中国大都市における外食消費の増大と多様化 : 主に10都市の住民アンケート調査から

背景と目的：

中国の経済成長とともに、特に都市住民の外食消費が大幅に増加していることが注目されています。1970年代末の「改革開放」以降、所得の上昇が都市住民の外食消費を促進し、それに伴い外食産業も成長を遂げています。しかし、外食消費の具体的な内容や都市住民の属性と外食行動の多様性についての詳細な研究は少なく、計量経済学的な分析に留まっています。本研究は、中国の都市住民の外食消費内容に焦点を当て、その全国的な動向と特徴を把握することを目的としています。

主要な発見：

本研究では、都市住民の外食消費が90年代半ば以降に急速に増加していることが明らかになりました。特に高所得階層ほど外食割合が大きく、沿海諸省の都市で外食支出が顕著です。また、ファストフードや中国料理が外食メニューとして人気であり、20代から30代の若い世代が外食頻度が高いことが確認されました。さらに、最近の外食増加傾向は全体的には高まっているものの、地域ごとに外食消費内容や頻度に差異が見られることが示されています。

方法論：

本研究は、「中国統計年鑑」などの既存の統計データや大都市での住民アンケート調査を基に分析を行いました。アンケート調査は2009年から2010年にかけて、中国国内の16都市の住民を対象に実施され、米飯の外食状況や外食頻度、よく消費する外食メニューなどについて詳細に質問しました。また、回答者の年齢や家庭収入などの属性も考慮に入れて分析を進めました。

結論と意義：

本研究は、中国都市住民の外食消費が所得上昇とともに急速に増加していることを示しました。特にファストフード業界の成長が顕著であり、若い世代が外食消費の主要な推進力となっています。また、外食消費の多様化が進んでおり、食習慣や食文化の地域差が存在することが分かりました。このような知見は、外食産業や関連する農産物流通システムの発展に対する理解を深め、政策立案やビジネス戦略の基礎資料として役立つと考えられます。

今後の展望：

本研究の結果から、都市住民の外食消費の多様性や地域ごとの差異についてさらに詳しい調査が必要であることが示唆されます。特に、外食メニューや店舗業態の詳細な分析、世代別の生活様式や外食志向との具体的な関係性の解明が求められます。さらに、外食消費の鈍化傾向と各世代の外食志向の変化についての長期的な研究も重要です。これにより、中国の外食産業の将来の動向や市場機会をより正確に予測することが可能となるでしょう。