初年次教育におけるキャリアの位置づけと教育的対応をめぐって (特集 : 初年次教育とキャリア意識 : 学⽣主体キャリアイベントの実践から)

背景と目的：

本稿では、2018年2月に新潟大学で開催された学生主体のキャリアイベント「女性と男性が、ともに人間らしく働くために」に端を発し、初年次教育におけるキャリア教育の位置づけと教育的対応について探求しています。筆者は生涯教育学を専門とし、特に初年次教育とキャリアデザインの接合点について関心を持っています。これまでの研究と実践を踏まえ、特定の専門職養成に直結する「キャリア直結型学部」と、進路を特定せずに関心分野で受け入れる「キャリア非直結型学部」の双方における初年次教育のあり方を検討することが目的です。

主要な発見：

筆者は、医学生が自己主導型学習を通じて自身のキャリアデザインを構築することの重要性を強調しています。特に、奈良県立医科大学での授業「自己主導型学習」を通じて、学生が自分の学びの方向性を自ら設定し、学習契約というツールを使うことで、医師としてのキャリアデザインとプロフェッショナリズムを結びつける効果を確認しました。これにより、単なる学習技法を超えた教育方法論としての自己主導型学習の有用性が示唆されています。

方法論：

本研究は、初年次教育とキャリアデザインの接合点を探るために、キャリア直結型学部（例：医学部、看護学部）とキャリア非直結型学部（例：法学部、理学部）の双方に対してインターネット・文献での実態調査を実施しました。また、複数領域の教員とキャリア創生研究会を組織し、専門教育とキャリア支援についての実態と課題を共有しました。さらに、学生主体型キャリアイベントを企画・実施し、その記録と振り返りを分析しました。

結論と意義：

本研究は、高等教育における初年次教育の重要性とそのキャリアデザインへの影響を明らかにしています。特に、自己主導型学習の導入が学生のキャリア意識の育成に寄与することが示されました。これにより、初年次教育においてキャリアデザインを含む取り組みが効果を生む可能性があることが確認されました。さらに、教育学的視点から見た初年次教育とキャリアデザインの接合点の探求は、教育実践の新たな方向性を示唆しています。

今後の展望：

今後の研究課題としては、医学部以外のキャリア直結学部およびキャリア非直結学部における初年次専門教育とキャリアデザイン教育の実態調査を進めることが挙げられます。また、国内外の先進的な教育改革例を精査し、実践的示唆を抽出することも重要です。これにより、初年次教育および生涯キャリアデザインに関する新たなプログラムの開発と試行を行い、教育実践の改善を目指します。さらに、実践研究を通じて得られた知見を共有し、より広範な教育現場への応用を検討します。