中国における消費者の日本産米の購買行動

背景と目的：

近年、日本産米の海外輸出が顕著に拡大しており、特に中国市場での需要が高まっています。2003年から一時停止していた日本から中国への米の輸出が2007年に再開され、2008年には恒常的な輸出条件が確立されました。しかし、日本米の海外輸出における販売戦略はまだ確立されておらず、国際マーケティングの視点が必要です。本研究では、中国における消費者の米購入基準と食味嗜好を解明し、日本産米の購入行動の決定要因を探ることで、日本産米の海外販売戦略の策定に資することを目的としています。

主要な発見：

中国の消費者は、日本産米の購入に対して品質やブランドに高い評価をしていることが明らかになりました。特に、高所得者層においては、日本産米を購入する意向が強いことが示されました。また、消費者が米の栽培方法や粘りを重視することが購入意向に強く影響するという結果が得られました。一方で、価格が高いことが日本産米の購入を妨げる主な要因となっており、購入未経験者の多くが価格面での障壁を感じていることが分かりました。

方法論：

本研究は、消費者行動を総合的に把握するために、定量的手法と定性的手法を相互補完的に用いるマルチメソッドによるアプローチを採用しました。具体的には、サーチナ総合研究所に委託して実施したインターネット・アンケート調査を基に、北京市および上海市の高所得者層を対象に消費者の意識と行動要因を分析しました。調査は2008年8月から9月にかけて行われ、サンプル数は1,000としました。調査対象者の家計の所得水準は、中国都市部の平均世帯月収を大幅に上回るものでした。

結論と意義：

中国における日本産米の購入は、品質やブランドに対する評価によるものであり、単なる珍しさからの購入ではないことが明らかになりました。価格が高いことは購入の必要条件であるが、十分条件ではなく、消費者が米の栽培方法や粘りに対する関心を持っていることが重要です。この結果から、日本産米の輸出促進には、流通・販売方法の改善や相手国の消費者の意識・行動に関する詳細な分析が不可欠であることが示されました。

今後の展望：

今後の展望として、日本産米の中国市場での拡大には、価格低下や流通・販売方法の改善が求められます。また、消費者の意識や行動に関するさらなる詳細な分析が必要であり、消費者が求める米の品質や食味要因についての理解を深めることが重要です。さらに、日本米のブランド価値を高めるためのマーケティング戦略の構築が求められ、現地の消費者ニーズに応じた商品開発やプロモーション活動の強化が必要です。