論文詳細
自然科学系
理学部
#紀要論文
Water temperature, salinity, algal-chlorophyll profiles and radiolarian fauna in the surface and subsurface waters in early June, off Tassha, Sado Island, central Japan
- AI解説:
- 放散虫(radiolarians)は、沿岸の表層水から外洋の深層環境まで広く分布しており、その群集組成は、水温・塩分・日射・栄養塩・食物網相互作用など、複数の物理・化学・生物学的要因によって形成されると理解されている。これらのうち本論文は、多くの環境特性に影響を及ぼすことから、水温を主要な物理的要因として扱っている。ただし著者らは、放散虫は培養が極めて難しいため、実験室培養によって種レベルの温度許容範囲を直接かつ定量的に決めることは稀であると述べる。そこで現実的な代替として、野外モニタリングを用い、種組成の変化から水温に関連した生態パターンを推定することの意義を示している。日本海は、亜熱帯の対馬暖流の流入によって季節的な水温構造が強く左右され、顕著な水温勾配が生じるため、有用な自然条件を提供する。佐渡島・多田捨沖で数年にわたり複数季節の採集を行ってきた成果を踏まえ、本研究は、2005年6月上旬における(i) 水質(温度、塩分、密度、藻類クロロフィル相対量)の詳細な鉛直プロファイル、(ii) 深度区間別の放散虫相(faunal composition)を記載し、鉛直水構造と放散虫相の関係、およびこれらの観察が春から夏への季節移行過程の理解にどう資するかを議論することを目的とする。
AI解説を見る
自然科学系
理学部
#紀要論文
Water temperature, salinity, algal-chlorophyll profiles and radiolarian fauna in the surface and subsurface waters in early June, off Tassha, Sado Island, central Japan
AI解説
- 背景と目的:
-
放散虫(radiolarians)は、沿岸の表層水から外洋の深層環境まで広く分布しており、その群集組成は、水温・塩分・日射・栄養塩・食物網相互作用など、複数の物理・化学・生物学的要因によって形成されると理解されている。これらのうち本論文は、多くの環境特性に影響を及ぼすことから、水温を主要な物理的要因として扱っている。ただし著者らは、放散虫は培養が極めて難しいため、実験室培養によって種レベルの温度許容範囲を直接かつ定量的に決めることは稀であると述べる。そこで現実的な代替として、野外モニタリングを用い、種組成の変化から水温に関連した生態パターンを推定することの意義を示している。日本海は、亜熱帯の対馬暖流の流入によって季節的な水温構造が強く左右され、顕著な水温勾配が生じるため、有用な自然条件を提供する。佐渡島・多田捨沖で数年にわたり複数季節の採集を行ってきた成果を踏まえ、本研究は、2005年6月上旬における(i) 水質(温度、塩分、密度、藻類クロロフィル相対量)の詳細な鉛直プロファイル、(ii) 深度区間別の放散虫相(faunal composition)を記載し、鉛直水構造と放散虫相の関係、およびこれらの観察が春から夏への季節移行過程の理解にどう資するかを議論することを目的とする。
- 主要な発見:
-
深度64 mから海面までの水温は約12.0°C〜18.0°Cで、勾配にもとづき3層に区分できた。すなわち、勾配が小さい下層(64–58 m;0.5°C/10 m)、同様に勾配が小さいが一部により大きな勾配の短い区間を含む中層(58–21 m;約0.4°C/10 m、ただし58–54 mでは約1.6°C/10 m)、そして勾配が大きい上層(21 m〜海面;約2.0°C/10 m)である。塩分は34.237‰〜34.485‰の範囲で、深部(64–29 m)ではほぼ一定だが、29 m以浅では大きく変動した。この鉛直分布は、10 m以浅および29–14 mの水層において、陸水流入に関連するとみられる低塩分の供給を示唆した。密度は1024.8〜1026.5で、15 m以浅で勾配がより急となり、水温構造と概ね対応した。藻類クロロフィル相対量(蛍光強度として)は、64–48 mで小スケールの変動が大きく、56 mでピークを示した一方、48 m以浅では概して低く、最上層ではほぼ一定であった。
放散虫の解析では、159個体の殻から単体(solitary)の25種が同定され、加えて群体性放散虫(colonial Radiolaria)であるSphaerozoum sp.の孤立した骨針(spicules)が認められた。深度別試料における現存量(standing stocks)は上方へ向かって低下し、49.8 shells/m3(約90–63 m)、17.8 shells/m3(約63–36 m)、11.8 shells/m3(36 m〜海面)であった。相の組成は深度によって中程度に変化し、とくにSpumellaria(spumellarians)で顕著だった。Cyrtidosphaera reticulataとLarcopyle butschliiは最深区間で比較的多く、Tetrapyle octacanthaとDidymocyrtis tetrathalamus tetrathalamusは浅い2区間で相対的に多かった。著者らはこれを深度(ひいては水温)に関連した組成シフトと解釈し、L. butschliiとC. reticulataがより深く冷たい環境と結びつくという先行報告と整合的だと述べる。Nassellaria(nassellarians)の種組成は区間間で概ね類似していたが、Plectacantha trichoidesとP. oikiskosの優占度は大きく異なった。これら2分類群は最深試料では放散虫相の約50%を占めた一方、最浅試料では優占せず、代わりにLophospyris sp.が20%に達した。深部でPlectacanthaが優占する原因は現時点では十分に分かっていないとされるが、著者らは、近傍に存在する藻類クロロフィル極大と、それに伴う微生物性餌資源(microbial prey)の動態との関連を提案している。
- 方法論:
-
野外観測とプランクトン採集は、2005年6月6日の日中に、38° 05’N, 138°10’E(日本中部、佐渡島・多田捨の西約6 km)で、調査船「IBIS2000」を用いて実施した。水質はconductivity-temperature-depth instrument(Alec Electronics Co., Ltd. COMPACT-CTD)で測定し、深度64 mから海面まで1 m間隔で、水温・塩分・密度・藻類クロロフィル相対量の鉛直プロファイルを取得した。クロロフィルは、蛍光強度の出力信号として表した。水温は従来型のデジタル温度計でも追加記録した。
放散虫は、網採集6回(606-6SD-1〜606-6SD-6)により採集した。使用したのは、目合い100 μm、開口径0.3 mの丸川式プランクトンネットである。深度パターンを解像するため、メッセンジャーでネットを閉鎖し、約30 m厚の区間採集を試みた。具体的には、606-6SD-1は100–70 m、606-6SD-2は70–40 mを対象とし、606-6SD-3は閉鎖せず40 m〜海面を採集した。さらに、閉鎖せず100 m〜海面を曳網した別試料(606-6SD-4)を用いて全体の相組成を把握したほか、生体観察用として追加の2試料(606-6SD-5、606-6SD-6)を採集し、損傷を減らすため、採集瓶から健康なプランクトンを意図的に選別した。ネットのディップ角が65°であったため、実際の採集深度は設定深度のおよそ90%であると著者らは述べている。
606-6SD-5および606-6SD-6の生体放散虫は、実体顕微鏡下でパスツールピペットを用いて分離し、倒立顕微鏡(Nikon Eclipse TE300-DEF)で観察し、CCDカメラ(Fujix HC-300Z)で撮影した。その後、約50%硫酸で1日処理して有機物を除去し、スタブに固定してSEM(JEOL JSM-5600)で観察した。定量用試料(606-6SD-1〜606-6SD-4)では、硫酸処理後の残渣を46 μmでふるい分けし、洗浄して含水エタノール中に保存し、カナダバルサムで封入し、デジタル透過光顕微鏡(Keyence VH-7000)で撮影した。種同定と相対組成は深度区間ごとに報告し、層別試料については殻濃度(shells/m3)も併せて示した。
- 結論と意義:
-
本研究は、CTDにもとづく鉛直水構造の把握と、深度区間別の放散虫採集を組み合わせることで、多田捨沖の6月上旬における、比較的小さな深度起因の水温差に応じた放散虫群集の変化を明確化できると結論づけた。著者らは、深く冷たい区間でCyrtidosphaera reticulataとLarcopyle butschliiが増加したことは、深度とともに水温が低下することと密接に相関しており、これらが深海性(deep-water dwellers)であるという既往の示唆と整合すると主張する。これに対し、浅い水層でTetrapyle octacanthaとDidymocyrtis tetrathalamus tetrathalamusの相対的豊富度が高いことは、これらが温暖な環境(黒潮系の暖流を含む)で一般的で、初秋の群集で多産するという先行観察と一致する。Nassellariaについては、Plectacantha trichoidesとP. oikiskosの優占が深度により大きく変化する点を強調しつつ、その機構は不確実であることも認めている。それでも著者らは、最深採集区間に近接して藻類クロロフィル極大が存在することで、微生物性餌資源の増加を介して間接的にこれら放散虫が増える可能性を提案した。より広い季節的文脈では、海面から21 mまで強い勾配をもつ6月上旬の水温プロファイルは、冬〜春の混合状態と夏季成層の中間状態と解釈され、著者らは、多田捨沖における春から夏への相の移行は、対馬暖流に伴う暖水性生物の北上流入によって媒介される「可能性が高い(highly probable)」と考察している。
- 今後の展望:
-
本論文は形式的な今後の研究計画を提示してはいないが、著者らの研究プログラムにおける将来的方向性を示唆する具体的な不足点と必要性を挙げている。第一に、放散虫の温度許容範囲に関する実験室培養データが直接的には乏しいことを強調し、水温の影響を推定する実用的手段として、相変化の継続的な野外モニタリングを位置づけている。第二に、Plectacantha trichoidesとP. oikiskosが深部で優占することと、藻類クロロフィルの上昇(および関連する微生物性餌資源動態)との関連については妥当な結び付けを提案する一方、その原因は「not well known yet」と明言しており、この機構を評価する追加研究の必要性を示している。第三に、季節移行の議論において、7月および8月の相の詳細は「have not yet been published」と述べており、成層が強まる過程や対馬暖流の影響変動に伴って群集がどう変化するかを解明するには、暖候期全体にわたる追加採集と公表が重要であることを示唆している。最後に、2005年に本研究で導入された高解像度CTDプロファイルと深度分解した生物採集の統合は、同一地点での複数季節・複数深度の比較を拡張し、物理構造・生産性の代理指標・相の入れ替わり(faunal turnover)をより良く結び付けるための有用な枠組みとして、暗黙に位置づけられている。
- 背景と目的:
-
は、海岸近くの浅い海から外洋の深い海まで広くすんでいるプランクトンの仲間です。放散虫の種類の組み合わせは、水温、放散虫 ( 海にいるプランクトンの一種で、体の外側に硬い骨格をつくります。骨格の形が種類ごとに違うため、どの種類が多いかを調べることで海の環境の違いを読み取る手がかりになります。) 、日光、栄養の量、食べ物をめぐる生き物同士の関係など、いろいろな条件で決まると考えられています。塩分 ( 海水に溶けている塩類の量を表す値です。川の水が混ざると下がりやすく、水の性質や生き物の分布に影響します。)
この研究では、その中でも特に水温に注目します。水温は海の環境の多くに影響する重要な要因だからです。しかし放散虫は実験室で育てるのがとても難しく、種類ごとの「どのくらいの温度に耐えられるか」を実験で確かめるのはほとんどできません。そこで、海での観測を続けて、放散虫の種類の変化から水温との関係を読み取る方法が現実的だと説明しています。
日本海は、 の影響で季節によって水温の分かれ方が大きく変わり、水温の差がはっきり出やすい海です。研究チームは佐渡島の多田捨沖で長年採集を行ってきており、本研究では2005年6月上旬に、海の深さごとの水温や塩分などの詳しいデータと、深さごとの放散虫の種類の違いを調べました。そして、水の層のつくりと放散虫の分布がどう関係するか、また春から夏への季節の変わり目を理解するのにどう役立つかを考えることを目的としています。対馬暖流 ( 東シナ海から日本海へ流れ込む暖かい海流です。日本海の表層の水温を季節的に変え、生き物の分布や季節変化に大きく影響します。)
- 主要な発見:
-
水温は深さ64mから海面までで約12.0℃〜18.0℃で、変化のしかたから3つの層に分けられました。深い層(64〜58m)は温度変化が小さく、中間の層(58〜21m)も全体として変化は小さいものの一部に急な変化があり、浅い層(21m〜海面)は温度が大きく変化していました。
は34.237‰〜34.485‰で、深いところ(64〜29m)はほぼ一定でしたが、浅いところ(29mより浅い)では大きく変わりました。特に水面近く(10mより浅い)と、29〜14mのあたりでは、陸からの水が混ざって塩分が低くなった可能性が示されました。塩分 ( 海水に溶けている塩類の量を表す値です。川の水が混ざると下がりやすく、水の性質や生き物の分布に影響します。) は1024.8〜1026.5で、浅い側(15mより浅い)で変化が急になり、水温の層構造とだいたい対応していました。藻類の密度 ( 海水の「重さの詰まり具合」を表す値で、水温や塩分によって変わります。密度の違いは海の層構造をつくり、上下に混ざりにくくなる原因にもなります。) の相対量は、64〜48mで細かく上下し、56mで高くなりましたが、48mより浅いところでは全体的に低く、最上層ではほぼ一定でした。クロロフィル ( 植物プランクトン(藻類)が光合成に使う緑色の色素です。量が多いほど藻類が多い目安になり、海の生産性や餌の多さと関係します。)
は159個体の殻から、単体で生活する放散虫25種が見つかりました。さらに放散虫 ( 海にいるプランクトンの一種で、体の外側に硬い骨格をつくります。骨格の形が種類ごとに違うため、どの種類が多いかを調べることで海の環境の違いを読み取る手がかりになります。) の一種について、体の一部にあたる群体性放散虫 ( 1個体で生活するのではなく、たくさんの個体が集まってコロニーのように生活する放散虫です。単体の放散虫とは見つかり方や観察のしかたが少し違います。) も確認されました。深さごとの個体数(体積あたりの殻の数)は、深いところほど多く、浅いほど少なくなりました。種類の組み合わせも深さによって変化し、特にあるグループでは違いが目立ちました。深い区間ではCyrtidosphaera reticulataやLarcopyle butschliiが多く、浅い区間ではTetrapyle octacanthaやDidymocyrtis tetrathalamus tetrathalamusが多い傾向がありました。研究者はこれを、水深にともなう水温の違いに関連した変化だと考えています。骨針 ( 群体性放散虫などで見られる、骨格の一部で針のような形をした構造です。見つかると、その種類の存在を示す手がかりになります。)
別のグループでは、全体として種類の顔ぶれは似ていましたが、Plectacantha trichoidesとP. oikiskosという2種の割合が深さで大きく変わりました。深い試料ではこの2種が全体の約半分を占めましたが、浅い試料ではそれほど多くなく、代わりにLophospyris sp.が約20%になりました。深いところでPlectacanthaが多い理由はまだはっきりしないものの、近くにクロロフィルが多い層があり、それに関連して餌となる微生物が増えることが関係している可能性が示されました。
- 方法論:
-
観測と採集は、2005年6月6日の昼間に、佐渡島の多田捨の西約6kmの海域で、調査船を使って行われました。海の性質は
という装置で測定し、深さ64mから海面までを1mごとに、水温・CTD ( 海の電気伝導度から塩分を推定し、水温や深さも同時に測る装置です。海水の性質を深さごとに細かく調べるために使います。) ・塩分 ( 海水に溶けている塩類の量を表す値です。川の水が混ざると下がりやすく、水の性質や生き物の分布に影響します。) ・藻類密度 ( 海水の「重さの詰まり具合」を表す値で、水温や塩分によって変わります。密度の違いは海の層構造をつくり、上下に混ざりにくくなる原因にもなります。) の相対量のデータとして記録しました。クロロフィルは蛍光の強さとして扱いました。クロロフィル ( 植物プランクトン(藻類)が光合成に使う緑色の色素です。量が多いほど藻類が多い目安になり、海の生産性や餌の多さと関係します。)
は放散虫 ( 海にいるプランクトンの一種で、体の外側に硬い骨格をつくります。骨格の形が種類ごとに違うため、どの種類が多いかを調べることで海の環境の違いを読み取る手がかりになります。) で6回採集しました。深さごとの違いを調べるため、ネットを途中で閉じる方法を使って、およそ30mごとの深さ区間をねらって採集しました。たとえば、およそ100〜70m、70〜40m、40m〜海面といった区間です。さらに、全体の種類の組み合わせを確かめるために100m〜海面までの採集も行い、生きている個体を観察するための追加採集も行いました。ネットの傾きの影響で、実際に採れた深さは設定より少し浅く、およそ9割程度だと説明されています。プランクトンネット ( 海中の小さな生物をこし取って集める網です。目の細かさによって採れる生物の大きさが変わります。)
生きた放散虫は顕微鏡で取り分けて観察・撮影し、その後、薬品で有機物を除いて骨格だけにして電子顕微鏡でも観察しました。定量用の試料も同様に処理し、ふるい分けや保存、封入を行って顕微鏡で撮影し、深さ区間ごとの種類の割合と殻の密度をまとめました。
- 結論と意義:
-
この研究は、
による水の層構造のデータと、深さを分けたCTD ( 海の電気伝導度から塩分を推定し、水温や深さも同時に測る装置です。海水の性質を深さごとに細かく調べるために使います。) の採集を組み合わせることで、6月上旬の多田捨沖では、深さによる小さな水温差でも放散虫の群集が変化することをはっきり示せると結論づけました。放散虫 ( 海にいるプランクトンの一種で、体の外側に硬い骨格をつくります。骨格の形が種類ごとに違うため、どの種類が多いかを調べることで海の環境の違いを読み取る手がかりになります。)
特に深く冷たい区間でCyrtidosphaera reticulataとLarcopyle butschliiが増えたことは、水深が深いほど水温が低いこととよく対応しており、これらが深い海に多い種類だという過去の報告とも合います。反対に、浅い水層でTetrapyle octacanthaやDidymocyrtis tetrathalamus tetrathalamusが多いことは、暖かい流れの海域でよく見られ、初秋に多いという観察結果と一致します。
また、Plectacanthaの2種が深いところで多くなる理由はまだ十分に分からないとしつつも、近くの が多い層により餌となる微生物が増え、その結果として放散虫が増える可能性を述べています。クロロフィル ( 植物プランクトン(藻類)が光合成に使う緑色の色素です。量が多いほど藻類が多い目安になり、海の生産性や餌の多さと関係します。)
季節の見方としては、海面から21mまで水温の変化が大きい6月上旬の状態は、冬から春のよく混ざった状態と、夏のはっきり層が分かれる状態の中間だと考えられます。そして春から夏への放散虫相の変化は、 に乗って暖かい海の生物が北上してくることが関係している可能性が高いとまとめています。対馬暖流 ( 東シナ海から日本海へ流れ込む暖かい海流です。日本海の表層の水温を季節的に変え、生き物の分布や季節変化に大きく影響します。)
- 今後の展望:
-
この論文では、今後の計画を細かくは示していませんが、これから必要になりそうな点を挙げています。
1つ目は、 を実験室で育てて温度への強さを直接確かめるデータが不足しているため、野外で長く観測を続け、種類の変化から水温の影響を推定することが重要だという点です。放散虫 ( 海にいるプランクトンの一種で、体の外側に硬い骨格をつくります。骨格の形が種類ごとに違うため、どの種類が多いかを調べることで海の環境の違いを読み取る手がかりになります。)
2つ目は、Plectacanthaの2種が深いところで多くなる理由について、 が多い層や餌となる微生物との関係を示したものの、仕組みはまだよく分かっていないため、追加研究が必要だという点です。クロロフィル ( 植物プランクトン(藻類)が光合成に使う緑色の色素です。量が多いほど藻類が多い目安になり、海の生産性や餌の多さと関係します。)
3つ目は、7月・8月の詳しい種類のデータがまだ公表されていないため、夏に向かって海の層構造が強まる時期や、 の影響が変わる時期に群集がどう変化するかを調べるには、暖かい季節全体を通した追加の採集と公表が大切だという点です。対馬暖流 ( 東シナ海から日本海へ流れ込む暖かい海流です。日本海の表層の水温を季節的に変え、生き物の分布や季節変化に大きく影響します。)
さらに、細かい深さごとの データと、生物を深さで分けて採る方法を組み合わせるやり方は、季節や深さの比較を進めるうえで役立つ枠組みになると示されています。CTD ( 海の電気伝導度から塩分を推定し、水温や深さも同時に測る装置です。海水の性質を深さごとに細かく調べるために使います。)
- 何のために?:
-
は、海にいる小さな生き物です。放散 虫( 海にすむとても小さな生き物のなかまの名前です。海の環境 水温や深さなどで見つかり方が変 わるので海のようすを知る手がかりになります)
水の上のほうから、深い海までいます。
どんな放散 虫がいるかは、海のようすで変 わります。
たとえば、水のあたたかさなどです。
この研究は、水温にとくに目を向けます。
水温は、海のくらしに大きく関 わるからです。
でも放散 虫は、実験室 で育てにくいです。
だから、海で調べる方法 を使います。
日本海は、季節 で水温が変 わりやすいです。
そのため、水温のちがいが見つけやすいです。
研究チームは、佐渡島の近くで調べました。
深さごとの水温と、放散 虫を比 べました。
水の層 と、放散 虫の関係 を知りたいのです。
春から夏へ変 わる時期も考えます。
- 何が分かったの?:
-
水温は、海面から64mまでで
変 わりました。
だいたい12℃から18℃くらいでした。
水温の変 わり方で、3つの層 に分けました。
いちばん深い層 は、温度の変化 が小さいです。
まん中の層 も、だいたい変化 は小さいです。
でも、ところどころ急に変 わりました。
浅 い層 は、温度が大きく変 わりました。
は、深いところはほぼ同じでした。塩分 ( 海水にどれくらい塩 がとけているかを表す値 です。水の重さや混 ざり方に関係 し海の層 ができる理由や生き物のすみやすさに影響 します)
浅 いところでは、塩分 が大きく変 わりました。
水面近くは、陸 の水が混 ざったかもしれません。
藻 のもとになる量 は、深い所で多い所がありました。
浅 い所では、全体に少なめでした。
は、全部で25しゅるい見つかりました。放散 虫( 海にすむとても小さな生き物のなかまの名前です。海の環境 水温や深さなどで見つかり方が変 わるので海のようすを知る手がかりになります)
いくつかは、群 れでくらす仲間 の形も見えました。
数は、深いほど多く、浅 いほど少ないです。
しゅるいの組み合わせも、深さで変 わりました。
深い所に多い種類 と、浅 い所に多い種類 がいました。
研究者は、水温のちがいが関係 すると考えました。
別 の仲間 では、深さで割合 が大きく変 わりました。
深い所で多い理由は、まだはっきりしません。
でも、えさが増 える層 が近いかもしれません。
- どうやったの?:
-
2005年6月6日の昼に、船で調べました。
場所は、佐渡島の近くの海です。
という道具で、海のようすをCTD ( 海の水温や塩分 などを深さごとに測 って記録 する観測 用の道具です。どの深さで水の性質 が変 わるかが分かり生き物の分布 と比 べるために重要 です) 測 りました。
水温や などを、1mごとに塩分 ( 海水にどれくらい塩 がとけているかを表す値 です。水の重さや混 ざり方に関係 し海の層 ができる理由や生き物のすみやすさに影響 します) 記録 しました。
は、あみで海水をすくって集めました。放散 虫( 海にすむとても小さな生き物のなかまの名前です。海の環境 水温や深さなどで見つかり方が変 わるので海のようすを知る手がかりになります)
深さごとに比 べるため、あみを途中 で閉 じました。
だいたい30mごとの区間で集めました。
生きている放散 虫も、別 に集めました。
集めた放散 虫は、 で見ました。けんびきょう ( 目では見えないほど小さいものを大きくして観察 する道具です。放散 虫の形や種類 を見分けるために必要 です)
写真もとりました。
体のやわらかい部分をのぞき、 も調べました。殻 ( 生き物の体をおおうかたい部分のことです。放散 虫は殻 の形で種類 を区別 することが多く調べる上で大事な手がかりになります)
深さごとに、種類 の割合 と数をまとめました。
- 研究のまとめ:
-
海の水は、深さでいくつかの
層 に分かれます。
この研究は、その層 と を合わせて見ました。放散 虫( 海にすむとても小さな生き物のなかまの名前です。海の環境 水温や深さなどで見つかり方が変 わるので海のようすを知る手がかりになります)
すると、小さな水温のちがいでも変化 が出ました。
深くて冷 たい所では、ある種類 が増 えました。
浅 くてあたたかい所では、別 の種類 が増 えました。
これは、今までの見つけ方とも合いました。
ある2種類 が深い所で多い理由は、まだなぞです。
でも、えさが多い場所が近いのかもしれません。
6月上旬 の海は、春と夏の中間のようでした。
あたたかい流れが、生き物を運ぶかもしれません。
- これからどうする?:
-
は育てにくく、放散 虫( 海にすむとても小さな生き物のなかまの名前です。海の環境 水温や深さなどで見つかり方が変 わるので海のようすを知る手がかりになります) 実験 の情報 が少ないです。
だから、海で長く調べることが大切です。
深い所で多い2種類 の理由も、もっと調べます。
えさや、藻 のもととの関係 を見たいです。
夏のくわしいデータも、まだ足りません。
7月や8月も調べると、変化 が分かります。
水のデータと、深さ別 の を合わせる採集 ( 調べるために自然 の中から生き物や水などを集めることです。深さごとに集めるとどこに多いかを比 べられます) 方法 は、便利 です。
季節 や深さを比 べるのに役立ちます。
- 著者名:
- Kurihara Toshiyuki, Shimotani Toyokazu, Matsuoka Atsushi
- 掲載誌名:
- Science reports of Niigata University. (Geology)
- 巻:
- 21
- ページ:
- 31 - 46
- 発行日:
- 2006-03
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/2133
