論文詳細
大学院自然科学研究科
自然科学系
#学位論文
ノニガナ属ノニガナ,オオジシバリ,イワニガナにおいて生じる雑種について
- AI解説:
- ノジシバリ(I.×sekimotoi Kitam.)がノニガナ(Ixerispolycephala)とオオジシバリ(I.japonica)の種間雑種であるという仮説の検証を行うために、人工交配実験を実施した。従来の研究ではノジシバリが種間雑種であることが示唆されていたが、詳細な形態学的および遺伝学的な検証は行われていなかった。そこで、交配実験とDNA分析を通じてノジシバリの起源を明確にし、その繁殖生態や自然集団における存在も確認することを目的とした。
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大学院自然科学研究科
自然科学系
#学位論文
ノニガナ属ノニガナ,オオジシバリ,イワニガナにおいて生じる雑種について
AI解説
- 背景と目的:
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ノジシバリ(I.×sekimotoi Kitam.)がノニガナ(Ixerispolycephala)とオオジシバリ(I.japonica)の種間雑種であるという仮説の検証を行うために、人工交配実験を実施した。従来の研究ではノジシバリが種間雑種であることが示唆されていたが、詳細な形態学的および遺伝学的な検証は行われていなかった。そこで、交配実験とDNA分析を通じてノジシバリの起源を明確にし、その繁殖生態や自然集団における存在も確認することを目的とした。
- 主要な発見:
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ノジシバリは、ノニガナを種子親、オオジシバリを花粉親とする交配実験の結果、両者の中間的な形質を示す4倍体の雑種として確認された。また、ノニガナとオオジシバリが生育する自然集団でも、交配実験で得られた雑種と形態およびDNA量が一致する個体が見つかり、自然環境下でもノジシバリが形成されていることが確認された。さらに、ノジシバリは自家受粉により稔性のある種子を形成し、形態や花粉の稔性においても特有の特徴が見られた。
- 方法論:
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本研究では、ノニガナとオオジシバリの頭花を人工交配し交雑個体を得るための実験を行った。具体的には、頭花をこすり合わせて受粉させ、その後、DNA量の測定や外部形態の計測、花粉稔性の評価を行った。また、葉緑体DNAおよび核DNAマーカーを用いた遺伝子解析を行い、各種間の遺伝的関係を明らかにした。これにより、人工交配実験によって得られた個体と自然集団の個体を比較し、ノジシバリの起源とその遺伝的背景を検証した。
- 結論と意義:
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ノジシバリは、ノニガナとオオジシバリの種間雑種であることが確認され、自然集団でも同様の雑種個体が存在することが証明された。本研究の結果は、ノジシバリの種子親がノニガナである可能性が高く、また、ノジシバリの花粉稔性が高いため、戻し交雑により新たな種形成に寄与する可能性が示唆された。この研究は、種間雑種の形成メカニズムや自然集団における遺伝的多様性の理解に重要な知見を提供するものである。
- 今後の展望:
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今後の研究では、ノジシバリとその親種間の交配システムの詳細な解明や、自然環境下での遺伝的多様性の調査が必要である。また、ノジシバリが他の種と戻し交雑する可能性についても検討する必要がある。さらに、ノニガナとオオジシバリ以外の近縁種間の雑種形成の可能性や、その遺伝的影響についても研究を進めることで、より包括的な進化と遺伝の理解が期待される。これにより、種間雑種が自然環境や生態系に与える影響の評価が可能となり、生物多様性の保全に貢献できると考えられる。
- 背景と目的:
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という植物がノジシバリ ( ノニガナとオオジシバリの種間雑種で、両者の特徴を持つ植物。) とノニガナ ( ノジシバリの母親とされる植物。) という2つの植物の間の雑種であるかどうかを調べるために、人工的に交配実験を行いました。以前の研究ではノジシバリが雑種であることが示唆されていましたが、詳しく調べられたことはありませんでした。この研究では、交配実験とDNA分析を通じてノジシバリの起源を明らかにし、その繁殖方法や自然界での存在を確認することを目的としています。オオジシバリ ( ノジシバリの父親とされる植物。)
- 主要な発見:
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は、ノジシバリ ( ノニガナとオオジシバリの種間雑種で、両者の特徴を持つ植物。) を母親に、ノニガナ ( ノジシバリの母親とされる植物。) を父親にして交配実験を行った結果、両方の特徴を持つ雑種であることが確認されました。また、自然の環境でも同じような雑種が見つかり、ノジシバリが自然環境でも形成されていることがわかりました。さらに、ノジシバリはオオジシバリ ( ノジシバリの父親とされる植物。) によって種子を作ることができ、特有の形態や花粉の特徴も持っていることがわかりました。自家受粉 ( 同じ植物の花粉を使って受粉すること。)
- 方法論:
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この研究では、
とノニガナ ( ノジシバリの母親とされる植物。) の花を人工的に交配し、できた個体を調べました。具体的には、花をこすり合わせて受粉させ、その後DNA量の測定や形態の観察、花粉のオオジシバリ ( ノジシバリの父親とされる植物。) (つくった種子が発芽する能力)の評価を行いました。また、稔性 ( つくられた種子が発芽する能力。) を行い、人工交配実験で得られた個体と自然で見つかった個体を比較しました。遺伝子解析 ( DNAを調べて遺伝子の情報を読み取ること。)
- 結論と意義:
-
はノジシバリ ( ノニガナとオオジシバリの種間雑種で、両者の特徴を持つ植物。) とノニガナ ( ノジシバリの母親とされる植物。) の雑種であることが確認され、自然界でも同じ雑種個体が存在することが証明されました。この研究の結果、ノジシバリの母親はノニガナである可能性が高いことが示されました。また、ノジシバリの花粉は他の植物と交配できるため、新しい種を形成する可能性があることがわかりました。この研究は、種間雑種の形成メカニズムや自然界での遺伝的多様性の理解に重要な情報を提供します。オオジシバリ ( ノジシバリの父親とされる植物。)
- 今後の展望:
-
今後の研究では、
とその親種の交配システムの詳しい解明や、自然環境での遺伝的多様性の調査が必要です。また、ノジシバリが他の種と交配する可能性についても検討する必要があります。さらに、ノジシバリ ( ノニガナとオオジシバリの種間雑種で、両者の特徴を持つ植物。) とノニガナ ( ノジシバリの母親とされる植物。) 以外の近縁種間の雑種形成の可能性や、その遺伝的影響についても研究を進めることで、より広範な進化と遺伝の理解が期待されます。オオジシバリ ( ノジシバリの父親とされる植物。)
- 何のために?:
-
ノジシバリという植物について調べました。ノジシバリは、ノニガナとオオジシバリという二つの植物が
一緒 になったものかどうか知りたかったのです。そのために、特別 な実験 をしました。ノジシバリがどんなふうに育つかや、どこにあるかを知ることが目的 です。
- 何が分かったの?:
-
実験 の結果 、ノジシバリはノニガナとオオジシバリが一緒 になった植物だとわかりました。自然 の中にも同じようなノジシバリが見つかりました。ノジシバリは、自分で種 を作ることもできます。特別 な形や花粉 も持っています。
- どうやったの?:
-
ノニガナとオオジシバリの花をこすり合わせて、
させました。その後、できた植物を調べました。受粉 ( ある植物の花粉 が別 の植物の花に乗って、種子 を作る過程 。) のDNA ( 生物の遺伝 情報 が含 まれる物質 で、見た目や性質 を決める。) 量 や形、花粉 の元気さを見ました。そして、人工的 にできたノジシバリと自然 にあるノジシバリを比 べました。
- 研究のまとめ:
-
ノジシバリは、ノニガナとオオジシバリが
一緒 になった植物です。自然 の中にも同じノジシバリがあるとわかりました。ノジシバリの母親はノニガナだと考えられます。ノジシバリは、他の植物と もできます。この研究は、交配 ( 異 なる植物や動物が一緒 になって新しい子供 を作ること。) 自然 の中で植物がどうやってできるかを知る手がかりになります。
- これからどうする?:
-
これからは、ノジシバリとその親の植物がどうやって
するか、もっと交配 ( 異 なる植物や動物が一緒 になって新しい子供 を作ること。) 詳 しく調べます。ノジシバリが他の植物と交配できるかも知りたいです。ノニガナとオオジシバリ以外 の植物も調べて、もっと広い範囲 で研究を進めたいです。
- 著者名:
- 石澤 佳代
- ページ:
- 1 - 94
- 発行日:
- 2018-03-23
- 著者による要約:
- 本研究は、ノジシバリ(I.×sekimotoi Kitam.)が、ノニガナ属(キク科キクニガナ亜科キクニガナ連)の2種、ノニガナ(Ixeris polycephala)とオオジシバリ(I.japonica)の種間雑種とする仮説(北村1936)を検証する目的でおこなわれた。2倍体のノニガナを種子親、6倍体のオオジシバリを花粉親とする交配実験をおこなった結果、生じたF1雑種は、両種の中間的な形質を示した。この個体の形態と北村(1936)のノジシバリの記載が一致したことから、ノジシバリがノニガナとオオジシバリの種間雑種だという仮説を支持した。ノジシバリは、種子親がノニガナのときのみに生じ、4倍体で、自家受粉により稔性のある種子を形成することが分かった。また、ノニガナとオオジシバリが同所的にみられる自然集団に、交配実験で生じたノジシバリとよく似た個体を見つけたのでDNA量を測定したところ、4倍体で稔性のある種子を形成していた。形態計測の結果と合わせて、自然集団でもノジシバリが形成されていることを確認した。また、2009年から2015年の6年間の観察により、4倍体のノジシバリは、個体数が増え、分布が広がりを見せていることを確認できたが、集団ごとに若干、葉の形態や頭花の径等に変異が見られた。なかには3倍体と推定される個体もみられた。花粉は稔性が高いことから、ノジシバリは花粉親として戻し交雑をおこなっている可能性も考えられる。オオジシバリと近縁である2倍体のイワニガナ(I.stolonifera)とノニガナの間でも、雑種形成の可能性が示されているが(Kitamura 1956)、それに該当する種間雑種とみられる個体が、両種が混生する自然集団で見つかった。その個体は、ノニガナとイワニガナの中間的な形態をもち、ノジシバリとも異なっていた。DNA量は2倍体で、稔性種子はほとんど得られなかった。また、ノニガナとイワニガナの交配実験をおこなったところ、種子親がノニガナのときに、その個体と同様な形態をもった雑種が得られた。さらに、自然集団と同じように稔性種子は確認できなかった。そこで、これらの個体をノニガナとイワニガナから生じる雑種として、ヒメノジシバリIxeris ×pseudosekimotoiと命名することとした。なお、京都総合博物館と国立科学博物館、新潟県新津資料館に収められている標本にも、これと同じ形態をもつものがあり、各地で生じている可能性が考えられる。しかし、この雑種は、種子形成はほとんどおこなわず、イワニガナのような匍匐茎などによる栄養繁殖もおこなえないため、増殖する可能性は低い。一方、稔性のある花粉形成はおこなっていることから、戻し交雑等により、新たな種形成に関わる可能性は否定できない。
葉緑体DNAはキク科植物では母性遺伝することが知られている。自然集団で見られたノジシバリとヒメノジシバリの種子親を特定するため、葉緑体DNAの運搬RNA遺伝子のtrnT-trnF間非コード領域の塩基配列を決定した。両親種と比較した結果、いずれもノニガナが種子親であることが分かった。また、核DNAマーカーであるリボソームRNA遺伝子間の非コード領域ITS(Internal Transcribed Spacer)やETS(External Transcribed spacer)領域の塩基配列と比較したところ、ノジシバリの花粉親はオオジシバリ、ヒメノジシバリの花粉親はイワニガナであることがほぼ確定した。花粉親となったイワニガナとオオジシバリを分子マーカーで比較したところtrnT-trnF(葉緑体DNA)には相違が見られず、ITS領域(核DNA)では1塩基だけ相違見られた。さらに、ETS領域(核DNA)をクローニングして塩基配列を比較したところ、わずか3塩基の相違があるのみで、ほぼ、同一であった。分子遺伝学的にも、形態学的にも、イワニガナとオオジシバリはノニガナとオオジシバリ、ノニガナとイワニガナよりも近縁であると考えられる。交配実験も試みたが、現在のところ両者の雑種形成は確認できていない。以前のニガナ属は、現在、冠毛の色が白色で染色体基本数がx=8のノニガナ属Ixerisと、冠毛の色は汚白色あるいは黄白色で染色体基本数はx=7のニガナ属Ixeridiumに分類されている(大橋他2017)。そこで、この分類が分子系統学的に妥当であるかどうかを検討した。葉緑体DNAのtrnT-trnF間の塩基配列を用いて系統樹を作成したところ、IxerisとIxeridiumは、異なるクレードを形成した。ITS領域を用いた系統解析も同様の結果を示した。従って、形態学的に分類されてきたとおり、分子系統学的にもIxerisとIxeridiumのグループ分けは妥当であると言える。また、種間雑種(ノジシバリとヒメノジシバリ)は、同じノニガナ属(Ixeris)の種間だけで形成され、ノニガナ属(Ixeris)とニガナ属(Ixeridium)の間では生じていないことが改めて確認された。
The present study was carried out to verify Kitamura’s hypothesis (1936) that Ixeris ×sekimotoi is the interspecific hybrid of Ixeris polycephala and Ixeris japonica of the genus Ixeris (Compositae subfam. Cichorioideae tribe Cichorieae). The F1 plants produced from the artificial cross between I. polycephala (2x) as the seed parent and I. japonica(6x) as the pollen parent were tetraploid and produced fertile seeds through self-pollination. They showed characteristics intermediate between both parental species, consistent with the description of Ixeris× sekimotoi by Kitamura (1936). These results support Kitamura’s hypothesis and suggest that Ixeris × sekimotoi occurs only when the seed parent is I. polycephala. An individual identified as Ixeris ×sekimotoi was discovered from a natural population in Maki, Niigata Prefecture, where both I. polycephala and I. japonica grow sympatrically. The plant showed external morphology similar to that of the artificial F1 hybrid, with a tetraploid DNA content and seed fertility. During six years of observation (2009–2015), Ixeris × sekimotoi individuals increased in number and gained variations in leaf shape and head diameter among them. An individual was estimated to be triploid. Higher pollen fertility of Ixeris × sekimotoi suggested backcrossing potential as the pollen parent. An interspecific hybrid between I. polycephala and another diploid species, Ixeris stolonifera, was also suggested by Kitamura (1956). Some putative hybrid individuals similar to it were discovered in natural populations where both species grew sympatrically. These were distinct from Ixeris × sekimotoi and had morphological characteristics intermediate between I. polycephala and I.stolonifera, and had a diploid DNA content. Crossing between these two species demonstrated that putative hybrid individuals were produced only when the seed parent was I. polycephala. Accordingly, I named those hybrid individuals as “Ixeris ×pseudosekimotoi.” Because Ixeris × pseudosekimotoi neither produce fertile seeds nor carry out vegetative propagation by creepers like I. stolonifera, the possibility of multiplication seems low. However, the potential of backcrossing to either diploid parent cannot be excluded, because its pollen grains have some fertility.
In order to comfirm the seed parents of Ixeris×sekimotoi and Ixeris×pseudosekimotoi, an intergenic region (TrnT-TrnF) of the chloroplast DNA (cpDNA) was sequenced, because cpDNA of the Compositae is maternally inherited. A comparison of the base sequences with those of the parental species demonstrated that I. polycephala was the seed parent of both hybrid species. The base sequences of the internal transcribed spacer (ITS) and the external transcribed spacer of the nuclear ribosomal RNA gene (ETS) showed that the pollen parent of Ixeris ×sekimotoi and Ixeris ×pseudosekimotoi was I. japonica and I. stolonifera, respectively. There were no differences in the TrnT-TrnF region between I. stolonifera and I. japonica, and only one base difference in the ITS region was detected. Moreover, the ETS region had only three base differences. Judging from these molecular data and their morphological characteristics, I believe that I. stolonifera and I. japonica are more closely related than I. polycephala and I. japonica or I. polycephala and I. stolonifera are. The reason why no hybridization occurs between I. stolonifera and I. japonica is still unclear. The previous genus Ixeris is currently divided into the genera Ixeris and Ixeridium. Plants of the new Ixeris genus have a white pappus, and the basic number of chromosomes is x = 8. Plants of Ixeridium, on the other hand, have an off-white or yellowish white pappus, and the basic number of chromosomes is x = 7 (Oohasi et al. 2017). This classification was tested in the present study by a molecular phylogenetic analysis. In the phylogenetic tree constructed from the base sequences between TrnT and TrnF of the cpDNA, Ixeris and Ixeridium each formed a different clade. Similar results were shown for the ITS region. Consequently, it is possible to conclude that the new taxonomic treatment of Ixeris and Ixeridium is correct molecular phylogenetically. Whereas interspecific hybrids were formed within the same genus Ixeris, they may not occur between Ixeris and Ixeridium.
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/50328
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