。これにより、情報通信事業者はユーザの多様な状況に応じた適切な品質を提供するための基礎となるべき知見を得ることができた。特に、ユーザをセグメントに分けることで、それぞれのセグメントに対して適切なサービスを提供する可能性が示された。また、QoEに基づく制御を実現するためには、ユーザの利用状況を深く理解し、コントロール可能な要因に基づいてQoEを最適化することが重要であることが示唆された。

今後の研究では、本研究で得られた知見をさらに汎用化し、様々な心理的・環境的要因を考慮したQoE制御の実現を目指す。また、ユーザの利用状況を一層理解するための研究を進め、より使いやすい情報通信サービスを開発することが求められる。具体的には、QoE評価の実用化を通じて、ユーザにとって適切な品質の提供を実現し、情報通信ネットワーク分野のさらなる発展に寄与することを目指す。また、QoEに影響を与える新たな要因の特定や、QoE評価手法の高度化を進めることで、情報通信事業者がユーザのニーズに応じた柔軟なサービス提供を行えるようになることが期待される。

情報通信サービスが多様化して、いろいろな場面で使えるようになりました。でも、今までの「QoS（Quality of Service）(通信サービスの品質を示す指標で、主にネットワーク性能に注目しています。)」という評価基準では、実際にユーザが感じるサービスの品質を十分に反映できていないという問題がありました。そこで、ITU-Tが定義した「QoE（Quality of Experience）(ユーザが実際に体感するサービスの品質を示す指標で、心理的要因や環境的要因も含めた総合的な評価を行います。)」に注目して、ユーザが感じる多様な要因がQoEにどのように影響するかを明らかにすることがこの研究の目的です。心理的要因や環境的要因がQoEにどう影響するかを調べ、ユーザの多様性と状況に依存する評価モデルを構築することで、情報通信事業者がユーザに合った品質を提供できるようにすることを目指しました。

この研究では、心理的要因（興味や選好）と環境的要因（タイムプレッシャやながら行動）がQoEにどう影響するかを実証的に検証しました。その結果、ユーザはこれらの要因によって異なるグループに分かれ、それぞれ異なるQoE評価を示すことがわかりました。例えば、インターネットに対する興味の高さがISP選びに影響を与えたり、コンテンツへの選好がQoE評価に有意に影響を与えることがわかりました。また、同じQoSレベルでもユーザの置かれた状況によってQoE評価が大きく異なることを初めてモデル化して確認しました。

この研究では、消費者行動論やマーケティング、行動経済学のアプローチを取り入れ、アンケート調査や主観評価実験を通じてデータを集めました。QoE評価のモデル化には共分散構造分析（パス解析）(複数の変数間の因果関係を統計的に分析する手法です。)や潜在曲線モデル(時系列データや繰り返し測定データの解析に用いるモデルで、直線の傾きや切片を推定して解析します。)を使い、心理的要因や環境的要因がQoEに与える影響を定量的に分析しました。また、具体的な評価実験としてYouTubeを使った動画視聴実験や歩きスマホ防止アプリの評価実験を行い、異なるグループごとにQoEモデルを構築しました。

この研究によって、QoE評価には心理的要因や環境的要因が大きな影響を与えることが明らかになりました。これにより、情報通信事業者はユーザの多様な状況に応じた適切な品質を提供するための基礎的な知見を得ることができました。ユーザをグループに分けることで、それぞれに合ったサービスを提供する可能性が示されました。また、QoEに基づく制御を実現するには、ユーザの利用状況を深く理解し、コントロール可能な要因に基づいてQoEを最適化することが重要だと示唆されました。

今後の研究では、さらに多くの心理的・環境的要因を考慮したQoE制御の実現を目指します。ユーザの利用状況をより深く理解し、より使いやすい情報通信サービスを開発するための研究を進めます。具体的には、QoE評価の実用化を通じて、ユーザにとって適切な品質の提供を実現し、情報通信ネットワークのさらなる発展に貢献することを目指します。また、QoEに影響を与える新たな要因の特定や、QoE評価手法の高度化を進めることで、柔軟なサービス提供が期待されます。