論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
脳虚血に対する成長因子プログラニュリンの神経保護メカニズムの検討
- AI解説:
- 脳血管障害は国内の主要な死亡原因の一つであり、脳梗塞後の後遺症により多くの人が要介護状態となっています。現時点で脳梗塞急性期の治療薬として広く使用されているのは血栓溶解薬t-PAですが、その使用には時間制限があり、適応される患者は限られています。新たな治療法の開発が急務であり、多面的な脳保護作用を持つプログラニュリン(PGRN)が注目されています。本研究では、PGRNがTDP-43の限定分解および細胞質内異常局在を抑制することで、虚血性神経細胞障害に対する保護作用を示すという仮説を立て、その検証を行いました。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
脳虚血に対する成長因子プログラニュリンの神経保護メカニズムの検討
AI解説
- 背景と目的:
-
脳血管障害は国内の主要な死亡原因の一つであり、脳梗塞後の後遺症により多くの人が要介護状態となっています。現時点で脳梗塞急性期の治療薬として広く使用されているのは血栓溶解薬t-PAですが、その使用には時間制限があり、適応される患者は限られています。新たな治療法の開発が急務であり、多面的な脳保護作用を持つプログラニュリン(PGRN)が注目されています。本研究では、PGRNがTDP-43の限定分解および細胞質内異常局在を抑制することで、虚血性神経細胞障害に対する保護作用を示すという仮説を立て、その検証を行いました。
- 主要な発見:
-
本研究の結果、PGRNノックアウトマウスでは、野生型マウスと比較して虚血後のTDP-43の細胞質内異常局在が顕著に増加していました。また、血栓塞栓モデルにおいて、PGRN投与群は対照群と比べて全長型TDP-43の減少が抑制され、活性型カスパーゼ-3の発現も抑制されました。さらに、ラット血栓塞栓モデルにおいてヒト組み換えPGRNの投与が脳梗塞体積の縮小をもたらすことが確認されました。これらの結果から、PGRNの投与が神経細胞保護作用を有することが示されました。
- 方法論:
-
本研究では、PGRNノックアウトマウスと野生型マウスを用いた一過性脳虚血モデル、およびラット血栓塞栓モデルを使用しました。一過性脳虚血モデルでは、虚血24時間後のTDP-43の細胞内局在を免疫染色にて比較し、血栓塞栓モデルでは、血栓注入4時間後にt-PAと組み換えPGRNを静注し、虚血24時間後に免疫ブロットを行い活性型カスパーゼ‐3やTDP-43の発現を評価しました。また、組み換えヒトPGRN投与の効果についてもラット血栓塞栓モデルで検討しました。
- 結論と意義:
-
PGRNの神経細胞保護作用は、TDP-43の限定分解を抑制し、全長型TDP-43を核内に保持することによってその機能を保つことにあると考えられます。特に、脳虚血後のカスパーゼ-3の活性化を抑制することが重要であり、この作用がPGRNの神経細胞保護効果の基礎となります。これにより、PGRNは種を超えて神経保護作用を持つことが確認され、将来的に臨床応用への道が開かれる可能性があります。
- 今後の展望:
-
本研究の結果を踏まえ、今後はPGRNの臨床応用を目指したさらなる研究が求められます。具体的には、PGRNがカスパーゼ-3の活性化をどのように抑制するのか、その詳細な機序を解明する必要があります。また、異なる動物モデルやヒト臨床試験での検証を行い、PGRNの安全性と有効性を確認することが重要です。最終的には、PGRNを用いた新たな治療法の開発が期待され、脳梗塞患者の予後改善に貢献することが期待されます。
- 背景と目的:
-
は日本で多くの人が亡くなる原因の一つで、脳梗塞の後遺症で多くの人が介護を必要としています。現在、脳梗塞の急性期に使われる治療薬は血栓溶解薬のt-PAだけですが、使える時間が限られていて、適用される患者も少ないです。そのため、新しい治療法の開発が求められています。この研究では、多面的な脳保護作用を持つ脳血管障害 ( 脳の血管に異常が起こる病気のことです。脳梗塞や脳出血などがあります。) という物質が注目されています。PGRNがプログラニュリン(PGRN) ( 神経細胞を保護する働きがある成長因子です。多面的な作用を持っています。) というタンパク質の異常を抑えることで、脳梗塞による神経細胞の損傷を防ぐという仮説を立てて検証しました。TDP-43 ( 神経細胞の中にあるタンパク質で、異常が起こると神経細胞が損傷します。)
- 主要な発見:
-
研究の結果、PGRNを持たないマウスでは、通常のマウスに比べて脳梗塞後に
の異常が増えていることがわかりました。また、PGRNを投与した群では、対照群に比べてTDP-43の減少が抑えられ、神経細胞の損傷が少なかったです。ラットのモデルでも、PGRNを投与することで脳梗塞の範囲が小さくなることが確認されました。この結果から、PGRNが神経細胞を保護する効果があると示されました。TDP-43 ( 神経細胞の中にあるタンパク質で、異常が起こると神経細胞が損傷します。)
- 方法論:
-
この研究では、PGRNを持たないマウスと通常のマウスを使った脳虚血モデルと、ラットを使った血栓塞栓モデルを使用しました。脳虚血モデルでは、虚血24時間後の
の状態を調べ、血栓塞栓モデルでは血栓注入4時間後にt-PAとPGRNを投与し、24時間後のTDP-43や他のタンパク質の状態を調べました。また、PGRNの効果をラットの血栓塞栓モデルでも確認しました。TDP-43 ( 神経細胞の中にあるタンパク質で、異常が起こると神経細胞が損傷します。)
- 結論と意義:
-
PGRNの神経細胞保護作用は、
の異常を防ぎ、TDP-43を核内に保つことで、その機能を維持することによると考えられます。特に、脳虚血後のTDP-43 ( 神経細胞の中にあるタンパク質で、異常が起こると神経細胞が損傷します。) というタンパク質の活性化を抑えることが重要で、この作用がPGRNの神経細胞保護効果の基礎となります。これにより、PGRNが様々な種類の動物で神経保護作用を持つことが確認され、将来的に臨床応用への道が開かれる可能性があります。カスパーゼ-3 ( 細胞の中でいらなくなったタンパク質を分解する酵素の一種です。脳梗塞後に活性化すると神経細胞が損傷します。)
- 今後の展望:
-
この研究の結果を元に、今後はPGRNの臨床応用を目指したさらなる研究が必要です。具体的には、PGRNが
の活性化をどのように抑制するのか、その詳細な仕組みを解明する必要があります。また、異なる動物モデルや人での臨床試験を行い、PGRNの安全性と有効性を確認することが重要です。最終的には、PGRNを用いた新しい治療法の開発が期待され、脳梗塞患者の回復に貢献することが期待されます。カスパーゼ-3 ( 細胞の中でいらなくなったタンパク質を分解する酵素の一種です。脳梗塞後に活性化すると神経細胞が損傷します。)
- 何のために?:
-
脳 の病気である脳 梗塞 は、日本で多くの人が亡 くなる原因 の一つです。脳 梗塞 の後に、たくさんの人が介護 を必要 とします。今の治療薬 はt-PAという薬だけです。でも、使える時間が短く、使える人も少ないです。だから、新しい治療 法 が必要 です。この研究では、 というプログラニュリン(PGRN) ( 脳 の細胞 を守る働 きをする物質 です。) 物質 が注目されています。PGRNが というTDP-43 ( 脳 の細胞 の中にあるタンパク 質 です。) タンパク 質 の問題を抑 えることで、脳 梗塞 による脳 の細胞 の傷 を防 げるかを調べました。
- 何が分かったの?:
-
研究の
結果 、PGRNを持っていないマウスでは、脳 梗塞 の後に の問題がTDP-43 ( 脳 の細胞 の中にあるタンパク 質 です。) 増 えました。でも、PGRNをあげたマウスでは、TDP-43の問題が少なくなり、脳 の傷 も少なかったです。ラットでも、PGRNをあげると、脳 梗塞 が小さくなりました。これで、PGRNが脳 の細胞 を守ることがわかりました。
- どうやったの?:
-
この研究では、PGRNを持たないマウスと
普通 のマウスを使いました。脳 梗塞 の後に のTDP-43 ( 脳 の細胞 の中にあるタンパク 質 です。) 状態 を調べました。また、ラットにもPGRNをあげて、その効果 を調べました。
- 研究のまとめ:
-
PGRNは、
の問題をTDP-43 ( 脳 の細胞 の中にあるタンパク 質 です。) 防 ぎます。TDP-43を細胞 の中に保 つことで、その働 きを守ります。これにより、脳 梗塞 の後の というカスパーゼ-3 ( 細胞 を壊 す働 きをするタンパク 質 です。) タンパク 質 の働 きを抑 えることが大切です。このおかげで、PGRNが脳 を守ることがわかりました。将来 、PGRNが薬として使われるかもしれません。
- これからどうする?:
-
今後は、PGRNがどのように
をカスパーゼ-3 ( 細胞 を壊 す働 きをするタンパク 質 です。) 抑 えるのかをもっと調べる必要 があります。また、他の動物や人でも安全で効果 があるかを確 かめる必要 があります。最終的 には、PGRNを使った新しい治療 法 ができるといいですね。
- 著者名:
- 鳥谷部 真史
- 発行日:
- 2016-09-20
- 著者による要約:
- 【序文】プログラニュリン(PGRN)は神経栄養活性を有する成長因子である.PGRN遺伝子変異は,核蛋白TARDNA結合蛋白-43(TDP-43)が神経細胞内に蓄積する前頭側頭型変性症を引き起こすことが知られている.脳虚血に関しても,ラット血栓塞栓モデルにて,血栓溶解薬組織プラスミノーゲンアクティベーター(t-PA)と組み替えPGRN蛋白の併用投与は,脳梗塞体積の減少,出血量の減少をもたらしPGRNが神経細胞を含む多面的な脳保護作用を有することが明らかになった. しかしPGRNによる神経細胞保護作用の機序と,TDP-43への影響については十分には明らかにされていない.今回,PGRNがTDP-43の限定分解および細胞質内異常局在を抑制することで, 虚血性神経細胞障害に対し保護作用を示すという仮説を立て, 検証を行った.【材料と方法】PGRNノックアウトマウスと,野生型マウスの一過性脳虚血モデルにおいて,虚血24時間後のTDP-43の細胞内局在を免疫染色にて比較した。次にラット血栓塞栓モデルにて,虚血4時間後に血栓溶解薬(t-PA)と組み換えマウスPGRNないし対照蛋白(IgG)の静注を行い,虚血24時間後に免疫プロットにて活性型カスパーゼ-3,全長型および切断されたTDP-43の発現の比較を行った。さらに種の異なる,組み換えヒトPGRN投与による脳梗塞抑制効果について,ラット血栓塞栓モデルを用いて検討を行った。【結果】PGRNノックアウトマウスでは,野生型と比較して,虚血後のTDP-43の細胞質内異常局在を認める神経細胞の頻度が多かった(P<0.001).また血栓塞栓モデルではPGRN投与群は対照群と比して,全長型TDP-43の虚血後の減少は抑制された(P<0.05).さらに活性型カスパーゼ-3発現が抑制された(P<0.05)。ラット血栓塞栓モデルにおいてヒト組み換えPGRN投与は,対照群と比較して,脳梗塞体積を縮小した(P<0.05).【考察】脳虚血に対するPGRNの神経細胞保護作用の機序としてはカスパーゼ-3活性化を抑制し,TDP-43の限定分解およびTDP-43の異常細胞質内局在を抑制し,TDP-43の機能を保つことが関与する可能性が示唆された。
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/45094