論文詳細
工学部
自然科学系
#学術雑誌論文
透光性ナノ構造γ-Al2O3の熱処理による光学特性変化
- AI解説:
- 多くのセラミック材料は、粒界や粒界に存在する気孔により光の散乱や吸収が起こり、光透過性が乏しいことが知られています。しかしながら、これらの要因を高密度の焼結によって排除することで、高い光透過性を持つセラミックスを得ることが可能です。アルミナは広いバンドギャップを持ち、近赤外から可視光の範囲での光吸収がほとんど起こらないため、光透過材料として期待されています。本研究では、高温環境下での使用を想定し、熱処理によるナノ構造γ-Al2O3の光透過性の変化を詳細に調査しました。
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工学部
自然科学系
#学術雑誌論文
透光性ナノ構造γ-Al2O3の熱処理による光学特性変化
AI解説
- 背景と目的:
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多くのセラミック材料は、粒界や粒界に存在する気孔により光の散乱や吸収が起こり、光透過性が乏しいことが知られています。しかしながら、これらの要因を高密度の焼結によって排除することで、高い光透過性を持つセラミックスを得ることが可能です。アルミナは広いバンドギャップを持ち、近赤外から可視光の範囲での光吸収がほとんど起こらないため、光透過材料として期待されています。本研究では、高温環境下での使用を想定し、熱処理によるナノ構造γ-Al2O3の光透過性の変化を詳細に調査しました。
- 主要な発見:
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本研究の主要な発見として、ナノ構造γ-Al2O3の光透過性は、粒子の平均粒径と熱処理温度に強く依存することが明らかになりました。特に、粒径が20nmを超えると光透過率は急速に低下し、また、熱処理温度が1173K以上になるとγ-Al2O3からα-Al2O3への相転移とそれに伴う粒成長が起こり、光透過率が著しく減衰することが確認されました。さらに、1123K以下の温度では光透過率が維持されることが示されました。
- 方法論:
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ナノサイズアルミナ粉体の合成にはMOCVD法を用い、高純度のアルミニウム有機化合物を出発原料としました。合成したアルミナ粉体を2.5GPaの圧力で1分間加圧成形し、光学特性評価試料を作製しました。この試料を大気中で1173Kから1323Kの条件で熱処理し、光透過性の変化を分光光度計で評価しました。粒径の観察には透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、結晶構造の同定にはX線回折装置を使用しました。
- 結論と意義:
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合成したナノサイズアルミナ粉体から作製したナノ構造γ-Al2O3は、高温環境下での使用においても、一定の条件下では高い光透過性を維持できることが確認されました。具体的には、初期粒径が15nm以下の粉体から作製した試料は、1123K以下の熱処理温度において高い光透過性を示しました。しかし、1173K以上の温度では相転移が起こり、光透過率が急激に低下することが示唆されました。これにより、ナノ構造セラミックスの実用化に向けた重要な知見が得られました。
- 今後の展望:
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今後の研究では、さらに高温での使用に耐えうるナノ構造セラミックスの開発を目指し、相転移温度を上昇させる方法や、粒成長を抑制するための新たな技術開発が求められます。また、ナノ粒子の初期粒径の最適化や、成形プロセスの改良により、より高い光透過性と機械的強度を併せ持つ材料の研究が進められることが期待されます。加えて、実用的な応用例を提示することで、産業界への波及効果を高めることが必要です。
- 背景と目的:
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多くのセラミック材料は、
(つぶかい)やその間にある隙間が原因で、光を通しにくいことが知られています。しかし、高密度に粒界 ( 結晶粒と結晶粒の境界部分。ここに不純物や欠陥が溜まりやすい。) (しょうけつ)することで、その問題を解決し、光をよく通すセラミックスを作ることができます。アルミナは、近赤外光や可視光の範囲でほとんど光を吸収しないため、光透過性材料として期待されています。本研究では、高温環境で使うことを想定して、熱処理による焼結 ( 高温で粉末を固めて一体化する加工法。セラミックスの製造によく使われる。) γ-Al2O3の光透過性の変化を調べました。ナノ構造 ( 非常に小さなスケール(ナノメートル単位)での材料の構造。)
- 主要な発見:
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本研究では、
γ-Al2O3の光透過性が、粒子の平均粒径と熱処理温度に大きく影響されることがわかりました。特に、粒径が20nmを超えると光透過率が急に低下し、また熱処理温度が1173K以上になるとγ-Al2O3からα-Al2O3への変化と粒の成長が起こり、光透過率が大幅に減少しました。1123K以下の温度では光透過率が維持されることも確認されました。ナノ構造 ( 非常に小さなスケール(ナノメートル単位)での材料の構造。)
- 方法論:
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ナノサイズのアルミナ粉を作るために
を使い、高純度のアルミニウム有機化合物を出発原料としました。作ったアルミナ粉体を2.5GPaの圧力で1分間加圧成形し、光学特性を評価するための試料を作成しました。この試料を大気中で1173Kから1323Kの条件で熱処理し、分光光度計を使って光透過性の変化を評価しました。粒径の観察にはMOCVD法 ( 金属有機化学気相成長法。半導体や薄膜材料の製造に使われる技術。) を使い、結晶構造の確認にはX線回折装置を使用しました。透過型電子顕微鏡(TEM) ( 非常に高倍率で物質の内部構造を観察するための顕微鏡。)
- 結論と意義:
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ナノサイズのアルミナ粉から作製した
γ-Al2O3は、高温環境でも一定の条件下で高い光透過性を維持できることが確認されました。特に、初期粒径が15nm以下の粉体から作製した試料は1123K以下の熱処理温度で高い光透過性を示しました。しかし、1173K以上の温度では相転移が起こり、光透過率が急激に低下することがわかりました。この研究により、ナノ構造セラミックスの実用化に向けた重要な知見が得られました。ナノ構造 ( 非常に小さなスケール(ナノメートル単位)での材料の構造。)
- 今後の展望:
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今後の研究では、さらに高温でも使える
セラミックスを開発するために、相転移温度を上げる方法や粒の成長を抑える新しい技術の開発が必要です。また、ナノ粒子の初期粒径の最適化や成形プロセスの改善により、より高い光透過性と機械的強度を持つ材料の研究が期待されています。そして、実用的な応用例を提案することで、産業界への波及効果を高めることが重要です。ナノ構造 ( 非常に小さなスケール(ナノメートル単位)での材料の構造。)
- 何のために?:
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たくさんのセラミック
材料 は、つぶの間のすきまのせいで光を通しにくいです。でも、しっかり焼 くことで、その問題を解決 できます。 は、光をよく通すアルミナ ( アルミニウムから作られる材料 です。) 材料 として期待されています。この研究では、アルミナの光を通す力がどう変 わるかを調べました。
- 何が分かったの?:
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の光を通す力は、つぶの大きさや温度によってアルミナ ( アルミニウムから作られる材料 です。) 変 わります。つぶが大きくなると、光を通しにくくなりました。特 に、温度が1173Kより高いとき、アルミナのつぶが成長 し、光を通す力が減 りました。1123K以下 の温度では、光を通す力が保 たれました。
- どうやったの?:
-
私 たちは、 の小さなアルミナ ( アルミニウムから作られる材料 です。) 粉 を作るために特別 な方法 を使いました。そして、その粉 を高い圧力 で固 めて、試験 用のサンプルを作りました。そのサンプルを高温で熱 して、光の通しやすさを調べました。つぶの大きさを見るために電子顕微鏡 を使い、結晶 の形を調べるためにX線を使いました。
- 研究のまとめ:
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の小さなアルミナ ( アルミニウムから作られる材料 です。) 粉 から作ったものは、高温でも光をよく通しました。でも、1173K以上 の温度では光を通しにくくなります。この研究で、 セラミックスの実用化に向けたナノ 構造 ( とても小さいつぶが集まった構造 です。) 重要 な知識 が得 られました。
- これからどうする?:
-
今後の研究では、もっと高い温度でも使えるセラミックスを作る
方法 を探 します。また、つぶの大きさを調整したり、作り方を工夫 したりして、もっと光を通し、強い材料 を作ることが期待されています。産業 で使えるようにすることも大切です。
- 著者名:
- 野田 弘之, 金 煕濬
- 掲載誌名:
- 日本セラミックス協会学術論文誌
- 巻:
- 110
- 号:
- 12
- ページ:
- 1062 - 1066
- 発行日:
- 2002-12
- 著者による要約:
- Nano-structured γ-Al2O3 ceramics have been pelletized under a pressure of 2.5 GPa on uniaxial compaction of nano-size particles. Although the obtained γ-Al2O3 ceramics show low density, they have a good transparency. For estimating the influence of particle size on the transparency of nano-structured γ-Al2O3 ceramics, nano-sized particles with four different sizes have been used. Nano-structured γ-Al2O3 ceramics made of particles whose size is < 10 nm show a transmittance above 40%. Transmittance decreases with increasing particle diameter. In the case of particle size >20 nm the transmittance is less than 20%. This phenomenon is explained by Rayleigh scattering, which is applicable to a particle diameter much smaller than the wavelength of the incident light. The change in transmittance of nano-structured alumina ceramics on heat treatment is not observed below 1123 K. However the transmittance remarkably decreases at above 1223 K because of rapid grain growths with phase transition, although this temperature is 250 K lower than the γ->α-phase transition temperature (1473 K) of bulk alumina. When the sample produced from 11.2 nm particles was heat-treated at 1173 K, the transmittance was maintained for 2 h and then decreased with increasing the annealing time. At this time, the transmittance slowly decreased with gram growth without phase transition between 2 h and 6 h, and then it steeply decreased with grain growth after 6 h with phase transition.
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/30430
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