論文詳細
医歯学系
大学院保健学研究科
#学位論文
甲状腺腫瘍の細胞診と遺伝子異常の研究
- AI解説:
- 甲状腺穿刺吸引細胞診は、体に負担が少ない検査方法で、甲状腺の病気の診断に広く使われています。この検査は治療方法を決める上でとても重要です。本研究では、甲状腺穿刺吸引細胞診の診断の正確さを高めるために、特に
や濾胞性腫瘍 ( 甲状腺の細胞が集まってできる腫瘍の一種です。良性と悪性があります。) に注目し、乳頭癌 ( 甲状腺にできる癌の一種で、乳頭状の構造を持つことが特徴です。) や液状化検体細胞診(LBC) ( 検体を液体に溶かして細胞を取り出し、診断する方法です。これにより、検体の質が向上します。) の効果を調べました。遺伝子検査 ( 遺伝子の異常を調べることで、病気の診断や治療方法を決定する手がかりにします。)
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医歯学系
大学院保健学研究科
#学位論文
甲状腺腫瘍の細胞診と遺伝子異常の研究
AI解説
- 背景と目的:
-
甲状腺穿刺吸引細胞診は、患者に対する侵襲性が少ないため、結節性病変や一部のびまん性甲状腺腫の診断に広く用いられています。この診断技術は治療方針の決定に大きな影響を与えるため、良悪性の判定および組織型の推定が重要です。本研究は、甲状腺穿刺吸引細胞診における判定の適正化と精度向上を目指し、特に濾胞性腫瘍や乳頭癌に焦点を当て、液状化検体細胞診(LBC)や遺伝子検査の有用性について検討しました。
- 主要な発見:
-
1. 濾胞性腫瘍に関して、細胞学的所見の見直しと新たな判定基準の導入により、鑑別困難例の数が減少し、診断精度が向上しました。
2. 乳頭癌の特殊型や嚢胞内変化による過小評価を防ぐため、細胞診判定の強化が必要であることが明らかになりました。
3. 液状化検体細胞診(LBC)を導入することで、不適正検体の比率が減少し、細胞診判定の精度が向上しました。また、LBC法と直接塗抹法の併用が診断に効果的であるとわかりました。
4. 遺伝子検査により、特定の遺伝子異常(BRAF変異、RAS変異、RET再構成、PAX8/PPARγ再構成)が甲状腺腫瘍の診断に有用であることが確認され、診断精度の向上に寄与することが示されました。
- 方法論:
-
本研究では、以下の方法を用いて検討を行いました。
1. 濾胞性腫瘍の判定基準の見直しを行い、再判定を実施。
2. 乳頭癌症例について、細胞診標本の再鏡検および組織診断との比較を行い、過小評価の原因を検討。
3. 液状化検体細胞診(LBC)の導入により、直接塗抹法とLBC法の比較検討を実施。
4. 甲状腺腫瘍における遺伝子検査を行い、各遺伝子異常(BRAF変異、RAS変異、RET再構成、PAX8/PPARγ再構成)の頻度と診断への影響を解析。
- 結論と意義:
-
甲状腺穿刺吸引細胞診の判定結果は治療開始に大きな影響を与えるため、適正な判定や精度向上が重要です。本研究では、濾胞性腫瘍の判定基準の見直しや乳頭癌の過小評価原因の追究、LBC法の導入、遺伝子検査の追加により、診断の適正化と精度向上が実現できました。これにより、診断確定に至らない患者の負担を軽減し、治療方針の決定がより確実になります。また、新たなツールの導入が、甲状腺穿刺吸引細胞診の診断精度をさらに高めることが確認されました。
- 今後の展望:
-
本研究の成果を基に、甲状腺穿刺吸引細胞診の診断精度をさらに向上させるための取り組みが進められることが期待されます。具体的には、LBC法と遺伝子検査のさらなる活用や、新たな診断基準の開発、検体採取法や標本作製法の最適化が考えられます。また、乳頭癌の特殊型や嚢胞内変化に対応するための細胞診技術の進化も求められます。これにより、より多くの患者が迅速かつ正確な診断を受けられるようになり、適切な治療を早期に開始できることが期待されます。
- 背景と目的:
-
甲状腺穿刺吸引細胞診は、体に負担が少ない検査方法で、甲状腺の病気の診断に広く使われています。この検査は治療方法を決める上でとても重要です。本研究では、甲状腺穿刺吸引細胞診の診断の正確さを高めるために、特に
や濾胞性腫瘍 ( 甲状腺の細胞が集まってできる腫瘍の一種です。良性と悪性があります。) に注目し、乳頭癌 ( 甲状腺にできる癌の一種で、乳頭状の構造を持つことが特徴です。) や液状化検体細胞診(LBC) ( 検体を液体に溶かして細胞を取り出し、診断する方法です。これにより、検体の質が向上します。) の効果を調べました。遺伝子検査 ( 遺伝子の異常を調べることで、病気の診断や治療方法を決定する手がかりにします。)
- 主要な発見:
-
1.
について、新しい診断基準を取り入れることで、診断が難しいケースが減り、診断の正確さが上がりました。濾胞性腫瘍 ( 甲状腺の細胞が集まってできる腫瘍の一種です。良性と悪性があります。)
2. の特殊なタイプや嚢胞内の変化による誤診を防ぐために、診断の強化が必要であることがわかりました。乳頭癌 ( 甲状腺にできる癌の一種で、乳頭状の構造を持つことが特徴です。)
3. を使うことで、不適切な検体の割合が減り、診断の正確さが向上しました。また、LBC法と直接塗抹法の併用が診断に効果的であることがわかりました。液状化検体細胞診(LBC) ( 検体を液体に溶かして細胞を取り出し、診断する方法です。これにより、検体の質が向上します。)
4. により、特定の遺伝子異常(遺伝子検査 ( 遺伝子の異常を調べることで、病気の診断や治療方法を決定する手がかりにします。) )が甲状腺腫瘍の診断に役立つことが確認され、診断の正確さが増しました。BRAF変異、RAS変異、RET再構成、PAX8/PPARγ再構成 ( これらは甲状腺腫瘍に関連する特定の遺伝子の異常です。これらの異常があると、病気のタイプや進行度を予測するのに役立ちます。)
- 方法論:
-
本研究では以下の方法を用いました。
1. の新しい診断基準を使って再評価を実施。濾胞性腫瘍 ( 甲状腺の細胞が集まってできる腫瘍の一種です。良性と悪性があります。)
2. の細胞診標本を再検査し、組織診断と比較して誤診の原因を調査。乳頭癌 ( 甲状腺にできる癌の一種で、乳頭状の構造を持つことが特徴です。)
3. を導入し、直接塗抹法と比較検討。液状化検体細胞診(LBC) ( 検体を液体に溶かして細胞を取り出し、診断する方法です。これにより、検体の質が向上します。)
4. 甲状腺腫瘍の を行い、各遺伝子異常の頻度と診断への影響を解析。遺伝子検査 ( 遺伝子の異常を調べることで、病気の診断や治療方法を決定する手がかりにします。)
- 結論と意義:
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甲状腺穿刺吸引細胞診の結果は治療開始に大きな影響を与えるため、正確な診断が重要です。本研究では、新しい診断基準の導入やLBC法、
の効果により、診断の正確さが向上しました。これにより、患者の負担が軽減され、治療方針の決定がより確実になります。また、新しいツールの導入が、甲状腺穿刺吸引細胞診の診断精度をさらに高めることを確認しました。遺伝子検査 ( 遺伝子の異常を調べることで、病気の診断や治療方法を決定する手がかりにします。)
- 今後の展望:
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本研究の成果を基に、さらに診断精度を向上させるための取り組みが期待されます。具体的には、LBC法と
の活用、新しい診断基準の開発、検体採取法や標本作製法の最適化が考えられます。また、遺伝子検査 ( 遺伝子の異常を調べることで、病気の診断や治療方法を決定する手がかりにします。) の特殊なタイプに対応するための技術の進化も求められます。これにより、より多くの患者が正確な診断を受け、適切な治療を早期に開始できることが期待されます。乳頭癌 ( 甲状腺にできる癌の一種で、乳頭状の構造を持つことが特徴です。)
- 何のために?:
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(こうじょうせん)の甲状腺 ( 首の前にある、小さな臓器 (ぞうき)です。体の成長 や元気を助けます。) には、体にやさしい検査 ( 病気を見つけるための手順 や方法 です。) 方法 があります。これを使うと、甲状腺 の病気がわかります。この研究では、もっと正確 に病気を見つけるために、新しい方法 を調べました。
- 何が分かったの?:
-
1. 新しいやり方を使うと、わかりにくい病気も見つけやすくなりました。
2.特別 なタイプの病気を見つけるには、もっと詳 しく調べることが大事です。
3. 新しい を使うと、検査 ( 病気を見つけるための手順 や方法 です。) 間違 った結果 が減 り、正しくわかるようになりました。
4.遺伝子 (いでんし)を調べると、病気の に役立ちました。診断 ( 病気が何かを判断 すること)
- どうやったの?:
-
この研究で使った
方法 は次の通りです。
1. 新しい (しんだんきじゅん)を使って、診断 基準 ( 病気を見つけるためのルールや方法 です。) 再 び しました。検査 ( 病気を見つけるための手順 や方法 です。)
2. (にゅうとうがん)のサンプルを乳頭 癌 ( 甲状腺 にできるガンの一種 です。) 再検査 して、間違 いの原因 を調べました。
3. 新しい検査 方法 を導入 し、他の方法 と比 べました。
4. を行い、どれくらい役立つか調べました。遺伝子 検査 ( 体の中の設計図 を調べて、病気を見つけます。)
- 研究のまとめ:
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正確 な は診断 ( 病気が何かを判断 すること) 治療 に大事です。この研究で、新しい方法 を使うと診断 がよくなりました。これにより、治療 方法 が決めやすくなりました。新しいツールも役立ちました。
- これからどうする?:
-
この
成果 を基 にして、さらに をよくする取り組みが期待されます。新しい診断 ( 病気が何かを判断 すること) 検査 ( 病気を見つけるための手順 や方法 です。) 方法 や技術 の進歩が求 められます。これにより、もっと多くの人が早く正しく治療 できるようになります。
- 著者名:
- 林 真也
- ページ:
- 1 - 37
- 著者による要約:
- 【背景】甲状腺穿刺吸引細胞診は患者への侵襲性が少ないことから、結節性病変や一部のびまん性甲状腺腫の診断確定のために用いられる。穿刺吸引細胞診の判定結果によって治療方針が決定されることが多く、良悪性の判定および組織型の推定が重要となる。【目的】甲状腺穿刺吸引細胞診において適正な判定や精度の向上を目的に以下の検討を行った。1.濾胞性腫瘍の細胞学的所見 Ⅰ.濾胞性腫瘍の判定基準の見直し Ⅱ.鑑別困難例の再判定 Ⅲ.濾胞性腫瘍判定基準変更後の推移 Ⅳ.甲状腺癌取扱い規約(第7版)新報告様式への適応 2.甲状腺穿刺吸引細胞診における乳頭癌症例の問題点 3.甲状腺穿刺吸引細胞診における液状化検体細胞診の有用性 4.甲状腺腫瘍における遺伝子検査の有用性【結果・考察】1.濾胞性腫瘍の細胞学的所見 濾胞腺腫・濾胞癌の判定に重要な細胞所見があった。また、濾胞腺腫・濾胞癌は否定的で正常あるいは良性との判定が可能な細胞所見があり、鑑別困難例の相当数が正常あるいは良性に判定できた。濾胞性腫瘍の判定基準の見直しを行い、再判定を行った検体では鑑別困難の比率が9.3%となり、濾胞性腫瘍の判定基準変更後は鑑別困難の比率が11.1%と推移していた。鑑別困難の比率を数値目標である20%以下とすることが可能であった。濾胞性腫瘍の判定基準の見直しは甲状腺癌取扱い規約(第7版)の新報告様式にも対応することが可能であり、再判定を行った検体では意義不明5.9%、濾胞性腫瘍3.4%、判定基準変更後は意義不明5.9%、濾胞性腫瘍5.2%となり、意義不明、濾胞性腫瘍ともに数値目標である10%以下であった。2.甲状腺穿刺吸引細胞診における乳頭癌症例の問題点 乳頭癌の嚢胞内での変化や乳頭癌の特殊型(濾胞構造主体の乳頭癌、びまん性硬化型乳頭癌、好酸性細胞型乳頭癌)の症例において過小評価されていた。通常型とは異なる乳頭癌の細胞所見を把握し、過小評価とならないよう細胞診判定を行うことが重要である。また、検体の中には検体採取~標本作製の過程に問題があった可能性があることから、異型細胞を十分に採取・標本化できるよう検体採取~標本作製についても検討していくことが必要と考える。3.甲状腺穿刺吸引細胞診における液状化検体細胞診の有用性 不適正の比率が直接塗抹法では27.9%であったが、LBC法では6.8%となり、LBC法では不適正の検体が大幅に減少した。また、LBC法では濾胞性腫瘍と判定した検体や悪性と判定した検体が増加した。LBC法は多数の濾胞上皮細胞を得ることができ、観察が容易な標本が作製可能であり、細胞診判定の精度向上に寄与する。LBC法よりも直接塗抹法が細胞診判定に適していた検体が少なからず存在したことから、LBC法は単独で使用するよりも直接塗抹法と併用し細胞診判定を行うことが有用である。4.甲状腺腫瘍における遺伝子検査の有用性 乳頭癌では15例中12例にBRAF変異V600E、1例にRET/PTC1再構成を認め、高頻度に遺伝子異常を有する。濾胞癌では15例中9例にRAS変異(NRAS Q61R:3例、NRAS Q61K:2例、KRAS Q61R:2例、HRAS Q61R:2例)、1例にPAX8/PPARγ再構成を認めた。 遺伝子異常を認めた10例は悪性度の高いグループ(widely invasive、encapsulated angioinvasive)に属していた。濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫では遺伝子異常は検出されなかった。甲状腺腫瘍において、BRAF変異、RAS変異、RET再構成、PAX8/PPARγ再構成は組織型に特異性の高い遺伝子異常である。甲状腺腫瘍においてこれらの遺伝子検査を行うことは形態診断の困難な症例に有用な情報をもたらし、診断精度の向上に寄与する。【結論】甲状腺領域において穿刺吸引細胞診の判定結果は治療開始等に影響を及ぼす。患者の中には長期にわたり確定診断にいたらず、診療上問題が生じるため甲状腺穿刺吸引細胞診が複数回行われることがある。患者に多くの負担をかけることを避けるためにも細胞診の適正な判定や精度の向上が必要である。今回、濾胞性腫瘍の判定基準を変更したこと、甲状腺癌で最も多い乳頭癌を細胞診で悪性と判定できなかった原因を追究したことにより、甲状腺穿刺吸引細胞診の適正な判定や精度の向上に寄与できた。また、LBC法の導入により細胞所見を追加することができ、細胞診の不適正率の低下および判定精度の向上ができる。遺伝子検査の追加は形態学とは異なる側面から有用な情報をもたらすことができる。LBC法の導入や遺伝子検査の追加といった新たなツールを使用することは、甲状腺穿刺吸引細胞診の適正な判定や精度の向上につながる。
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/00051730
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