親との関わりが日中大学生の他者志向的動機づけに与える影響

背景と目的：

本研究の背景として、日本および中国における親子間のコミュニケーションが青年の動機づけに与える影響が注目されています。特に、親とのコミュニケーションの特徴である「独自性」と「結合性」が青年の動機づけにどのように関連するかを探ることが目的です。これは、親子間のコミュニケーションが青年の外発的および内発的動機づけをどのように促進するか、または阻害するかについての理解を深めることを目指しています。

主要な発見：

本研究の主要な発見は、日本と中国の大学生の親子間コミュニケーションにおける「独自性」と「結合性」が、それぞれの文化圏で異なる影響を与えることです。日本では、父親の結合性が青年の他者志向的動機づけに強い影響を与える一方、中国では、両親の独自性と結合性が青年の他者志向的動機づけに強く影響していることが示されました。特に、中国の親は、青年に対する自己の意見や視点を明示する独自性が高いことが、他者志向的動機づけに対する影響を強めていると考えられます。

方法論：

本研究では、日本の新潟県内の国立大学の日本人大学生268名と、中国の広東省内の師範大学の中国人大学生201名を対象に質問紙調査を実施しました。親子間のコミュニケーションの特徴を測定するために、高橋の進路選択における親子間コミュニケーション尺度を使用しました。また、伊藤による自己・他者志向的動機づけ尺度を用いて青年の動機づけを測定しました。データ分析は、因子分析、相関分析、および重回帰分析を用いて行われました。

結論と意義：

本研究の結論として、親子間のコミュニケーションの特徴である「独自性」と「結合性」が、青年の他者志向的動機づけに異なる影響を与えることが示されました。特に、中国の親子間では、両親の独自性が他者志向的動機づけに強く影響していることが明らかになりました。この研究は、親子間のコミュニケーションが青年の心理社会的発達において重要な役割を果たすことを示唆しており、教育や家族支援の分野において有益な知見を提供します。

今後の展望：

今後の研究では、親と青年双方の視点からデータを収集し、親子間コミュニケーションの双方向性をより詳細に検討することが必要です。また、異なる文化圏や社会背景での親子間コミュニケーションの影響を比較することで、より普遍的な動機づけのメカニズムを解明することが期待されます。さらに、親子間コミュニケーションが青年の長期的なキャリア選択や心理的健康にどのように影響するかについても調査することが重要です。