論文詳細
大学院現代社会文化研究科
#紀要論文
On the Scope Property of Zen’in, Zenbu and All
- AI解説:
- 本論文は、Quantifier Raising(QR)が利用可能かどうかに基づいて日本語の数量詞句(quantified phrases: QPs)を二分するHomma(2011)を踏まえる。Homma(2011)では、「Type 1」QPsは[Spec, DP]にquantifierを含み、前提(presuppositional)を伴い、QRを許す。一方、「Type 2」QPsは[Spec, DP]にquantifierを欠き、典型的には非前提的(nonpresuppositional)で、QRを許さない。こうした枠組みのもと、本研究は日本語の普遍表現であるzen’in「everyone」とzenbu「everything」の統語・意味的ふるまいを調べる。これらはsubete-no N「every N」のようなType 1の普遍QPsと意味的に似ているように見えるが、本論文は、とりわけ否定とのスコープ相互作用において異なる挙動を示し、そのためType 1にもType 2にも単純には同化できないことを示すことを目的とする。さらに、提案する性格づけを、allを含む英語のQPsにも拡張できるかを検討し、every/each + Nと対比しながら、観察されるスコープの事実を、形態統語(quantificational materialの位置)および意味論(要素が真のquantifierとして機能するか、それともtotality expressionとして機能するか)に結びつけることも目的とする。
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大学院現代社会文化研究科
#紀要論文
On the Scope Property of Zen’in, Zenbu and All
AI解説
- 背景と目的:
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本論文は、Quantifier Raising(QR)が利用可能かどうかに基づいて日本語の数量詞句(quantified phrases: QPs)を二分するHomma(2011)を踏まえる。Homma(2011)では、「Type 1」QPsは[Spec, DP]にquantifierを含み、前提(presuppositional)を伴い、QRを許す。一方、「Type 2」QPsは[Spec, DP]にquantifierを欠き、典型的には非前提的(nonpresuppositional)で、QRを許さない。こうした枠組みのもと、本研究は日本語の普遍表現であるzen’in「everyone」とzenbu「everything」の統語・意味的ふるまいを調べる。これらはsubete-no N「every N」のようなType 1の普遍QPsと意味的に似ているように見えるが、本論文は、とりわけ否定とのスコープ相互作用において異なる挙動を示し、そのためType 1にもType 2にも単純には同化できないことを示すことを目的とする。さらに、提案する性格づけを、allを含む英語のQPsにも拡張できるかを検討し、every/each + Nと対比しながら、観察されるスコープの事実を、形態統語(quantificational materialの位置)および意味論(要素が真のquantifierとして機能するか、それともtotality expressionとして機能するか)に結びつけることも目的とする。
- 主要な発見:
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中心となる経験的主張は、zen’inとzenbuは、subete-noのような名詞前置quantifierをもつType 1 QPsとは異なり、QRを受けないという点である。これは否定との相互作用で最も明確に診断される。すなわち、Type 1の目的語QPsは、∀ > NegとNeg > ∀の両方の解釈を許す(例:「Taro did not blame all the people」が広いスコープ/狭いスコープのいずれも許す)。これに対し、目的語位置のzen’in/zenbuは、否定よりも広いスコープをとる解釈を強く拒み(「??∀ > Neg」と標示)、主としてNeg > ∀を与える。しかし、zen’in/zenbuは別のスコープ領域ではType 2 QPs(例:floating quantifiers)とも異なる。主語前位置へscramblingすると、zen’in/zenbuは主語QPsに対してスコープをとることができ、曖昧性(例:2 > ∀および∀ > 2)を生む一方、scramblingされたType 2 QPsは依然として主語に対してスコープをとれず、狭いスコープにとどまる。これらのパターンを整合させるため、本論文はzen’in/zenbuが独自のクラス(「Type 3」)をなすと提案する。すなわち、Type 2と同様にQRを欠く(そのため目的語位置からは否定の下で狭いスコープになる)が、Type 2とは異なり、[+Topic]素性がライセンスされる位置でスコープが決定されうる。このtopicに基づくメカニズムにより、scramblingされたzen’in/zenbuがスコープに関わるより高い構造的位置で解釈され、floating-quantifier型のType 2句にはない主語—目的語スコープの曖昧性が生じる、と論じる。最後に本論文は英語allとの並行性を示唆する。allを含む目的語QPsは、関連する診断(例:分配的な「shares」効果)において、目的語が主語より広いスコープをとる読みを生じにくいという点でzen’in/zenbuに似ており、これはallがevery/eachのようなquantifierではなく意味的にtotality expressionであるため、QRの対象にならないという考えに結びつけられる。
- 方法論:
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本論文は、作成した文のペアおよび最小対立に対する容認性・解釈判断にもとづく、理論主導の言語学的論証を用いる。実証面の中心は日本語におけるスコープ診断であり、(i) 標準語順とscrambling語順における主語—目的語スコープ相互作用、(ii) QPsと否定形態素-naiの相互作用(スコープ対比を明確化する意図で与格項を介在させた配置を含む)に焦点を当てる。分析は、否定がvPとTPの間の投射のheadに位置するという構造(Miyagawa(2010)に従う)を仮定し、QRをQPのq-featureのcovert movementとして実装する立場(Saito(2005)に従う)を採用する。Type 1 QPsでは、q-featureはTPにも(QP > Negを導く)、vPにも(Neg > QPを導く)付加でき、その結果として曖昧性が導出される。zen’in/zenbuについては、quantificational elementであるzen-が[Spec, DP]にないためQRが利用できないと論じる。代わりに、zen’in/zenbuは、prefixのzen-が拘束形態素(-in「member」、-bu「part」)に付いて形成される名詞(head)として分析される。それでもscramblingの下でzen’in/zenbuが高いスコープ可能性を示す理由を説明するため、本論文はMiyagawaの素性駆動移動の見方を組み込む。すなわち、DPはT上の[+Topic] probeによって[Spec, TP]へ引き寄せられうる。本論文はこれを、scramblingによって主語が否定の下に入ることが可能かどうか(目的語がtopicとして[Spec, TP]でライセンスされているかどうかの診断)を調べることで検証し、zen’in/zenbuとfloating-quantifier型のType 2句を対比する。英語に関する議論は、既報の診断(Beghelli and Stowell(1997);Szabolsci(2010))に依拠し、それらを本論文のQRにもとづく観点に統合する。
- 結論と意義:
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本論文は、zen’inとzenbuが、Homma(2011)のType 1/Type 2の区分では捉えられない独自のQPsカテゴリを構成すると結論づける。Type 1 QPsとは、QRを受けない点で異なり、これが目的語位置にあるとき否定の下で狭いスコープをとりやすいことを説明する。Type 2 QPsとは、[+Topic]素性のライセンシングに関連する統語的位置でスコープが確定しうる点で異なり、その結果、scramblingされたzen’in/zenbuはfloating-quantifier句にはできない仕方で主語とのスコープ相互作用に参加できる。重要な説明方針は、(非)QR可能性を形態統語構造([Spec, DP]にquantifierがあるかないか)と意味タイプに結びつける点にある。すなわち、zen-は、前提された集合にわたって比例を選ぶType 1 quantifierのようにはふるまわず、むしろ複数指示名詞にも単数指示名詞にも適用できるtotalityの表現であり(「whole」解釈を与える)と論じられる。この推論を拡張して、本論文は英語allもevery/each型の「quantifier」ではなく、したがってQRを受けないと提案し、関連する環境で目的語all句が主語より広いスコープをとることに抵抗する理由の説明に資するという。意義は、形態的構成、素性駆動統語(topic licensing)、スコープ計算の対応関係を精緻化し、日本語zen-in/zen-buと英語allの言語間並行性を提案する点にある。
- 今後の展望:
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本論文自身、未解決のギャップと今後の検討課題を示している。zen-複合語のうち、他の例(例:zen-gakusei「all students」、zen-kyoositu「all classrooms」)はzen’in/zenbuよりも否定に対して広いスコープを許しやすいように見えるが、この対比について説得的な説明はまだ得られていないと明言する。この未解決問題は、zen-形のより精密な分類の必要性、たとえばzen’in/zenbuのような語彙化した名詞と、より透明なzen-N結合を区別する可能性、そしてどの条件でzen-表現がType 1的なスコープ挙動を示すのかを判定するより明確な診断の必要性を示唆する。加えて、scrambling下のType 3のスコープが[+Topic]との適合性に依存するという提案は、解釈を素性のライセンシングに、移動を[Spec, TP]に結びつけているため、より広範なQPsと談話文脈にわたる追加検証を要請する。英語については、allの扱いは、見かけ上の主語—目的語の非対称性がいつ成立するのかに関する追加研究を示唆する。とりわけ、異なる(where *All the boys read a different book is reported)に関する指摘された複雑さを踏まえる必要がある。より一般に、本論文は、言語間で「totality」表現を体系的に比較し、QR可能性の限定やtopicに敏感なスコープが反復的な性質かどうかを確かめること、また前提性、定性(例:all + bare N と all the + N)、統語的位置がスコープ計算でどのように相互作用するかを明確化することへの展望を開く。
- 背景と目的:
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この論文は、日本語の「
(たとえば『すべてのN』『3人のN』のように、数や量を表す言い方)」を、数量詞句 ( 数や量を表す要素を含むまとまりのことです。たとえば「すべての学生」「3人の学生」「全員」などが入り、文の意味(誰がどれだけ関わるか)を大きく左右します。) (QR)という仕組みが使えるかどうかで2種類に分けるHomma(2011)の考え方を出発点にしています。Homma(2011)では、Quantifier Raising ( 数量表現が、見た目の語順のままではなく、文の意味を決める段階で「より高い位置にあるものとして」扱われる仕組みです。これがあると、数量表現が否定や他の数量表現より広く効く読み方が可能になり、文の解釈があいまいになりやすいので重要です。) は名詞句の中の高い位置に数量の要素があり、話し手が「その集まりがすでにある」と考えているType 1 ( 名詞句の高い位置に数量の要素があり、QRが起きやすいタイプの数量詞句です。「すでにその集まりがある」という前提がつきやすく、否定との関係で複数の読み方が出やすい点が特徴です。) がつきやすく、QRが起きます。前提 ( 話し手が、その発話の前から「ある集まりが存在している」と見なしているような意味の土台のことです。Type 1の数量表現が広いスコープを取りやすい条件と関係し、解釈の違いを説明するのに重要です。) はそうした高い位置に数量の要素がなく、前提が弱く、QRが起きません。Type 2 ( 名詞句の高い位置に数量の要素がなく、QRが起きにくいタイプの数量詞句です。否定の下で解釈されやすく、scramblingしてもスコープの逆転が起きにくいという違いを説明するのに使われます。)
この枠組みをもとに、本研究は日本語の であるzen’in「全員」とzenbu「全部」が、文の形(統語)と意味の面でどうふるまうかを調べます。これらはsubete-no N「すべてのN」のようなType 1の表現と意味が似て見えますが、特に「否定(〜ない)」との関係で違いが出るため、単純にType 1やType 2に入れられないことを示すのが目的です。さらに、この見方が英語のallを含む表現にも広げられるかを検討し、普遍表現 ( 対象を「全部」「全員」のように、例外なく含める言い方です。論文ではzen’inやzenbu、英語のeveryやallがこのタイプとして扱われ、否定と組み合わさると意味の違いが目立つため重要です。) + Nとの違いを、語の形の作り(どこに数量の要素があるか)と意味(本当の数量詞か、全体を表す言い方か)につなげて説明することも目的です。every/each ( 英語で「すべての〜」を表す典型的な数量詞です。allと比べて「集合を前提にして、その集合の成員に分配する」性質が強く、QRが起きやすいタイプとして対比に使われます。)
- 主要な発見:
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中心となる発見は、zen’inとzenbuは、subete-noのような
とは違って、QRが起きないという点です。この違いは「否定(〜ない)」との組み合わせで特に分かりやすくなります。Type 1の目的語(例:subete-no N)は、否定より「すべて」が広く効く読み方(「全部は〜しなかった」)と、否定が広く効く読み方(「〜しなかった、全部について」)の両方になりやすいです。ところが、目的語位置のzen’in/zenbuは、否定より「すべて」が広く効く読み方を強く避け、主に「否定が広い」読み方になりやすいことが示されます。Type 1 ( 名詞句の高い位置に数量の要素があり、QRが起きやすいタイプの数量詞句です。「すでにその集まりがある」という前提がつきやすく、否定との関係で複数の読み方が出やすい点が特徴です。)
一方で、zen’in/zenbuは とも同じではありません。目的語を文頭側に動かすType 2 ( 名詞句の高い位置に数量の要素がなく、QRが起きにくいタイプの数量詞句です。否定の下で解釈されやすく、scramblingしてもスコープの逆転が起きにくいという違いを説明するのに使われます。) をすると、zen’in/zenbuは主語の数量表現に対して「どちらが広く効くか」があいまいになり得ます。しかし、Type 2(例:scrambling ( 日本語で、目的語などを文の前のほうに動かして語順を変える現象です。語順を変えることでスコープの可能性が変わるかどうかを調べられるため、分析の重要な手がかりになります。) )を同じように動かしても、そのようなあいまいさが出にくく、主語のほうが優先される傾向が残ります。floating quantifiers ( 名詞から離れた位置に数量表現が出る言い方です。たとえば「学生を3人」のような形で、論文ではType 2の代表例として、QRしないことやtopicと相性がよくないことを示す材料になります。)
この2つの性質を両立させるために、論文はzen’in/zenbuを独自の「 」として提案します。Type 3はType 2と同じくQRをしないため、目的語の位置では否定の下になりやすいです。しかしType 2と違い、topicとして認められる位置に行けると、そこでType 3 ( zen’in/zenbuのために提案される新しい分類です。QRはしないので否定の下になりやすい一方で、topicとして認められる位置に関係してスコープが決まることがあり、Type 2にはないあいまいさが出る点が重要です。) が決まりやすい、という仕組みがあると考えます。これにより、scramblingされたzen’in/zenbuは高い位置で解釈され、Type 2には見られない主語と目的語のスコープのあいまいさが生まれると説明します。スコープ ( 複数の意味要素(数量表現や否定など)があるとき、どれがどれに「広く効くか」という関係のことです。スコープが変わると文全体の意味が変わるため、論文の中心的な観察対象になります。)
最後に、 にも似た性質があると示唆します。英語でも、目的語のall句は、英語all ( 英語のallを含む名詞句のことです。目的語にあると主語より広いスコープが出にくいなど、日本語のzen’in/zenbuと似た性質が観察され、allが「典型的な数量詞ではない」可能性を考える材料になります。) 句ほど「目的語が主語より広く効く読み方」が出やすくないことがあり、これはallがevery/eachのような典型的な数量詞というより「全体」を表す表現で、QRの対象になりにくいからだと結びつけます。every/each ( 英語で「すべての〜」を表す典型的な数量詞です。allと比べて「集合を前提にして、その集合の成員に分配する」性質が強く、QRが起きやすいタイプとして対比に使われます。)
- 方法論:
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この論文は、研究者が作った例文どうしを比べ、どの文が自然に感じられるか、どんな意味に読めるかという判断にもとづいて理論的に議論します。実証の中心は「
」の見分けで、主に次の点を調べます。スコープ ( 複数の意味要素(数量表現や否定など)があるとき、どれがどれに「広く効くか」という関係のことです。スコープが変わると文全体の意味が変わるため、論文の中心的な観察対象になります。)
1つ目は、標準的な語順と した語順で、主語と目的語の数量表現がどう影響し合うかです。2つ目は、数量表現と否定(-nai)が組み合わさったときに、どの読み方が可能かです(読み方の違いが分かりやすくなるように、与格の要素を間に入れた配置も使います)。scrambling ( 日本語で、目的語などを文の前のほうに動かして語順を変える現象です。語順を変えることでスコープの可能性が変わるかどうかを調べられるため、分析の重要な手がかりになります。)
分析では、否定がvPとTPの間にあるという文構造を仮定し、QRを「見えない移動( )」として扱います。covert movement ( 見た目の語順は変わらないのに、意味を決める段階で移動が起きたように扱う考え方です。QRをこのタイプの移動として考えることで、語順が同じでも解釈が分かれる理由を説明できます。) はこの見えない移動ができるため、否定より上にも下にも解釈を作れて、あいまいさが生まれます。これに対してzen’in/zenbuは、数量の中心となるzen-がType 1に必要な位置にないためQRができないとします。さらにzen’in/zenbuは、zen-が-in「メンバー」や-bu「部分」のような要素にくっついてできた名詞として分析します。Type 1 ( 名詞句の高い位置に数量の要素があり、QRが起きやすいタイプの数量詞句です。「すでにその集まりがある」という前提がつきやすく、否定との関係で複数の読み方が出やすい点が特徴です。)
それでもscramblingで高い位置の解釈が出る理由を説明するために、論文は「topicとして認められる位置に行く」という考え方を取り入れます。つまり、文の中でtopicとして扱われる要素は、特定の位置で認められ、そこでスコープが決まりやすいという方向で説明します。英語については、先行研究で使われてきた診断を利用しつつ、同じ考え方(QRできるかどうか)でまとめ直します。
- 結論と意義:
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結論として、zen’inとzenbuはHomma(2011)の
/Type 1 ( 名詞句の高い位置に数量の要素があり、QRが起きやすいタイプの数量詞句です。「すでにその集まりがある」という前提がつきやすく、否定との関係で複数の読み方が出やすい点が特徴です。) だけでは説明しきれない独自のカテゴリ(Type 2 ( 名詞句の高い位置に数量の要素がなく、QRが起きにくいタイプの数量詞句です。否定の下で解釈されやすく、scramblingしてもスコープの逆転が起きにくいという違いを説明するのに使われます。) )だと述べます。Type 1と違ってQRをしないため、目的語にあるときは否定より下で解釈されやすい点が説明できます。さらにType 2と違って、topicとして認められる位置に関わってType 3 ( zen’in/zenbuのために提案される新しい分類です。QRはしないので否定の下になりやすい一方で、topicとして認められる位置に関係してスコープが決まることがあり、Type 2にはないあいまいさが出る点が重要です。) が決まる可能性があるため、スコープ ( 複数の意味要素(数量表現や否定など)があるとき、どれがどれに「広く効くか」という関係のことです。スコープが変わると文全体の意味が変わるため、論文の中心的な観察対象になります。) したときに主語とのスコープのあいまいさが出る点も説明できます。scrambling ( 日本語で、目的語などを文の前のほうに動かして語順を変える現象です。語順を変えることでスコープの可能性が変わるかどうかを調べられるため、分析の重要な手がかりになります。)
また重要なのは、QRできるかどうかを「語の形の作り」と「意味のタイプ」に結びつけて説明する方針です。論文は、zen-をsubete-noのような「集合の中から数や割合を選ぶ数量詞」とは違い、「単数でも複数でも、その対象の全体を表す言い方(totality)」としてとらえます。この考えを にも広げ、allも英語all ( 英語のallを含む名詞句のことです。目的語にあると主語より広いスコープが出にくいなど、日本語のzen’in/zenbuと似た性質が観察され、allが「典型的な数量詞ではない」可能性を考える材料になります。) 型の典型的な数量詞ではないのでQRしにくい、と提案します。これにより、英語でも目的語のall句が主語より広く効く読み方が出にくい理由の説明につながるとします。意義は、語の形、topicに関わる文法の仕組み、スコープの計算を細かく対応づけ、日本語と英語の共通点まで見通しを立てた点にあります。every/each ( 英語で「すべての〜」を表す典型的な数量詞です。allと比べて「集合を前提にして、その集合の成員に分配する」性質が強く、QRが起きやすいタイプとして対比に使われます。)
- 今後の展望:
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論文は、まだ説明できていない点もはっきり述べています。たとえばzen-を使った別の語(例:zen-gakusei「全学生」、zen-kyoositu「全教室」)は、zen’in/zenbuよりも否定より上の解釈が出やすいように見えるのに、その違いをうまく説明できていないとします。これは、zen-表現をもっと細かく分類する必要や、どんな条件だと
に近い動きをするのかを見分けるテストの必要性を示しています。Type 1 ( 名詞句の高い位置に数量の要素があり、QRが起きやすいタイプの数量詞句です。「すでにその集まりがある」という前提がつきやすく、否定との関係で複数の読み方が出やすい点が特徴です。)
また、「 のType 3 ( zen’in/zenbuのために提案される新しい分類です。QRはしないので否定の下になりやすい一方で、topicとして認められる位置に関係してスコープが決まることがあり、Type 2にはないあいまいさが出る点が重要です。) がtopicとして認められるかどうかに依存する」という提案自体も、もっと多くの数量表現や会話の状況で確かめる必要があります。英語についても、allの主語と目的語での非対称性が、どんな場合に成り立つのかを追加で調べる必要があると述べます。さらに広く言えば、「全体」を表す表現をいろいろな言語で比べ、QRの制限やtopicに敏感なスコープがどこまで共通する性質なのか、スコープ ( 複数の意味要素(数量表現や否定など)があるとき、どれがどれに「広く効くか」という関係のことです。スコープが変わると文全体の意味が変わるため、論文の中心的な観察対象になります。) 性や定性、統語的位置がスコープとどう関係するのかを明確にすることが今後の課題です。前提 ( 話し手が、その発話の前から「ある集まりが存在している」と見なしているような意味の土台のことです。Type 1の数量表現が広いスコープを取りやすい条件と関係し、解釈の違いを説明するのに重要です。)
- 何のために?:
-
この
は、日本語の「ぜんぶ」や研究 ( 新しいことを調べて、分かったことをまとめること。どうしてそうなるのかを確 かめたり、ほかの人にも説明 できるようにします。)
「ぜんいん」を調べます。
「すべての~」のような言い方も見ます。
文の中で、 がどう決まるかを考えます。意味 ( 言葉や文が表している内容 のこと。言葉の並 び方や別 の言葉との組み合わせで変 わることがあります。)
とくに「~ない」との を見ます。組み合わせ ( 言葉と言葉をいっしょに使うこと。どの言葉といっしょになるかで、文の意味が変 わるので大切です。)
「ぜんぶ」と「すべての~」は、
同じように見えて、ちがいがあります。
そのちがいを、分かりやすくしたいです。
さらに、英語 の「all」にも、
同じことがあるかを調べます。
- 何が分かったの?:
-
「ぜんいん」「ぜんぶ」は、
「すべての~」とは少しちがいます。
文の中で、 の決まり方がちがいます。意味 ( 言葉や文が表している内容 のこと。言葉の並 び方や別 の言葉との組み合わせで変 わることがあります。)
とくに「~ない」といっしょだと、
ちがいがよく分かります。
「すべての~」は、 になりがちです。意味が2通り ( 同じ文なのに、受け取り方が2つに分かれること。まちがいのもとになるので、どうしてそうなるかを考えます。)
でも「ぜんいん」「ぜんぶ」は、
その2通りになりにくいです。
また、文の前のほうに動かすと、
意味が になることもあります。あいまい ( 意味がはっきり1つに決まらないこと。読み手によって違 う意味に取れるので、研究で問題になります。)
そこで は、「研究 ( 新しいことを調べて、分かったことをまとめること。どうしてそうなるのかを確 かめたり、ほかの人にも説明 できるようにします。) 」というタイプ3 ( 研究の中で新しく作った分類 の名前。今までの分類 だけでは説明 できない言葉のふるまいを、別 の仲間 として整理するために使います。)
新しい仲間 として考えます。
英語 の「all」も、少しにた動きをします。
- どうやったの?:
-
者が作った文をたくさん研究 ( 新しいことを調べて、分かったことをまとめること。どうしてそうなるのかを確 かめたり、ほかの人にも説明 できるようにします。) 比 べます。
どれが自然 に聞こえるかを考えます。
そして、どういう に読めるかを見ます。意味 ( 言葉や文が表している内容 のこと。言葉の並 び方や別 の言葉との組み合わせで変 わることがあります。)
見るポイントは2つです。
1つ目は、言葉の順番 を変 えたときです。
と主語 ( 文で「だれが」「なにが」にあたる部分。どの言葉が主語かで、文の意味の中心が変 わります。) の「ぜんぶ」の目的語 ( 文で「だれを」「なにを」にあたる部分。動詞 が向かう相手なので、意味を決めるのに大切です。) 関係 を見ます。
2つ目は、「~ない」と一緒 のときです。
どんな読み方ができるかを見ます。
さらに、「 」になれる場所だと、話の中心 ( その文や会話でいちばん注目している人や物のこと。中心になるものが何かで、意味が分かりやすくなることがあります。)
意味が決まりやすいと考えます。
- 研究のまとめ:
-
「ぜんいん」「ぜんぶ」は、
2つのタイプだけでは説明 しきれません。
だから、べつの「 」だと考えます。タイプ3 ( 研究の中で新しく作った分類 の名前。今までの分類 だけでは説明 できない言葉のふるまいを、別 の仲間 として整理するために使います。)
そのおかげで、「~ない」との読み方を
うまく説明 できます。
また、言葉の形と のつながりも意味 ( 言葉や文が表している内容 のこと。言葉の並 び方や別 の言葉との組み合わせで変 わることがあります。) 示 します。
「ぜんぶ」は「数を数える言葉」より、
「全体」を言う言葉に近いと考えます。
この考えは、英語 の「all」にも使えます。
- これからどうする?:
-
まだ分からないこともあります。
たとえば「全学生」などは、
「ぜんいん」と少しちがうようです。
どうしてちがうのか、もっと調べます。
「 」が本当に正しいかも、タイプ3 ( 研究の中で新しく作った分類 の名前。今までの分類 だけでは説明 できない言葉のふるまいを、別 の仲間 として整理するために使います。)
いろいろな文でたしかめます。
英語 の「all」も、もっと例 を集めます。
ほかの でも「全体」を言う言葉を言語 ( 人が使うことばの仕組み全体のこと。日本語や英語 などを比 べると、意味の決まり方のちがいが分かります。) 比 べます。
そして、 の決まり方の意味 ( 言葉や文が表している内容 のこと。言葉の並 び方や別 の言葉との組み合わせで変 わることがあります。) を、ルール ( 意味がどう決まるかの決まりや法則 。ルールが分かると、知らない文でも理解 しやすくなります。)
もっとはっきりさせるのが課題 です。
- 著者名:
- Honma Shinsuke
- 掲載誌名:
- 言語の普遍性と個別性
- 巻:
- 4
- ページ:
- 27 - 51
- 発行日:
- 2013-03
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/27092
