ループス膀胱炎（トピックス　特集　膠原病の難治性合併症 : 診断と治療の進歩 VI.腎・膀胱病変）

背景と目的：

全身性エリテマトーデス（SLE）は自己免疫機序により多様な臓器障害を引き起こす疾患であり、膀胱に病変が生じることもあります。これをループス膀胱炎と呼びます。この病態は過去の報告がありますが、1983年のOrthらの報告以降、症例が集積されています。しかし、臨床家には十分に認識されておらず、難治性の病態に至ることも少なくありません。本稿では、ループス膀胱炎の疾患概念や診療上の留意点について、実験例や報告例をもとに概説します。

主要な発見：

ループス膀胱炎はSLE患者の約1％に発症し、膀胱症状や消化器症状が特徴です。頻尿や排尿痛、膀胱の萎縮、水腎症などが見られます。消化器症状も同時に現れることが多く、下痢や腹痛、嘔吐などが一般的です。診断基準として、膀胱症状、消化管症状、水腎症の3項目のうち2項目以上を呈し、膀胱の病理所見が必須となります。早期診断と早期治療が重要であり、特にステロイド療法が有効です。

方法論：

本稿では、ループス膀胱炎の診断基準案や症例報告を基に、具体的な診断方法と治療法を提示しています。静脈性腎孟造影、膀胱内視鏡、膀胱生検などの画像診断や病理検査が行われます。さらに、膀胱症状よりも消化器症状が先行することが多いため、腹部超音波検査やCT検査も重要です。また、自己免疫機序が関与していることから、抗核抗体や抗DNA抗体などの血液検査も行われます。

結論と意義：

ループス膀胱炎はSLEの臓器障害の一つとして認識されるべきです。早期診断と早期治療が重要であり、特にステロイド療法が有効です。診断が遅れると、膀胱機能の改善が難しく、腎痩形成などの外科的処置を要することもあります。内科医や泌尿器科医だけでなく、広く臨床医がこの病態を認識することが重要です。早期に適切な治療を行うことで、患者の予後を改善することが期待されます。

今後の展望：

ループス膀胱炎の早期診断と治療法の確立が求められます。特に、ステロイド療法に抵抗性を示す症例に対する効果的な治療法の開発が必要です。さらに、多数例での研究を通じて診断基準の有用性を検証し、標準的な治療プロトコルを確立することが重要です。また、内科医や消化器内科医などがこの病態を認識し、早期に診断・治療を行う体制を整えることが求められます。これにより、患者の生活の質を向上させることが期待されます。