抗日戦争期における上海都市管理体制について(国際ワークショップ : 日中全面戦争と地域社会変容II)

背景と目的：

本論文は、日本の侵略下における上海市の都市管理体制を究明することを目的としている。1937年以降、日本は上海を含むいくつかの中国都市を支配・管理し、その中で「日偽上海市政府」などの傀儡政権を通じて都市の運営を行った。これまでの研究は主に政治や経済、文化の観点から分析されており、都市管理の具体的な体制については十分に扱われていない。本稿では、「偽上海市政府档案」を中心に事実を明らかにし、都市管理体制の具体的な実態を解明することを目指している。

主要な発見：

本論文の主要な発見は、上海市の都市管理体制が日本の強力な影響下でどのように機能していたかを詳細に明らかにしていることにある。特に「日偽上海市政府」の成立とその変遷過程を通じて、日本がどのようにして上海の都市管理を掌握していたかが具体的に示されている。さらに、租界の管理や都市計画、公共事業、治安維持に関する取り組みが法的な枠組みの中でどのように行われたかも明らかにされており、これが日本の支配体制の一部としてどのように機能していたかが示されている。

方法論：

本論文では、「偽上海市政府档案」を中心に資料を収集し、事実を基に上海の都市管理体制を分析している。具体的には、大道政府から始まり、督弁上海市政公署、そして上海特別市政府への変遷過程を詳細に追跡し、それぞれの期間における行政機構や政策、都市管理の実態を具体的に明らかにしている。また、各種法令や組織規則の内容を精査し、それが実際にどのように適用され、どのような効果を持っていたかを考察している。

結論と意義：

結論として、本論文は日本の占領下での上海都市管理体制が、傀儡政権を通じて非常に詳細かつ法的に整備されたものであったことを示している。この体制は、日本の軍事戦略に基づき厳格に運用され、特に治安維持や公共事業の管理においては法的な枠組みの中で行われていたことが明らかになった。この研究は、当時の都市管理の実態を詳細に解明することで、現代における都市管理の改善にも寄与する可能性がある。

今後の展望：

今後の研究では、本稿で示された都市管理体制が実際の社会状況にどのように影響を与えたかをより詳細に検証する必要がある。具体的には、各種法令や規則が現実の都市管理にどのように適用され、どのような問題点や課題が存在したかを明らかにすることが求められる。また、他の中国都市との比較研究を通じて、日本の占領政策が地域によってどのように異なる影響を与えたかを考察することも重要である。これにより、より広範な視点から当時の都市管理の実態を理解し、現代の都市管理への示唆を得ることができるだろう。