論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
過去21 年間の術後性上顎嚢胞の臨床統計的観察
- AI解説:
- 術後性上顎嚢胞は、上顎洞炎手術後の晩発性合併症として知られていますが、近年ではその発生率が減少しています。そのため、現在では臨床統計的な報告が少なくなっています。本研究は、過去21年間に長野赤十字病院の口腔外科を受診した術後性上顎嚢胞患者について、臨床統計的なデータを収集し、その実態を明らかにすることを目的としています。この研究によって、術後性上顎嚢胞の発生頻度、症状、治療法および予後についての詳細なデータが提供されることが期待されます。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
過去21 年間の術後性上顎嚢胞の臨床統計的観察
AI解説
- 背景と目的:
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術後性上顎嚢胞は、上顎洞炎手術後の晩発性合併症として知られていますが、近年ではその発生率が減少しています。そのため、現在では臨床統計的な報告が少なくなっています。本研究は、過去21年間に長野赤十字病院の口腔外科を受診した術後性上顎嚢胞患者について、臨床統計的なデータを収集し、その実態を明らかにすることを目的としています。この研究によって、術後性上顎嚢胞の発生頻度、症状、治療法および予後についての詳細なデータが提供されることが期待されます。
- 主要な発見:
-
研究の結果、289名の患者のうち、男性が164名、女性が125名であり、男女比は1.32:1と男性がやや多いことがわかりました。年代別に見ると、40歳代から60歳代の患者が全体の89.3%を占めていました。患側は右側が42.6%、左側が53.3%、両側が4.2%でした。また、初回手術後、症状が現れるまでの期間は20年から39年が最も多く、64.4%を占めていました。初診時の主訴は頬部症状が49.1%、口腔症状が38.1%で、眼症状を訴える患者は全体の5.1%でした。治療は主に全身麻酔下で嚢胞摘出と対孔形成が行われ、再発率は低く、予後は良好でした。
- 方法論:
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対象は平成3年1月から平成23年12月までの21年間に長野赤十字病院口腔外科で手術を受け、病理組織学的に術後性上顎洞嚢胞と診断された289名、293例です。これらの患者について、性別、年齢、罹患側、初回上顎洞根治術の時期とその後の経過年数、自覚症状発現から当科来院までの期間、紹介医療機関、主訴、現症、術前処置と手術および予後の項目について臨床統計的に検討しました。データは患者のカルテおよび手術記録から収集され、統計解析を行いました。
- 結論と意義:
-
本研究では、術後性上顎嚢胞は近年減少傾向にあることが確認されました。この減少の背景には、抗菌薬の進歩や内視鏡下副鼻腔手術(ESS)の普及などが影響していると考えられます。また、術後性上顎嚢胞の主訴は頬部症状や口腔症状が多く、眼症状は少ないことが明らかになりました。治療方法としては、嚢胞摘出と対孔形成が主流であり、再発率も低く、予後は良好でした。この研究は、術後性上顎嚢胞の理解と治療における重要な知見を提供し、今後の臨床における診断と治療方針の決定に寄与することが期待されます。
- 今後の展望:
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今回の研究成果を踏まえ、術後性上顎嚢胞のさらなる減少を目指し、予防的なアプローチや早期診断のための新しい手法を開発する必要があります。また、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)などの新しい治療法の長期的な効果と安全性についても検討することが重要です。さらに、多施設共同研究を通じて、より大規模で多様なデータを収集し、術後性上顎嚢胞の発症メカニズムやリスク要因についての理解を深めることが求められます。これにより、患者のQOL向上を図るとともに、医療資源の効率的な活用にもつながるでしょう。
- 背景と目的:
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(じゅつごせいじょうがくのうほう)は、術後性上顎嚢胞 ( 手術後に上顎洞にできる嚢胞(袋状の病変)。しばらくたってから発生することが多いです。) (じょうがくどうえん)の手術後に発生する遅い時期の合併症です。しかし、最近では発生率が減少しており、臨床データが少なくなっています。この研究では、過去21年間に長野赤十字病院の口腔外科を受診した術後性上顎嚢胞の患者について、データを集めてその実態を明らかにすることを目的としています。この研究により、発生頻度や症状、治療法、上顎洞炎 ( 上顎洞という顔の中にある空洞が炎症を起こす病気です。) (病気の経過や結果)の詳細なデータが提供されることが期待されています。予後 ( 病気が治るまでの経過や結果のことです。)
- 主要な発見:
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研究の結果、289名の患者がいて、そのうち男性が164名、女性が125名でした。患者の年代別では、40歳代から60歳代が多く、全体の89.3%を占めていました。嚢胞ができた場所は、右側が42.6%、左側が53.3%、両側が4.2%でした。また、手術後に症状が現れるまでの期間は、20年から39年が最も多く、64.4%を占めていました。初診時の主な症状は、頬(ほお)の症状が49.1%、口の中の症状が38.1%、目の症状が5.1%でした。治療は主に全身麻酔下で嚢胞摘出と対孔形成が行われ、再発率は低く、
は良好でした。予後 ( 病気が治るまでの経過や結果のことです。)
- 方法論:
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対象は、平成3年1月から平成23年12月までの21年間に長野赤十字病院口腔外科で手術を受け、病理組織学的に術後性上顎洞嚢胞と診断された289名、293例です。これらの患者について、性別、年齢、嚢胞ができた側、初回上顎洞手術の時期とその後の経過年数、症状が出てから病院に来るまでの期間、紹介された医療機関、主訴(最も気になる症状)、現症(現在の症状)、術前処置、手術および
についてデータを集め、統計解析を行いました。予後 ( 病気が治るまでの経過や結果のことです。)
- 結論と意義:
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本研究では、
は近年減少傾向にあることが確認されました。この減少の背景には、抗菌薬の進歩や術後性上顎嚢胞 ( 手術後に上顎洞にできる嚢胞(袋状の病変)。しばらくたってから発生することが多いです。) の普及などが影響していると考えられます。また、術後性上顎嚢胞の主な症状は頬の症状や口の中の症状が多く、目の症状は少ないことがわかりました。治療方法としては、嚢胞摘出と対孔形成が主流であり、再発率も低く、内視鏡下副鼻腔手術(ESS) ( 内視鏡を使って副鼻腔(鼻とつながっている空洞)の手術をする方法です。傷が小さく、回復が早いのが特徴です。) は良好でした。この研究は、術後性上顎嚢胞の理解と治療における重要な知見を提供し、今後の診断と治療方針の決定に役立つことが期待されます。予後 ( 病気が治るまでの経過や結果のことです。)
- 今後の展望:
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今回の研究成果をもとに、
のさらなる減少を目指し、予防策や早期診断のための新しい方法を開発する必要があります。また、術後性上顎嚢胞 ( 手術後に上顎洞にできる嚢胞(袋状の病変)。しばらくたってから発生することが多いです。) などの新しい治療法の長期的な効果と安全性についても検討することが重要です。さらに、多施設共同研究を通じて、より多くのデータを集め、術後性上顎嚢胞の発症メカニズムやリスク要因についての理解を深めることが求められます。これにより、患者の生活の質の向上と医療資源の効率的な活用が期待されます。内視鏡下副鼻腔手術(ESS) ( 内視鏡を使って副鼻腔(鼻とつながっている空洞)の手術をする方法です。傷が小さく、回復が早いのが特徴です。)
- 何のために?:
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手術 のあとに顔の中にできる袋 があるんだよ。これは「 」って言うんだ。この術後 性 上顎 嚢胞 (じゅつごせいじょうがくのうほう)( 手術 の後に顔の中にできる袋 のこと。この袋 は手術 の後に上顎 の骨 の中に液体 がたまってできることがあります。最近 ではあまり見られなくなってきましたが、手術 後の合併症 として知られています。) 袋 は手術 のあとにできることがあるんだけど、最近 はあまり見られなくなってきたんだ。そこで、過去 21年間に長野赤十字病院でこの袋 ができた人たちの記録 を調べたんだよ。この研究で、どれくらいの人にこの袋 ができたか、どんな症状 が出たか、どんな治療 をしたかを調べることが目的 なんだ。
- 何が分かったの?:
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この研究で、289人の
患者 さんがいたよ。その中で男の人が164人、女の人が125人だったよ。多くの人が40歳 から60歳 の間だったんだ。袋 ができた場所は、右側 が42.6%、左側 が53.3%、両側 にできたのは4.2%だったんだ。手術 の後、症状 が出るまでに一番多かったのは20年から39年だったよ。初 めて病院に行ったときの症状 は、頬 (ほお)の症状 が49.1%、口の中の症状 が38.1%、目の症状 が5.1%だったんだ。治療 は、全身麻酔 を使って袋 を取り出す手術 をしたんだ。この手術 のあと、また袋 ができることは少なかったんだよ。
- どうやったの?:
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この研究では、平成3年1月から平成23年12月までの21年間に長野赤十字病院で
手術 を受けた289人の患者 さんを調べたよ。性別 や年齢 、袋 ができた場所、初 めての手術 からどれくらい経 ったか、病院に来るまでの期間などを調べたんだ。そして、そのデータを使ってどんなことがわかったかをまとめたんだよ。
- 研究のまとめ:
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この研究で、
最近 は術後 性 上顎 嚢胞 が減 ってきていることがわかったんだ。それは、お薬が良 くなったり、新しい手術 方法 ができたからなんだ。また、この袋 の症状 は頬 や口の中が多く、目の症状 は少ないことがわかったんだ。治療 方法 は袋 を取り出す手術 が主流で、また袋 ができることは少ないんだ。この研究は、術後 性 上顎 嚢胞 の治療 に役立つ重要 な情報 を提供 しているんだよ。
- これからどうする?:
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この研究の
結果 をもとに、術後 性 上顎 嚢胞 をもっと減 らす方法 を考える必要 があるんだ。そして、内視鏡 を使った新しい手術 方法 の効果 や安全性 ももっと調べることが大切なんだ。さらに、いろんな病院と協力 してもっと多くのデータを集めることも必要 なんだよ。これによって、患者 さんの生活がもっと良 くなり、医療 の資源 も効率 よく使えるようになるんだ。
- 著者名:
- 須田 大亮, 五島 秀樹, 川原 理絵, 清水 武, 野池 淳一, 柴田 哲伸, 植松 美由紀, 細尾 麻衣, 橋詰 正夫, 横林 敏夫
- 掲載誌名:
- 新潟歯学会雑誌
- 巻:
- 42
- 号:
- 2
- ページ:
- 121 - 125
- 発行日:
- 2012-12
- 著者による要約:
- 術後性上顎嚢胞は最近減少のためか,臨床統計的報告はあまり見られない。今回私たちは,本疾患の実態を明らかにするため,平成3年1月より平成23 年12 月までの21 年間に,長野赤十字病院口腔外科を受診した術後性上顎嚢胞患者289 名,293 例につき,臨床統計的検討を行い,以下の結果を得た。1\u3000患者は男性164 名,女性125 名であった。2\u3000年齢は最低25 歳から最高81 歳で,40 歳代,50 歳代,60 歳代で258 例と,同年代で89.3%を占めていた。3\u3000患側は右側のみが123 例(42.6%),左側のみが154 例(53.3%)で,両側に認められたものは12例( 4.2%)であった。4 \u3000自覚症状発現から当科初診までの期間は3か月未満が216 例で,全体の74.7%であったが,3年以上の長期にわたる症例も20 例(6.9%)あった。5 \u3000初回上顎洞炎根治手術の時期は,10 歳代が最も多く,全体の49.8%を占めており,84.1%が30 歳未満で手術を受けていた。6\u3000初回手術後,症状が発現するまでの経過年数は20 年から39 年が186 名と最も多く,64.4%を占めていた。7 \u3000初診時の症状は,岩本らの分類(1型:頬部症状型, 2型:眼症状型,3型:鼻症状型,4型:口腔症状型)によれば,1型と4型の合併型が157 例(53.7%)と最も多く,次いで1型,3型,4型の合併型が41 例(14.0%),眼症状を合併していたものは15 例(5.1%)のみであった。知覚異常は38 例(13.0%)に認められた。8\u3000治療は全身麻酔下に,嚢胞摘出,対孔形成を行った症例が219 例(74.8.%)であった。
We analyzed clinically and statistically 289 cases of postoperative maxillary cyst treated at the Department of Oral and maxillofacial Surgery, Nagano Red-Cross Hospital during the twenty-one years from January 1991 to December 2011 to learn the tendency of recent postoperative maxillary cyst. The following results were obtained. 1. The patients consisted of 164 males and 125 females. 2. The age ranged from 25 to 81 years. Patients older than 40 years accounted for 89.3% (258cases). 3. The cysts occurred only on the right side in 123 cases, only on the left side in 154 cases, and on both sides in 12 cases. 4. The period between the onset of initial symptoms and admittance was less than 3 months in 74.7% (216 cases), but in 20 cases, the latency was more than 3 years. 5. 144 patients (49.8%) underwent initial radical operation in the second decade, and 243 cases (84.1%) at less than 30 years. 6. The period between the initial operation and the onset of symptoms was between 20 to 39 years in 186 cases (64.4%). 7. According to Iwamoto
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/50516
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