論文詳細
大学院現代社会文化研究科
#紀要論文
井上靖文学における僧侶像 : 「僧行賀の涙」から『天平の甍』へ
- AI解説:
- 井上靖の長編小説『天平の甍』は、1957年に『中央公論』で連載され、その後単行本として出版された作品で、日本の歴史小説の名作とされています。本稿では、その創作メモや先行研究をもとに、作中人物の僧侶像を考察することを目的としています。特に、前作「僧行賀の涙」の主人公行賀と『天平の甍』の登場人物、普照や業行の関連性を探ります。また、作者自身の生活の中で見つかった行賀、業行、普照の原型を分析し、小説のモチーフや史料との相違点の背景を分析することを目指しています。
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大学院現代社会文化研究科
#紀要論文
井上靖文学における僧侶像 : 「僧行賀の涙」から『天平の甍』へ
AI解説
- 背景と目的:
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井上靖の長編小説『天平の甍』は、1957年に『中央公論』で連載され、その後単行本として出版された作品で、日本の歴史小説の名作とされています。本稿では、その創作メモや先行研究をもとに、作中人物の僧侶像を考察することを目的としています。特に、前作「僧行賀の涙」の主人公行賀と『天平の甍』の登場人物、普照や業行の関連性を探ります。また、作者自身の生活の中で見つかった行賀、業行、普照の原型を分析し、小説のモチーフや史料との相違点の背景を分析することを目指しています。
- 主要な発見:
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この論文では、井上靖が歴史小説を執筆する際に、大量の史料を収集し、その中から「一等史料」を選別し、それを基に創作を進める方法を採用していることが明らかにされました。また、「僧行賀の涙」では、実在の僧侶行賀をモデルにしているが、それを虚構の業行に展開したことが示されています。さらに、行賀、業行、普照の三人の僧侶像は、いずれも「写経」に没頭する姿勢に共通点があり、井上靖が実生活で影響を受けた荒井寛方をモデルにしている可能性が高いと結論付けています。
- 方法論:
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本研究は、井上靖の創作メモや先行研究で言及された典拠と作品との対照を通じて進められました。具体的には、中村詳一の訳した『唐大和上東征伝』や、井上靖の創作メモを用いて、行賀、普照、業行の人物像を比較・考察しました。また、井上靖自身の生活の中で影響を受けた人物、特に荒井寛方との関連性を探り、僧侶像の原型を提案しました。さらに、史料上の行賀像と小説の内容との一致点と相違点を明らかにすることで、史実と創作のバランスを探りました。
- 結論と意義:
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井上靖の『天平の甍』における行賀、普照、業行の僧侶像は、それぞれが「写経」に没頭する姿を通じて表現されています。特に、行賀と業行は写経に人生を捧げた僧侶として描かれ、普照は「自己完成」を志しながらも、最終的に渡日計画に従い、その志を変えていく姿が描かれています。これらの僧侶像は、井上靖が実生活で影響を受けた荒井寛方の模写の姿勢に類似していることが示されました。この研究は、井上靖の創作方法や史実と小説のバランスを理解する上で重要な意義を持っています。
- 今後の展望:
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今後の研究としては、「形あるものは滅びますよ」という言葉と作品本文との関連をさらに深く考察することが課題として残されています。また、井上靖が「僧行賀の涙」を創作する前に読んだ他の作品や史料がどのように影響を与えたのかを明らかにすることも重要です。さらに、行賀、普照、業行の僧侶像が持つ意義や、その文化的背景についてのさらなる研究が期待されます。これにより、日本の歴史小説におけるキャラクター描写や史料の利用方法についての理解が一層深まるでしょう。
- 背景と目的:
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井上靖の小説『天平の甍(てんぴょうのいらか)』は、日本の歴史小説の名作です。この小説は1957年に雑誌『中央公論』で連載され、その後単行本として出版されました。この研究では、この小説に登場する僧侶たちの姿を分析し、特に前作『僧行賀の涙』の主人公・行賀と、新作の登場人物・普照や業行との関連性を探ることを目的としています。また、作者がどのようにこれらのキャラクターを作り上げたのかを考察します。
- 主要な発見:
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井上靖は歴史小説を執筆する際、大量の
を収集し、その中から特に重要なものを選んで創作を進める方法を使っていました。また、『僧行賀の涙』では、実在の僧侶・行賀を基にして新しいキャラクター・業行を作り上げました。行賀、業行、普照の三人の僧侶は、みんな「史料 ( 歴史的な資料や文献のことです。歴史小説を書くときに重要です。) 」に集中する姿勢に共通点があり、井上靖が実生活で影響を受けた画家・荒井寛方をモデルにした可能性が高いと結論付けています。写経 ( 仏教の教えが書かれた経典を手で書き写すことです。)
- 方法論:
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この研究では、井上靖の創作メモや先行研究を基に、行賀、普照、業行のキャラクター像を比較・考察しました。特に、井上靖が影響を受けた荒井寛方との関連性を探り、僧侶像の原型を提案しました。また、
上の行賀像と小説の内容の一致点と相違点を明らかにすることで、史実と創作のバランスを検討しました。史料 ( 歴史的な資料や文献のことです。歴史小説を書くときに重要です。)
- 結論と意義:
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井上靖の『天平の甍』に登場する行賀、普照、業行の僧侶たちは、みな「
」に没頭する姿を通じて描かれています。行賀と業行は写経に人生を捧げた僧侶として、普照は「写経 ( 仏教の教えが書かれた経典を手で書き写すことです。) 」を目指していたが、渡日計画に従いその志を変える様子が描かれています。これらの僧侶像は、井上靖が実生活で影響を受けた荒井寛方の姿勢に似ていることが示されました。この研究は、井上靖の創作方法や史実と小説のバランスを理解する上で重要です。自己完成 ( 自分自身を磨き上げ、理想の自分になることを目指すことです。)
- 今後の展望:
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今後の研究では、「形あるものは滅びますよ」という言葉と作品本文との関連をさらに深く考察することが課題です。また、井上靖が『僧行賀の涙』を創作する前に読んだ他の作品や
がどのように影響を与えたのかも明らかにすることが重要です。さらに、行賀、普照、業行の僧侶像が持つ意義や、その文化的背景についてのさらなる研究が求められます。これにより、日本の歴史小説におけるキャラクター描写や史料の利用方法についての理解が深まるでしょう。史料 ( 歴史的な資料や文献のことです。歴史小説を書くときに重要です。)
- 何のために?:
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井上靖さんの
小説 『天平の甍 』は、1957年に雑誌 に載 りました。その後、本として出版 されました。この研究では、登場するお坊 さんたちについて調べます。特 に前作の『僧 行賀 の涙 』の主人公・行賀さんと、新しい登場人物の普照さんや業行さんの関係 を探 ります。そして、作者がどうやってこれらのキャラクターを作ったのかも考えます。
- 何が分かったの?:
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井上靖さんは
歴史 小説 を書くとき、たくさんの本や記録 を集めました。その中から大事なものを選 び、小説 を書きました。『僧 行賀 の涙 』では、実在 の僧侶 ・行賀さんをもとに新しいキャラクター・業行さんを作りました。行賀さん、業行さん、普照さんの3人は、みんな「 」に集中するところが同じです。井上靖さんが写経 ( 写経 は、お経 を書き写すことを指します。歴史的 には、僧侶 たちが手書きでお経 を写す作業を通じて修行 としました。これにより、お経 の内容 を深く理解 することが目的 とされていました。井上靖さんの小説 に登場する僧侶 たちは、この写経 に集中している姿 が描 かれています。) 尊敬 した画家・荒井寛方さんをモデルにしたと考えられます。
- どうやったの?:
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この研究では、井上靖さんのノートや他の研究を使って、行賀さん、普照さん、業行さんのキャラクターを
比 べました。特 に、荒井寛方さんとの関係 を探 り、お坊 さんたちの姿 を提案 しました。また、歴史 の行賀さんと小説 の行賀さんの違 いを明らかにし、史実 と創作 のバランスを調べました。
- 研究のまとめ:
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井上靖さんの『天平の
甍 』に出てくる行賀さん、普照さん、業行さんは、「 」に写経 ( 写経 は、お経 を書き写すことを指します。歴史的 には、僧侶 たちが手書きでお経 を写す作業を通じて修行 としました。これにより、お経 の内容 を深く理解 することが目的 とされていました。井上靖さんの小説 に登場する僧侶 たちは、この写経 に集中している姿 が描 かれています。) 夢中 になる姿 が描 かれています。行賀さんと業行さんは写経 に人生を捧 げました。普照さんは「 」を目指していましたが、日本に行く計画に自己 完成 ( 自己 完成 は、自分自身を高め、成長 させることを目指す概念 です。精神的 、知識 的 、倫理的 な面での自己 改善 を含 みます。普照さんが「自己 完成 」を目指していたことが描 かれており、これは彼 の人生の目標 を示 しています。) 従 って志 を変 えました。これらのお坊 さんの姿 は、井上靖さんが尊敬 した荒井寛方さんの姿勢 に似 ているとわかりました。この研究は、井上靖さんの創作 方法 や史実 と小説 のバランスを理解 する上で大切です。
- これからどうする?:
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今後の研究では、「形あるものは
滅 びますよ」という言葉と作品の関係 をもっと深く調べます。また、井上靖さんが『僧 行賀 の涙 』を書く前に読んだ他の本や記録 がどんな影響 を与 えたのかも調べます。さらに、行賀さん、普照さん、業行さんが持つ意味や、その文化的 背景 についても研究が必要 です。これにより、日本の歴史 小説 におけるキャラクターの描写 や記録 の使い方についての理解 が深まるでしょう。
- 著者名:
- 李 鈺
- 掲載誌名:
- 現代社会文化研究
- 巻:
- 66
- ページ:
- 1 - 13
- 発行日:
- 2018-03
- 著者による要約:
- Inoue Yasushi published the novel The roof tile of Tempyo in 1957. This novel earned the Award of the Minister of Education for Fine Arts the year after it was published. While The roof tile of Tempyo was drawing public interest, Inoue’s early short story also based on the Envoys dispatched to the Tang Dynasty, named Tears of monk Gyoga,also started drawing public attention. Some experts consider Tears of monk Gyoga as the foundation of The roof tile of Tempyo. In this paper, the focus is on the comparison of the images of the monk Gyoga, the monk Gyoko and the monk Fusho and analyses their relationship by comparing them to articles.
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/50101
