論文詳細

医歯学系 大学院医歯学総合研究科(歯) #紀要論文

フィリピン国マンダウエ市における小児の公私立学校就学による齲蝕有病,成長発育および食習慣の違いとそれらの相互関連

AI解説:
本研究は、フィリピンのマンダウエ市において、公立学校と私立学校に通う学童の齲蝕有病状況、成長発育、口腔保健状況および食習慣の違いを調査することを目的としています。齲蝕は先進国では減少傾向にありますが、開発途上国では依然として深刻な問題です。フィリピンでは小児の齲蝕有病率が高く、特に公立学校就学児においてその状況が顕著です。しかし、私立学校就学児についてのデータは限られており、この研究はそのギャップを埋めることを目指しています。公立学校と私立学校の就学児の間で齲蝕有病状況にどのような差異があるか、またそれに影響を与える要因(例:親の学歴、家庭の経済状況など)を明らかにすることが本研究の背景および目的です。
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著者名:
西川 敦子, 山賀 孝之, 小川 祐司, 宮﨑 秀夫
掲載誌名:
新潟歯学会雑誌
巻:
47
号:
1
ページ:
23 - 32
発行日:
2017-07
著者による要約:
本研究は,フィリピン国マンダウエ市において学童の公立あるいは私立学校就学という社会的属性による齲蝕有病状況,成長発育,口腔保健状況および食習慣の差異を調べ,さらにそれら相互の関連を検討することを目的とした。公立学校就学(公立群)の6歳児41名,12歳児42名,私立学校就学(私立群)の6歳児47名,12歳児50名を対象とした。6歳児のdf者率,12歳児のDMF者率はいずれも公立群の方が有意に高かったが,私立群も先進国と比較すれば決して良好な齲蝕有病状況とはいえなかった。身長は私立群の方が有意に高く,歯の交換状況も加味すると公立群は成長発育遅延の可能性が示唆された。さらに,公立群は低体重児が多く,対照的に私立群は肥満傾向があった。また,公立群の児童およびその保護者は口腔保健に対する意識や知識量が私立群よりも低く,その差は保護者の方がより大きかった。各項目と齲蝕有病状況との関連は6歳児ではdft,df者率ともに保護者の歯科的な訴えの有無および歯科受療の有無との有意な関連が認められた。12歳児では保護者の学歴と齲蝕有病状況に有意な関連があった。以上より学童の公立あるいは私立学校就学という社会的属性の間に保護者の学歴,教育環境などに関する様々な社会的格差が存在し,これらが要因となって児童の齲蝕有病状況,受療行動および健康意識に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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