農業インターンシップの事業特性と事業効果 : 参加者満足度と雇用実現の規定要因

背景と目的：

インターンシップとは、学生が企業等で実習・研修的な就業体験をする制度であり、日本の農業におけるインターンシップもその一環として行われています。農業インターンシップは、農業法人等での就業体験を通じて、農業や食料の現状を知り、雇用改善や人材育成に寄与することを目的としています。しかし、農業インターンシップに関する研究は現状分析が中心であり、理論的・実証的な総合的研究が不足している状況です。そこで本研究は、農業インターンシップの事業効果と事業特性の関係を明らかにすることを目的としています。

主要な発見：

本研究の結果、農業インターンシップの事業効果には、体験者満足度、経営者満足度、雇用実現の三つの指標があり、それぞれに影響を与える要因が異なることが明らかになりました。体験者満足度は年齢や就農志向、経営者理念への意識、作目部門の特性などが影響し、経営者満足度には体験者の性別や参加目的、体験内容の多角性が影響しています。また、雇用実現には、農業経験や雇用志向、体験内容に経営管理や農産物販売が含まれることなどが正の効果を持つことが分かりました。

方法論：

本研究では、2010年度の農業インターンシップ事業における体験者の体験申込書と体験報告書、農業法人が作成した実施状況報告書兼交付申請書、および受入法人台帳を資料として使用しました。体験者の属性や体験内容、満足度などのデータを収集し、重回帰分析を用いて農業インターンシップの事業効果を規定する要因を解明しました。

結論と意義：

分析の結果、農業インターンシップの事業特性が事業効果に影響を与えることが実証されました。具体的には、体験者と農業法人の意識や特質を的確に把握し、両者のマッチングや体験プログラムを適切に設定することで、事業効果を高める余地があることが示唆されました。また、インターンシップを通じた雇用は、体験者と経営者の満足や意思だけでは実現せず、体験者の農業に対する理解と経営者の農業体験を広める意識が重要であることも明らかになりました。

今後の展望：

本研究は、農業インターンシップに関する業務資料をデータソースとしているため、参加者のモチベーションや心理の深層部分を捉え切れていない点が課題として残されています。今後の研究では、参加者への面接調査や詳細なアンケート調査を実施し、より実態に迫る分析が必要です。また、インターンシップの効果として従業員の定着や能力開発に与える影響を分析するため、インターンシップ終了後の追跡調査も求められます。これにより、農業インターンシップの効果をより詳細に理解し、実践的な改善策を提案することが期待されます。